2012/10/05の7

天井裏から出てきた未発表原稿の山



カメラの話が続きすぎたので、ここで別の話を。
百合丘の旧仕事場、最後の荷物整理に行った際、そのまま封印してしまおうかとも思っていた天井裏に入って、いくつか荷物を発掘した。
その中に、自分でもすっかり忘れていた昔の小説原稿がいくつもまぎれていた。
まだパソコンが普及する前(1980年代)のことで、ワープロ専用機で「書いた」もの。
愛用していたのはサンヨーのサンワードというワープロで、漢字変換効率がよかったので使っていた。
しかし、初期のモデルはテキストファイルに吐き出す機能がなく、後に、テキストに吐き出せるモデルを買ったが、保存がフロッピー(しかも2DD)だったりして、ファイルとしては今では読み出せない。
旧仕事場に残っていたフロッピーディスクの山は全部ゴミとして捨てた。その中に現行ファイルも入っていただろうが、読み出せないのだから仕方がない。
当時はインクリボンが高かったので感熱紙を使っていた。感熱紙に印刷した原稿は時間と共に字が薄くなって読めなくなる。
ここに残っていた原稿の中にもそういうのがあったが、ほとんどはコピー機でハードコピーしたものだったので、幸いこれは今でも読める。
日光に持ち帰ってスキャンし、画像で保存した。


↑これは第四回小説新潮新人賞に応募し、候補作に残った『ざ・びゃいぶる』を後に書き直したもの


↑暗〜い小説


↑この世の陰の支配者は、目立つポジションにいるのではなく、中小企業の社長などの姿をしている……という話


↑神様シリーズというのをいくつか書いたのだった


↑これは叔母が亡くなったときのことを書いたもの。親戚が登場するので別名を使っているのだろう


↑これは恥ずかしい! 大学時代の体験がもろに散りばめられた「青春」?小説



……で、中でも興味を引かれたのが『鐸の音流るる丘に』という100枚の作品。
これは、『ざ・びゃいぶる』で第四回小説新潮新人賞候補作に残った2年後に再チャレンジしたときの作品。1988年。
すごく苦しんで書いたような記憶がある。
頑張って書いたわりには、達成感というか、成就感があまりなかった。悩んだまま応募。
案の定、今度は一次審査も通らなかった。
(それにしても、一次選考を通らないというのは、下読み選考委員がまともに読んでいないということだ)

それですっかり嫌になり、そのまましまい込んでしまったのだろう。書いたことも忘れていた。
しかし、今読んでみると、それなりに面白い。
応募票がそのまま残っているのでそっくり載せてみる。

銅鐸とはなんだったのか? という疑問から想像を膨らませていき、縄文時代末期、日本が大陸から渡ってきた天孫族らに征服されていったときのお話を奇想天外に想像(創造)したものだ。
当時僕は33歳。自分の中に流れている縄文の血への思いや、現代社会への失望、阿武隈の地への憧れのようなものが、あの頃すでに完全にできあがっていたのだということが、この作品を読むと確認できる。

書き上げた直後は未消化な感覚しかなかったのだが、原発が爆発し、東北の地を一旦離れた今、これを読み返すと、なんとも言えない気持ちになる。
例えば、最後のほうで、主人公?のコロタが、故郷に戻り、これから天孫族に征服されようとしている村に暮らす自分の子孫と会話するシーンがある。


「コロタ様。明日死んじまうかもしんねえなら、最後にひとつだけ教えてくれろ」
 シロが、かなり真剣な表情で言った。
「何じゃい?」
「タクってのは、結局は何じゃったんだ?」
 コロタは少し考えてから、ゆっくりとロを開いた。
「タクか……。タクは、わしらの思いもよらん力をいっぱい持っとった。じゃが、わしらと同じようにものを考え、歌を歌い、悩んだり苦しんだりする生き物じゃった」
「生き物? 生き物じゃったですか、やっぽり」
 シロが言った。
「じゃな。思うに、多分、誰かこの世界をどこかから見守ってるやつがいて、そいつが、わしらとこの世界が仲ようやっていけるようにと願って送り込んだ、伝言板みたいなもんだったんじゃねえかなあ。そいつはきっと、わしらみたいな『形』を持ってないんじゃ。それで、わしらと交わるためには、何かの。『形』が必要じゃったのかもしれん。その『形』がタクだっえんじゃねえかなあ。わしは最近そんなふうに考えるようになってきた」
「要するに、神さんの使いってことでっしゃろか?」
「いんや。神さんなら、あんなに悩んだりすんめえが」
「分からんがあーっ!」
 ミコマルが首を大きく横に振った。
 シロは構わず、さらに訊いた。
「で、伝言板だとするなら、タクは一体おらたちに何を伝えたかったんじゃろか?」
 コロタは、またしばらく考えてから、こう答えた。
「海の心かなァ」
「海の心?」
「んじゃ。海は大地の偉大な濾過装置じゃ。河がどんなに汚れても、海は何も言わず、その流れを受け止めて、清めて、また雨に戻してくれるべ。わしらの心の中にも、そんな海みたいな濾過装置が必要なんじゃ。利口の民のように、すべてを支配したいという欲を、どこかで受け止めて鎮め、濾過する『心の海』じゃな。そういうもんがなければ、わしらはいつかこの世界から孤立して、濁った水たまりみたいになっちまうんじゃねえかなあ」
「そして、誰も海を支配することはできんっちゅうことでっしゃろか?」
 コロタはその質問を頭の中で反芻していたが、答えられなかった。
 利口の民の巨大な槍は、いつか偉大なる海をも殺してしまうかもしれない。そんな気がしていた。



およそ四半世紀前、33歳のときに、すでにこんな世界観を持って小説を書いていたのだなあ、と。
利口の民──つまり、支配者層の巨大な槍は、今も暴走を続け、偉大なる海を汚している。
あのときは想像で書いていたことが、現実に、想像以上の規模で起きている。
う〜〜〜ん。

作品としては稚拙だし、スカッと抜けた感じがなく、カタルシスを得られないと思うのだが、これはこれでひとつの「歴史」というか、自分史の一コマとして、公開してもいいだろう。もう残りの人生あんまりないし、いちいち考えていても仕方がない。
……ということで、一気にスキャンし、それをOCRソフトでテキスト化し、校正をしてPubooにアップした。
⇒こちら
ePub形式とPDF形式でダウンロードできる。ePubはアップルのiBOOK形式だから、iPadやiPhone、iPod touchでも読めるはずだ。
実際、iPadでダウンロードしてみたが問題ないようだった↓

↑iBOOKの本棚にちゃんと入った『鐸の音流るる丘に』の上下巻


↑iPadのiBOOKで開いてみたところ


もちろん普通のWEBブラウザでも読めるし、AdobeリーダーでPDF版を読むこともできる。
時間を見つけて、他の未発表小説原稿も少しずつテキスト化し、PubooにUPしていこうと思う。

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