10/07/02

モリアオの季節も終わり

しばらく日記が滞っていた。
久々の更新だが、実は今月は月末まで、多分、更新できないと思う。
毎年7月は上智月間で、年にたった2回だけの授業の担当。
非常勤講師の肩書きで輪講の一部を受け持っているのだが、交通費の上限が決められているので、仕事をすればするほどお金が出て行ってしまう。
2回のうち1回(今年は海の日)は教室ライブで、これまた大赤字。毎年、母校でボランティアをしているわけだ。

今年はそれとは別に、どうしても頑張らなければならない勝負ごとが入ったので、月末まではそれに集中しなければならない。日記を書いている余裕がないと思う。

それはそうと、今年は例年より1~2週間、時期が遅れていたが、モリアオの産卵もそろそろおしまい。卵パトロールも今日が最後になった。
上の写真は、溶けた卵の残骸がぶら下がっている隠れ沼。これ以上は産みそうもないので、今年の観察はこれで終わりにする。
引き上げようと思ったら、沼の中でクワガタが腹を出して溺れていたので救出。このクワガタにとっては、僕が差し伸べた木の枝が、奇跡的な「神の手」だったね。↓

溺れていたミヤマクワガタ

Wikipediaをちょっと見てみたら、ミヤマクワガタは寒冷な気候を好み、ノコギリクワガタは温暖な気候を好むらしい。特徴である頭部の突起は、前蛹の時期に寒冷な気候で過ごしたオスほど大きくなる傾向があるのだとか。
クワガタを研究している人もいるんだねえ。あたりまえだけど。

先日、Oさんに教えてもらった池もチェックした。ここはまだ1つ、2つ新しいのが産みつけられている感じもするが、多くはすでに溶けて水面に落ちている。

溶けて水面に落ちた卵塊


遠目にはこの2つは比較的新しく産みつけられた感じ

ところで、先日「熊池」と勝手に命名したこの池だが、後日、とんでもないことが判明。
いつものようにジョンのお散歩をしていると、今度はOさんとは別の人が運転する軽トラックが止まって、「たくきさんですか?」と呼びかけられた。
この人はNさんといって、Oさんのお隣さん。池のことで話があるので……というので、家までうかがってしばらく話をした。
Nさん、実は僕のことを10年くらい前から知っていたそうで、QXエディタのユーザーでもあるという。
この村には2年くらい前に引っ越してきたそうだ。
この狭い村で読者にお会いするとはびっくり。
で、Nさんの話では、実は熊池はOさんの土地ではないのだという。

えええ? Oさんはそう言っていたのに。
で、地主さんはIさんといって、今はもうここには住んでいないのだが、その弟さんが池のことを非常に気にかけているという。モリアオガエルの産卵場所だということを知られたくない、ひっそり放っておいてほしいということらしい。
僕も、モリアオガエルの産卵場所を特定できるような書き方は意識的に避けてきた。カエル神社プロジェクトにしても、最近はやり方を少し変えたほうがいいかなと思い始めているところだった。
というのも、モリアオガエルだけが突出して人気が高く、「神聖視」あるいは「プレミア商品」的な見方をする人たちが結構いるということが分かってきたからだ。

例えば、平伏沼はかつて水がなくなる危機があった。某人物が盗伐に近い確信的な違法行為で沼の周りの雑木林を伐採してしまったために、たちまち保水能力がなくなったのだ。
そのとき、村では、どうすれば平伏沼のモリアオガエルを守れるかで大議論が交わされたらしい。
ある者が、近くの川からパイプで水を引っ張ってきて入れるという方法を主張したところ、別の者が「その水がモリアオガエルに合わなくて全滅したらどうする」と猛反対したという。
毒水を引かない限り、沢水を入れて死ぬようなことはありえないが、その話からも、モリアオガエルに特別な神秘性を感じている人たちが多いことはうかがえる。
かく言う僕も、こんな風にカエルに夢中になるきっかけは、モリアオガエルの卵を平伏沼で見たことだったから、その心理はよく分かる。
ただ、モリアオガエルにしてみれば、単純に人間たちが池や沼をどんどん埋めてしまったので、産卵場所がなくなり、平伏沼のような場所に集まらざるをえないだけなのだ。森と隣接した池や沼がもっとあれば、人家の近くでも棲息するだろう。
この前、林道で車の前に飛び出したモリアオガエルの♀にしても、おそらく産卵場所を探してさまよっていたに違いない。
平伏沼も永遠の安住の地とは言えなくなってきている気がする。隠れ沼より熊池のほうが平伏沼には近い。鉄塔道沿いにあったという沼も消滅したようなので、そのへんにいたモリアオが移動してこの池を見つけた、ということは大いに考えられる。
それまで産卵していた水場が消滅した場合、カエルの移動距離範囲内に別の水場を見つけられるかどうかが、地域絶滅を免れるための必須条件になる。
熊池はそういう意味では、この地域の命綱だ。
悪戯されないように秘密にしておくのは当然の策だろう。
ちなみに、今、数が激減して絶滅が危惧されている度合でいえば、モリアオガエルよりはトウキョウダルマガエルやツチガエル、カジカガエルだろう。モリアオガエルのように人気がないが、確実に数が少なくなっている。
この池にモリアオガエル以外にどんなカエルが棲みついているのか分からないが、ツチガエルにとってもここは頼みの綱になっているかもしれない。冬でも水がある場所、鯉などの悪食の魚がいない場所は本当に貴重なのだ。

Nさんにはいろいろ説明をして、Iさんにはよろしくお伝えくださいとお願いしておいた。
Iさんもこの日記を読んでいるようなので、もしお読みになっていたら、嘘情報のおかげとはいえ、ご心配をおかけする書き方になって申しわけありませんでした。
今度いらっしゃったとき、ご挨拶できればと思っています。


話が脱線したが、この日は午後、幻のカジカガエルを求めて、また、カエル神社プロジェクト的発想の先駆者であるらしいKさんのビオトープ方面に行った。今まで気がつかなかったが、ビオトープのすぐそばをいい感じの川が流れている。まさにカジカガエルがいそうな岩場になっているのだが、鳴き声はしなかった。

いかにもカジカガエルがいそうな川だが……


この石の上あたりにいて鳴いていればなあ……
そう都合よくはいかないのよね


ビオトープKの卵もそろそろ終わり


みんな無事に下に落ちたかしら


ビオトープKで泳ぐオタマ。先に生まれたヤマアカガエルだろうか

その後、見過ごし沼、カーブ沼、関守池などを次々にチェック。見過ごし沼は、この前チェックしたときはなかった卵が2つぶら下がっていた。

見過ごし沼には新たに2つ↑



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