2012/07/20

すっきりしない

連日の炎暑の後、突然気温が15度くらい下がって、今日は20度もない。身体が持たないねえ。

しっとり雨が降っている。
写真もないので、今日はこのところずっと考えていること、メモしておきたいことをまとめてみる。


●対案なき反対?

首相官邸前での「再稼働反対」デモや、先日、都内で行われた「サヨナラ原発集会」に対して批判する声があちこちで見うけられるようになった。
代表的なものはこんな感じ↓

ο「対案なき反対」は無責任
ο電力不足で倒産や失業、病人の死亡事故が起きても、再稼働反対を叫ぶこの人たちは何も責任をとらない

↑どちらも基本的な部分で間違えている。
原発を使わない、ということに対する「対案」は必要ない。
この場合の「対案」というのは、「本当は必要なものをなくすのだから、その代わりとなるものを提示してからなくせ」ということだろう。
しかし、出てくる廃物を処理できないものを始めたことが大きな間違いなのであって、原発の代替物などなくてもいいのだ。
電気は、今まででいちばん実績のあるもの、コストや負荷の点でバランス的に優れていると分かっているもので作ればよい。現状では最新型の複合型天然ガス火力などが中心だろう。
同様に、「原発を廃止して再生可能エネルギーへの転換を」というのも間違いである。
原子力か、太陽光・風力などのエネルギーか、という二者択一論争に誘導されてしまった時点で、脱原発グループは原子力ムラの思うつぼなのだ。
無理のある発電であっても、コストや環境負荷などのマイナス面を無視して税金を惜しげもなく注ぎ込めば「業界」が成立してしまう。それが諸悪の根源であり、この構造を変えない限り、原発はなくならないし、新たな利権集団によってこの国の国力、国土の健全性がどんどん失われてしまう。もはや、そんな金も時間もない。

電力不足で倒産、失業、病人の死亡事故が起きると思いこむのは「恐喝」にまんまと乗せられている。
そうした嘘、恐喝を「冷静な議論」であるかのように伝えるメディアにも問題がある。これもまた、電力会社の寡占体制を許したシステムが可能にした詐欺だ。
あの犯罪企業東京電力でさえ、3.11後は、必死に火力発電所の復旧や新設を行い、目の前の夏の電力不足を解消させた。関電はもっと時間的な余裕がありながら、そういうあたりまえの、つまり、人道的に当然しなければならない努力をせず、原発再稼働にしがみついた。そうしないと儲けが減るからだ。一度構築した金儲けシステム(税金投入と独占経営がそれを可能にしている)を手放したくない。そのためには、どこかで人が死のうが、貧乏人が今より貧しい暮らしにあえいでも知ったことじゃない……。
「無責任」なのは誰か。明々白々ではないか。

その意味で、「脱原発」という言葉もよろしくない。
「脱」というのは、依存していた状態から脱するという意味だと思うが、原発はそもそも始めてはいけなかったのだから、「脱」ではなく、反原発、非原発でいい。
「脱」という言葉は、原子力ムラの住人のように、原発でさんざん金儲けや出世をした人間に対して言うべき言葉だ。

●福島のために何かしたい、というのは傲慢か?

「怒ったり、大きな声を出すエネルギーがあるなら、被災地の人々の救済のために向けるべき」という論調も、このところずいぶん見るようになった。
これは一理はあるかもしれない。
実際、福島の内実を知っている人間の中には、「外の人たち」が再稼働反対デモや集会を開くことは、ほとんどどうでもいいこと、勝手にやってろ、でも、うるさいから福島に来てまでやるな、という気分があることは間違いない。
フェイスブックなどを見ていても、福島で現実に生活をしている人たちは、再稼働反対デモや反原発集会などに対してはとても冷ややかなコメントを書いている例が多い。
例えば、「『たかが電気』と言う人間が電気自動車のテレビCMに出ている」というコメントがあった。これもまさに、人々の苛立ち、「すっきりしない気持ち」を如実に表している。

誤解なきように断っておきたい。再稼働反対デモは大切な意思表示である。僕はこれに関しては全面的に支持する。
しかし、そこに集まった人たちの考え方、主張は実にまちまちだ。まちまちなことは、一色に染まっていることよりははるかにいいことだが、中には明らかに人々を(結果として)ミスリードしている可能性の高い、トリックスター的な「有名人」もいる。頭のいい連中は、そうしたスターをどのように利用できるかを常に考えている。すでに、十分に利用されている有名人、あるいは自分のトリックスターとしての役割を心得て巧妙に動いているのではないかと思わざるをえないような「有名途上人」もいる。
……これがすごくやっかいだな、と思う。
明らかにおかしい、間違ったことを言っている人であっても、現在の状況を総合的に判断しながら、今はそこを突いているより、動いてもらって全体の力を引っ張ってもらったほうがいいのではないか……などなど、すっきりしない判断をしていかなければならない。
例えば、選挙は構造を変えるためのひとつの手段だが、強盗と詐欺師とどちらを選ぶか、という様相の選挙を目の当たりにすると、暗澹たる気持ちになる。まあ、選挙というやつには、常に裏切られ続けてきたけどね。

原発のことだけでなく、今の日本はもう末期症状で、政界、経済界(この言葉自体がなんだか意味不明で気持ちが悪いが、便宜上使っておく)、行政、あらゆる現場での根本的な構造改革が必須になっている。
そのことをしっかり認識した上で動いていないと、途中で息が切れてしまうし、一過性の現象で終わってしまうかもしれない。
批判を恐れずに言うなら、「構造」を変えられないままでは、個人ができることは極めて限られている。福島が抱えている問題はまさにそういうことなのだ。ただ単に手を差し伸べればいいということではない。
全体として少しでもマシな方向に向くには、どうすればいいのか。多少の間違いには目をつぶり、訂正は後からということにして、今は正面衝突で死ぬよりは側溝に脱輪してでも舵を切ったほうがいい、というような判断をしていくしかない。

