2012/08/03の2

なんということ!! 産んでいた!!(承前)

干からびた卵は小さめで、まだ若いモリアオが産んだことが分かる。
一昨年、去年と、若い♂が♀を求めて鳴いていたのは見ている。あれはやっぱりシュレではなくモリアオだったのだ。声が少し低かったから、そうではないかと思っていたのだが。
ということは、やはり♂が精子をかける程度に成熟するまでに3年、♀が卵を産むまでに育つのに4年はかかるのかもしれない。
あるいは、最初の年に生まれたモリアオのうち、生き残ったのが♂だけで、♀はその次の年以降に生まれたグループでようやく生き延びたのかもしれない。

ああ、それにしても……。
自分を責めずにはいられない。
それも、いろいろな要素が絡み合ってのこの結果。

なぜこんなことになってしまったのか。
本来なら、この土地に来てから記録し続けている阿武隈日記、最大のハイライトだったはずだ。
「モリアオガエル同棲計画」を立てたのは越してきて3年目の2007年のことだった。
その前の年に平伏沼でモリアオの卵を初めて見て感動し、俄然、カエルのことを研究し始め、一度は重機で埋めてしまった池を手掘りで掘り返すことから始まった。
その後、最初の2年くらいはうまくいったが、2009年くらいから池での成長具合が思わしくなくなり、なぜなのだろうと悩みながら、いろいろやってみた。
沢水導入パイプを100m以上引っ張って上流から水を引き込んだり、土を入れて池を浅く造り替えたり、その間も、土手池、弁天池と、新しい池を増設していったり……。
で、待ちに待った3年目の2010年は、若いモリアオの♂が懸命に♀を求めて鳴いているのを見て、期待して見守ったがダメだった。
2011年は原発が爆発して避難を余儀なくされたが、4月末には戻って、カエルの季節である6月から夏にかけては、水が入らなかった田んぼを見ながら、村内のモリアオパトロールも続けていた。
カエルは激減したが、代わりに警戒区域の入り口で子猫が2匹捨てられているのを見つけてしまい、拾ってしまった。
2011年も池の調子は悪く、気力が失せてしまって迎えた今年2012年。
……甘かった。
もう少し気持ちを持続できていれば……。
本当に情けない。
まったくお話にならない。
いっぺんにいろんな思いが頭の中に蘇り、様々な考えがよぎり、思考も気持ちもまとまらないまま、干からびた卵塊を見つめていた。

本当なら歓喜で万歳をしていたはずなのに……


他にもなかったのかと探してみると……


土手池の上にもひとつ残骸があった


これは下に落ちたことは落ちたようだ。でも、土手池も……う・う・う……


弁天池に少しだけ生き残っているオタマだけでもなんとかしようと、ホースリール2つをつないで注水中


干からびた卵を開いてみた。オタマの死骸はなかったので、落ちた後なのかもしれない



なんとも言いようのない重い気持ちのまま、のぼみ〜の待つ日光へ戻る。
気持ちが少し落ち着くにつれ、来年以降のことを考えられるようになった。
少なくとも、来年からは工夫して、カエルの産卵の時期はここに一日も長く滞在できるようにしよう。のぼみ〜がいちばんの問題になるが。
成長したのぼみ〜は、この狭い家では収まらず、網戸を破ったりして外に出てしまうだろう。外には強い野良猫もテンなどの野生獣もいる。今までほぼ無菌状態で過ごしている二匹にとっては、病原虫などの感染も避けられないだろう。事故も心配だ。
これをどうにか解決すれば一家で長期滞在できるのだが。無理そうなら「単身赴任」かなあ。

この村は、大半の場所で放射能的にはほとんど問題ないだろう。少なくとも外部被曝については。
やっかいなのは、村の人間社会が変化していくことだ。
でも、我が家の周りだけなら、そういうことをあまり気にせずに暮らせるかもしれない。
すぐそばにソーラーパネルを敷き詰められた元田んぼの風景が出現したら嫌だけど。(そういうのが「復興」の名のもとに行われていくのを見るのが嫌だから村を出たのだ)

おそらく、これだけ雨が降らないと、今年の夏も平伏沼は干上がっているのではないか。去年も全滅だったから、あと1、2年この状態が続けば、平伏沼のモリアオも激減するかもしれない。
すでに、田んぼが消えたために、アカガエルやアマガエルの姿がめっきり減っている。シュレもこのままでは地域絶滅だろう。ツチガエルはもともと絶滅寸前だった。
皮肉なことだが、田んぼから水が消えても、タゴガエルやカジカガエルなど、沢を生息域、繁殖場所にしているカエルにはあまり影響がないと思う。山奥の沢筋にいるサンショウウオの類もそうだ。
希少種は特殊な環境で生きているので、そこまで開発の手が伸びなければ生き延びられるが、アカガエルやアマガエルのように、ごくあたりまえにいて、田んぼを繁殖場所にしているカエルは、環境変化で大量死につながり、今までいっぱいいたのが一気に姿を消すということになりかねない。
例えば、スズメはかつてあたりまえすぎる鳥で、野鳥という認識すらなかったが、今ではめったに見られなくなってしまった。
存在があたりまえすぎると、まさかいなくなるなんて想像がつかないから、本当に数が減ってから「あれ? そういえばあれはどうしたんだろう」ということになる。

