2012/11/24

福島の「本当の悲劇」

選挙前シリーズその4。
↑これは、1F(東電福島第一原子力発電所)に作業員として働きに行った40歳男性の実名告白を動画にまとめたものの1コマ。
詳しくは「裏日記」に書いたので、興味があるかたはぜひ。



で、現場の実態はこう↑なのだが、1Fの外側で起きていることのエピソードをいくつか追加。

こんなspamメールが来た。


//去年と今年の売り上げが下がった分に対して、取り戻しができます。
対象は、福島県の個人、法人全事業者
条件は、福島県で事業をされている個人、法人で去年、今年と売り上げが下がっている事業者が対象です。
面倒な計算作業、手続きを代行します。
もちろん成果報酬ですので、最初の費用は不要です。
詳しくは、お問い合わせください。//



。。。。。。。。すごいな。
逞しいというかなんというか。
これはもちろん、福島県内の事業者は、売り上げ減少、利益減少を東電に訴えて賠償請求できるということをさしている。
このメールを送りつけてきたのは東京に住所のある株式会社。マルチ商法でネット上にいくつも書き込みがある会社と同じ名称だったが、まったく別の会社かもしれない。いずれにせよ、なんだかなあ……だ。

福島に注ぎ込まれる税金を自分の稼ぎに取り込むビジネスモデルとでも言えるだろうか。
わっとたかる企業は、大企業からこんなレベルのものまでいろいろあるのだね。「経済の活性化」とか「復興」とかって言葉には、こういうものもすべて包括されているわけだ。
なんか呆れるを通り越して感心してしまった。
確かにこれで助かる人もいっぱいいるだろうし、非合法ではないだろう。よくテレビで見る、「サラ金に利子を取られすぎているかもしれないあなた、私たちが取り戻すお手伝いをします」という弁護士事務所のCMと同じ発想のビジネスにすぎない。それにしてもため息が出る。
「強い日本」などというキャンペーンとは正反対な商売のあり方だろう。


東電への賠償請求を自分の手で実際にやったカフェの店主(30km圏外の田村郡エリア)が言っていた。

毎週、町の施設で相談会がある。そのカフェは、県外のお客さんが多いし、ナチュラリスト志向の人たちがよく集まる。だから原発爆発は致命的だった。常連さんは県外に引っ越していってしまったし、関東圏からのお客さんもほとんど来なくなってしまった。そこを訴えて請求したら、あっけなく賠償金が出て拍子抜けした。

「でもね、何となく気持ちがスッキリしないのですよ。で、何かトラブルが起きると、東電から金もらったからだぁ・・.なんて考える。精神衛生上よくありません。やっぱり、地道な努力が一番かと」

この店主、宮城県の海沿い地区で市民講座の講師をしているそうだ。
そこには津波で命を落とす寸前だった人、家も船も車もみんな流されて、残ったのはそれらの鍵だけなんて人たちも集まってくるが、みんな笑顔で受講している。
彼らに福島のことを話すこともあるが「本当の話」はできない。

「当たり障りのない仮設の話や、被災動物、自主避難した友人などの話をします。すると、すごく心配してくれるんですよ。自分たちも被災者なのに。申し訳ない気がします」

「30km利権」から外れたこの店主は、たった一度、売り上げが激減したことに対する損害賠償を求めただけで、「申し訳ない気がする」と告白している。
30km利権で以前より収入がはるかに増えた家庭はたくさんあるが、「申し訳ない」という言葉を聞いたことはない。
どうやったらもっともらえるかという話ばかり耳に入ってくる。
こればかりは、親しい友人同士でも、どんどんタブーになっていて、自然と訊くのが怖くなる。

賠償金のせいで不幸になるペット動物もいる


賠償金をめぐって、動物たちが犠牲になっている例もある。
加工せず、僕がもらったメールそのままを転載してみる。



……には、被災動物の保護施設があって、県の施設、民間の施設、今月から稼動する国の施設と三つあります。
保護されている犬や猫は、飼い主が判っているのが多いのですが、様々な理由で引き取りません。
譲渡権を放棄してくれれば、新しい里親を探せるのですが、補償に影響するかもしれないからと、手放そうとしません
で、面会にも来ません。
高齢なワンコが多く、施設では、冷暖房完備獣医付き、ボランティアが毎日散歩もしてくれ、環境は悪くありません。
もしかしたら、施設にいる方がシアワセかも知れません。
これまで、ろくに散歩をしたことがない犬も多いそうです。
そう、ジョンみたいに。
田舎では、繋ぎっぱなしな飼い主多いですから。
保護施設は、まるで、高齢者のホームのようです。
本来、被災動物の保護施設は、里親を見つけて、閉鎖に向けて活動するのですが、福島の場合、様々な問題があり、膨れています。
その実体を、ちょっとだけ見て、何ともやりきれなくなりました。

今、福島は、様々な助成金が行き交って、一部で震災バブル化しています。
週末のイベントの多さにうんざりします。
どっから出てる金なのやら~ですね。

支援物資のたらい回しは一段落しましたが、今は、見えないところでお金が飛び交っています。
今の福島、要領よくやれば、あぶく銭が入りますから。
いつの時代も、似たようなものかもしれません。


こうした負の精神的エネルギーが福島に渦巻いているということが、最大の原発被害ではないかと思う。




どんよりしてしまうので、せめてのぼるくんの寝姿でも見て、少しほっとしてください。

おまえはほんっとに幸運だったよなあ……




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