しかし、iPaDにはUSBポートもないようだし、データのコピーをするには無線LAN環境が必須らしい。
うちでは無線LANを信用していなくて、今まで使ったことがない。家から離れのスタジオにも、地下にLANケーブルを這わせて有線でつないでいるくらいだ。
これではiPaDが届いてもどうしようもないので、先に無線LANキットを買って、無線LAN環境を作っておいた。
無線LANもずいぶん安くなったもので、最速の11n(IEEE802.11n)方式に対応した無線LANルータと子機2個のセットが送料無料で4496円(税込)だった。
(プラネックスコミュニケーションズ MZK-WNHPU2 11n/g/b対応 ハイパワー無線LANルータ+子機2個セット)
これは翌日には届いたので、先に、ノートパソコンを使って無線LAN環境を作ったのだが、結構苦労した。
無線LANはみんな苦労するらしいので覚悟はしていたのだが、本当に分かりづらい。うちの場合、ひかり電話ルータと他社IP電話用のVoIPアダプタが既設なので、新たに加わる無線LANルータは、ルータとしてではなく、アクセスポイントとして使う。ひかり電話ルータが親ルータで、そこにVoIPアダプタ(プロバイダ系のIP電話がつながっている)と、無線LANの親機がつながるという形。
ノートパソコンには無線LANカードが内蔵されているのだが、これが機能してくれず、結局、セットでついてきた子機1つをUSBポートにつないで使う羽目になった。まあ、ノートパソコンの内蔵無線LANカードは、11n非対応で遅かったので、使わなくてもいいや、と。
これで、ノートパソコンをスタジオ二階の枕元でもネット接続で使えるようになったため、就寝時間が遅くなった。こういう生活はいかんですね。
で、これで準備万端と思っていたのだが、届いたiPaDを開封してびっくり。説明書がない。あるのは葉書大の紙が1枚だけ。書いてあるのは、
1)最新版iTunesをダウンロードせよ
2)同梱のケーブルでiPaDをPCのUSBポートにつないで、
3)iTunesを通じて設定したら、持っている音楽や動画のコンテンツを「同期」させよ。アップルストアからコンテンツを買うこともできる
……ということだけ。
iPaDを買ったはいいが、呆然として、また箱に入れて押し入れにしまったまま……という話をよく聞くが、こういうことなのかと、改めて知った。
これは相当な上級者じゃないと使えない。
僕はiTunesは嫌いでアンインストールしていた。
まずはiTunesをインストールし直すところから始めなければいけないのか……うざいなあ。
で、困ったのは、何をどうやっても無線LANでネット接続ができないこと。
なんとか無線LANを認識するところまでは行くのだが、なぜかネットに接続できない。
無線LAN親機の説明書やiPaDの説明(ネットからダウンロードしたPDF)などを見ても、要領を得ない。
iPaD側の設定画面に、どういうわけか得体の知れないIPが記述されていて、そのIPを検索するとアメリカのIPだった。なぜこれが最初から入っているのか?