とにかく、このままでは、原子力開発によって日本を危機的な状況に導いていった人たちにより、新たな詐欺で、日本という国がさらに「失われた◎年」どころか「致命的な訂正不能時代」を重ねていくことになりかねない。
これを阻止するために、自分ができることはなんなのか? どうすることがより「マシ」なのか?
日本人全員が、そうした難しい判断を突きつけられている。
この点では、福島の原発立地の人たちは、外の人よりも重い責任を伴っているかもしれない。
安易な絵作りをするために30km圏に出かけてそこの子供たちと一緒に何かやる図を報道させようとする首相を、笑顔で迎えて握手をねだるようなみっともないことだけは、せめてやめてくれ、と言いたい。



具体的にすぐできる「はず」のこと

個人レベルでできること:
原発温存か「再生可能エネルギー」推進か、という議論がまったくの詐欺であることをしっかり認識すること。これ以上騙されて税金の無駄遣いをさせないこと。
犯罪者たちを絶対に許さないこと。

地元学 勉強中


復活した沢がまた涸れていた。
流入口を元通りにされてしまい、水が入らなくなってしまったからだ。
この事態は予測していたから、ああ、やっぱり……というところ。
もともとの沢筋が壊され、途中で田んぼの用水路と一緒にされてしまっているところに根本的な無理がある。
沢筋の水路は従来のように独立して引き直さないと、沢の管理はできない。
なぜこんなバカげた工事をしたのだろうか。
実施した責任者は誰(どこ)で、以前はどうなっていたのか。
住民たちはやはりまとまらず、「触れたくない問題をほじくりかえしてくれた」という対応をする人もいる。
これも想定内。

たまたま、フェイスブックで、水俣市在住で「地元学ネットワーク」というのを主宰している吉本哲郎氏が福島市で講演をしたという記事を見つけた。
吉本氏のことはまったく知らなかったが、プロフィールを拝見すると、

1948年水俣市生まれ。1971年、宮崎大学農学部卒業後、水俣市役所に入る。
都市計画課、企画課、環境対策課課長、水俣病資料館館長をへて、2008年退職。
1997〜1999年 熊本大学非常勤講師を務める。
国内外で、地元に学んで人・自然・経済が元気な町や村をつくる地元学の実践にあたっている。水俣市在住。

……とある。
講演の内容をまとめているブログを読むと、実に示唆に富んでいて、すっかり感心してしまった。

少し抜き書きさせてもらうと、

 水俣病を経験した水俣市と同じ道を福島は歩むだろう。
 水俣市は水俣病のダメージから抜け出すのに40年以上の歳月を要した
 風評被害、偏見、イジメ、「水俣」の名前では売れない農産物、子供たちの結婚や就職にも悪影響……これらは福島のこれからにも予想される。

福島原発事故と水俣病は多くの共通項を持っている。

●国策  ●科学万能  ●経済優先  ●人命軽視

●事故の完全な後始末は不可能  ●問題解決に長期間かかる

●地域社会の対立(事後の行政などの方針によって出現・拡大)

 しかし、多くの苦難を経ても、水俣は「環境都市みなまた」として、ISO14001を先んじて取得するなど、環境先進地として甦った

吉本氏は自らの経験をもとに、福島に対して、

……と提言する。

そのためのキーワードとして、 ……といったことをあげ、この哲学から生まれた、自身が提唱する「地元学」についても言及した。


この「地元学」については⇒ここにまとめたものがある。
読んでみて、すっと納得できた。おためごかしの「地域興し」論ではなく、ちゃんと気持ちが入っているし、実践的な内容になっているのに感心させられた。

地域の人を「土の人」、外から訊ねてくる人を「風の人」と表現するなど、なかなかの詩人でもあるようだ。

他にも、日めくりカレンダーの名言集みたいなものとしては、


……などなど。実に頭のいい、やり手の人なのだと想像する。
今までなら、「ふうん。そういうものかもね」くらいの感想だったかもしれないが、去年からの様々な経験の後だから、こうした言葉の数々がひとつひとつ心に食い込んでくる。

僕は元々、地元意識とか、人との深いつながり、関係というのは苦手で、できることなら距離を置いて生きていきたいと思ってきたが、それではすまされないということを、去年からの経験で嫌というほど学んだ。
同時に、深入りしすぎて自滅してしまうことも恐れている。

「失われた沢」問題は、ここ、日光に来てから最初の試金石かもしれない。
「触れたくない問題」「あまり考えたくない」「放っておいて済む間はとことん見ないことにしておく」という態度をとれば、まあ、日々の生活の範囲では楽だろう。
そう言ってのける住民の気持ちはとてもよく分かる。
でも、そうした無関心、無責任の蓄積が、放射能だらけの日本、自然を壊し尽くした日本につながっているのだから、やはり、できるところから、つぶれない程度には努力していかなければならないと思う。
僕にとっては、東京まで行ってデモに加わるより、流れ着いたこの土地で、逃げずに問題に向かうことが、意味のある「実践」なのだと思う。

※写真が1枚もない「阿武隈日記」は1年に1ページあるかないか。こんなページでも、最後まで読んでくださってありがとうございました。



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