日光に移ってきて、アカガエルが少ないことに驚いた。田んぼではトウキョウダルマガエルしか見ない。
トウキョウダルマガエルだらけ。
これは全国的には特異なことらしくて、トウキョウダルマガエルは絶滅危惧種にされている地域もあるのだが(栃木県でもかつては絶滅危惧種Bに、今でも準絶滅危惧種になっている)、少なくともここ、日光市ではトウキョウダルマガエルしか見ないので、アマガエルくらいあたりまえで、つまらない。(人間って勝手だよね。川内村の自宅周辺には当初トウキョウダルマガエルはいなかったのが、2010年に初めて数匹見かけて歓喜したものだ)
川内村も、数年後にはアカガエルの姿がほとんど見られなくなって、トウキョウダルマガエルのほうが目立つようになっているかもしれない。
いずれにせよ、このまま田んぼに水が入らない状態が続いて、さらには田んぼをつぶしてメガソーラーなんてことを始めたら、「カエルの里」というキャッチフレーズは返上せざるを得ないだろう。
そんなことになる前に金が尽きてくれればいいと、僕は真剣に願っている。非国民と呼ばれようが、危険人物として干されようが。
はっきり言えば、自然エネルギー推進を唱える人たちは、慎ましさ、謙虚さが足りない。
あれをやるためにどれだけの金を注ぎ込み、環境を変えてしまうことになるのか、想像が足りない。
基本的には、「自然エネルギー」を使うというのは、それだけ自然界からエネルギーを奪うということでもある。
大型風車を回す風は、本来はそこを通過してどこかに大気の流れを届けていた風だ。
ソーラーパネルが電気に変換する太陽光、太陽熱は、本来その下の地面に届き、生物層に光と熱を与えていたものだ。
これらは「薄く広く」拡散しているエネルギーであり、それを集めてまとまった電気エネルギーに変換するためには、別のエネルギーを集約的に使う必要がある。もちろんそのためには大量の地下資源も使う。
効率を無視して、税金や公共料金から奪った金をつぎ込めるからこそ成立するビジネスだ。
言ってみれば、ものすごく贅沢なエネルギーの使い方だ。
そうまでしてエネルギーを得なければならない社会は持続可能な社会なのか?(正確には、まだまだ地下資源があるからやれるのであって、現時点ではやればやるほどエネルギーを余計に使ってしまう)
それ以前に考えるべきことがあるだろう。
どうやったら無駄なエネルギー消費を減らせるか。脅しと強奪で成立している現代文明社会(原発はその典型)を、ソフトで足(たる)を知る文明(「知足文明」とでも呼ぶべきか)に変えていくにはどうすればいいのか。
少しのエネルギー消費でたくさん幸せを得られる世の中とはどんな世の中なのか。
そういうことをまず想像してみる。
そこから始めるべきじゃないのか。
そうした思考や努力をすっ飛ばして、原発をやめて自然エネルギーに転換だ、ではダメなのだ。
原発がなければ経済が停滞して日本がダメになる、というのは真っ赤な嘘だし、国家的な詐欺だ。
同じことが「原発をやめて自然エネルギー推進を」スローガンで行われている。
自然エネルギーを導入するためにお金がかかるのでみんなで負担してください、というのが、どれだけとんでもない詐欺なのか、原発でもう分かったはずなのに、なぜ同じことを繰り返すのだろうか。
原発を止めること、廃炉にしていくことは急務である。これには疑問の余地がない。
反原発運動をしている人たちがみんなちゃんとエネルギー問題の本質を理解していたら、原子力ムラはもっと簡単に解体できるのではないか。今の「自然エネルギー推進」風潮は、原子力ムラにいる連中の延命措置になってしまっている。
もう、無駄遣いをしている余裕などないのだ。みんなで必死に省エネ、効率化、社会構造変革を考え、進めていかないと、人間社会は滅亡を早めるだけだ。

村を出ると、目の前に滝根小白井ウィンドファームが広がる。
このクソ暑いときに、回っていない風車が増えている。
おそらく、東電管内で電力需要が逼迫しているために、風力発電から引き受けられる電力量がいつもより制限されているのだろう。風力発電は消費電力総量変動の「誤差の範囲」内でしか受け入れられないから、需要が増えて危ないときは「解列」といって、送電系統から外してしまう風車が増えるのだ。
ピンチになると怖くて実践では使えないから、戦列から切り離し、ベンチ入りしてもらう宣伝用の選手。
そんな基本的なことも、伝えるマスメディアはない。
電力会社が、基本的なデータをなぜ「企業秘密」として隠し続けるのか。そのへんのことを想像する力がないと、我々庶民はいつまでも食い物にされるだけだ。

川内村を出ると目の前に現れる滝根小白井ウィンドファームの一部。この風車群の向こう側に平伏沼がある



いつもは1基、2基止まっているのだが、この日は暑くて電力需要が逼迫しているせいか、4基、5基止まっていた。
このところの炎暑で電力需要は逼迫しているが、風がないから、回っているように見える風車もほとんど発電はしていない。夏場は定格出力(最大出力)を得られる風速に達しない時間帯がほとんどだから、発電総量もがくんと下がる。
そういう発電実績データを風力発電会社は公表しない。知られては困るからだ。

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