後になって、さらに調べた結果、これはどうも、AppleのBonjour Serviceが関係しているらしい。
Bonjourは、iTunesをインストールすると自動的に一緒に入れられてしまう。名前がいかにも怪しいので、不安を感じて削除する人も多い。
Bonjourは、「何の設定も行わず機器を使用可能にする」ことを目的としたApple独自のプロトコルらしいのだが、Wikiを読むと「IPv4のネットワークへ接続された場合、Bonjour対応機器は169.254.0.0/16の中から空いているアドレスを探索し、それを自らのIPアドレスとする」とある。メモしていなかったので正確ではないが、無線LANの親機にはこの169.254. で始まるIPが割り振られていた。
しかし、この親機のIPはデフォルトで192.168.1.250が振られていて、そのIPでLAN上で認識されている。どうも、Bonjourと、すでに構築されていた無線LANを含むネットワーク環境が競合していて起きた不具合のような気がする。
さんざん苦しんだ末、最後は、一旦、認識していた無線LANの設定を丸ごと削除して再起動させたところ、ようやく正しいIPを認識して、あっさりネットに接続できた。
なんだったんだろう、まったく。
WEBで検索しても、やはりこの最初の段階で躓いている人がたくさんいるようだ。
……と、さんざん苦労した末に使い始めた感想は。
- 画面が怖ろしくきれい
- 反応が速く、ノートパソコンより気楽に使える
……のはよいのだが、
- 思っていたより重い
- ファイルの管理が、クラウドコンピューティング発想なので、スタンドアローン的な使い方をしようとすると非常に面倒
- ファイル管理が把握しづらく、実際に自由度が低い
- アップルストアでなんでも買え、という方向性で、生活を管理されている気持ち悪さがある
- 指先と脳の間に見えない神経ケーブルが通ってしまった感じで、スイッチオフした後も異様な疲労感、違和感が身体に残る
……といった欠点がたくさんある。
パソコン以上に、健康によくない機械かもしれない。
で、いちばんの目的だった.epub形式ファイルのiBOOKによる閲覧だが、これを確かめるのにもずいぶん大変だった。
iBOOKはインストールされていないため、アップルストアからダウンロードする必要がある。
これ自体は簡単なのだが、iBOOKを立ち上げてぎょっとした。
「ファイルを開く」ことができないのだ。
「本棚」と「ストア」という2つのインターフェイスしかなく、単独のファイルを指定して開くことができない。
これはiBOOKだけでなく、iPaDアプリ全体に共通したことらしい。そのソフトに自動的に関連づけされ、あるいはリンクされているファイルしか開けない。iTunesなどもそれに近いのだが、これが嫌で使わなくなったのだった。
根本的に発想が違うのだ。多分これは、PCとMacの思想の違いでもある。
DOSコマンドから始まっているPCは、ファイルはあくまでもファイルとして格納場所があり、それをどのソフトで開くかはユーザーが決めるという発想。
ところが、Macの最終簡略進化形?ともいえるiPaDでは、ファイルを個別に管理するという発想が薄くて、アプリを立ち上げると同時に、そこにコンテンツはすべてリンク済みである、という発想。リンクされていないものは扱えないし、ファイルとソフトを別々に管理するということがしづらい、というか、ほとんどできない、に近い。ファイルの本体がどこにあるのか、把握できない。もしかすると、本体ファイルとリンク情報は別々のファイルになっているのかもしれず、そうであれば、さらに「ファイルを管理する」ということは無理だろう。
Windowsでいえば、エクスプローラのようなファイル管理ソフトが見あたらない。あるのかもしれないが、普通の?ユーザーにはそういうことを考えさせないようにしているようだ。
ドライブがあって、フォルダがあって、さらにフォルダがあって、そこにファイルを入れて管理している……という感覚を、ユーザーが持てない、というか、ユーザーに持たせないようにしている。
これが僕にとってはいちばん不愉快というか、気持ちが悪いことだった。
で、話を戻すと、電子書籍をiBOOKで読むためには、いちいちパソコン内のiTunesを立ち上げ、iPaDと「同期」させた上で、電子書籍ファイル(.epubファイル)をiTunesのBOOKリストにドラッグしておかないといけない。
このiTunesとの「同期」をさせることで、iBOOKの「本棚」にその本が加わるので、ようやくiPaD側で、読みたい電子書籍が読めるようになる。
これを理解するのに数分かかった。
Pubooのトップページに解説があって、ようやく分かった次第。
で、ようやく自分が作った電子本を読み込んでみたら……。
これはちょっと感動した。
AdobeのDigitalEditionsやFirefoxプラグインで読むのとは大違いで、実に読みやすく、美しい。
レイアウトもほどよい感じで融通が利いているし、フォントもきれい。
これに比べると、AdobeのDigitalEditionsのひどさがいかほどのものか、よく分かる。
汚い上にまともに動かない。あんなもの、さっさと無視してしまおう。
アップルの製品開発力は大したものだ。根強いMacファンの気持ちはとてもよく分かる。
それにしても、である。
現時点では、iBOOKを開いても、サンプルの英語の絵本1冊しか本棚には入っていないし、アップルストアで何かを買おうとしても、英語の本ばかりなので、読書の道具としてiPaDを購入したユーザーの多くは愕然としているのではないだろうか。
次のページで、詳しく方法を解説しておこうと思う。