2013/02/08

今年の雛人形(続き)

日本橋髙島屋、横浜髙島屋、ともに雛人形展終了。
搬出も終わり、これから、少し暖かくなったら後片づけ。
第一陣(日本橋髙島屋の分)の続きを。

十二単の座り雛は、今年は3組出して、全部売れた


十二単の衣装を木目込みでやるのは大変な作業


しかも、宮中の様式美というか、決まった形式を極力守るため、勝手なデザインができない



手間が半端じゃなくかかる


鐸木郁子・作 『丹』

しかし、芸術性という意味では、僕は立ち雛こそオリジナリティ、美術としての価値を高める余地があると思う。
造形の自由度がある分、制作者の感性、個性を発揮できる。使う生地も大胆な工夫ができるし、コーディネートの妙も演出しやすい。全体がシンプルな分、顔の出来不出来も目立つから、ごまかしがきかない。
インテリアとして1年中飾っておいてもおかしくない。
僕も、制作者である助手さん(これは妙な表現になった)も、実はこの立ち雛↑こそ、今年いちばんの出来だったのではないかと思っているのだが……。
実際、評判もよかったという。玄人筋には特に。

でも、昨今は立ち雛は売れないのだという。
立ち雛や室町雛などを買い求める人は、孫の初節句のためにとかいうのとは関係なく、自分のために買うというケースが多いらしい。自分がその人形が好きだから買う。自分が見て楽しむ。ゆっくり鑑賞する。
それが、不景気になり、人形を趣味で買い求められる余裕がなくなっているのだろう。

桃の節句〜ひな祭りという風習があるからこそ、不景気でも美術品としての雛人形が売れるのだから、それはそれでありがたいことなのだが、立ち雛や室町雛のような、芸術的要素を込める余地のある雛人形も売れてほしいと思う。
売れなくても、「これ、いいね」と感じてくれる人がいればいいわけなのだが、「いいね」だけでは生きていけないところが難しい。

芸術性と売れる/売れないは必ずしもリンクしない。これはいつの世でもそう。
一方で、芸術というのはお金に余裕がある世の中で成長する。
音楽は特にそう。クラシック音楽は貴族社会で生まれたもので、かつて庶民はオーケストラの演奏を聴くなんてことは一生できなかった。金持ちだけが知っている価値だった。
それが、蓄音機の発明のおかげで、庶民も音楽を楽しめるようになった。
さらに、現代では、デジタル技術発展とコストダウンのおかげで、その気になれば、フルオーケストラ音楽を全部コンピュータの打ち込みで再現することだってできる。一人で交響曲を作曲して、疑似再現することもできる。
だけど、そんなものは決して評価されないし、商業的にも成立しない。結果、人の耳に届くこともない。……どんなにいい曲でも?? ……そう、どんなにいい曲でも、耳に届かないのだから、存在していないも同然になってしまう。

だから、どこかでえいやっと割り切って、最後は自分のためだけに創作することになる。
それが続けられるだけでも幸せなことなのだと言いきかせながら、継続する。


これも無事、売れていきました








髙島屋の展覧会を終えて戻ってきた助手さんが、昔の新聞記事の切り抜きを持って来た。
木の鐸会の先輩会員が、お袋に弟子入りしたきっかけとなった新聞記事の切り抜きをコピーしてくれたそうだ。
平成7(1995)年2月8日の日付。18年前の今日だ。

お袋は脳梗塞で倒れてからの数か月は悲惨だった。安楽死、尊厳死の問題を、目の前に突きつけられた。
多くの医者が「自分は癌で死にたい」と言っている意味がよく分かった。
テレビドラマなどで、よく、親の死に目に子どもが涙を浮かべながら必死に声をかけているシーンなどがある。今日のNHKの連ドラでもそんなシーンがあった。
ああいうのを見るたびに、自分はそういうの、できなかったなあ、と思う。
やろうと思えばできた。時間的な余裕はいくらでもあった。
でも、意識があるんだかないんだか分からないお袋の姿を目の前にして、話しかけるということさえできなかった。我ながら、冷たい人間だな、と思う。
しょーもない作り物のドラマや、他人のエピソードでボロボロ涙が溢れるほど涙腺が弱いのに、実の親が倒れたときも亡くなったときも、ほとんど涙が出なかった。悲しいという気持ちよりも「あ〜、そっか〜」と、なんかぽか〜んと割り切っていた。
そういうのって、必ず自分に返ってくるだろう。死ぬとき、いや、死を目前に感じたとき、どれだけの孤独感を味わうことになるのか……。
昔はこんなじゃなかったように思うのだが、その頃の心の記憶、感覚、感触が今は戻らない。
ドライになる、割り切る、諦める、自分を貶めることで乗り越えた苦しみもある。十数年前のこと。
あの時期の前と後では、別人の人生なのかもしれない。だから、昔のこと(何が起きたか)は思い出せても、昔の気持ち(どう感じていたか)が思い出せない。

お袋の遺骨を納めた墓は福島市の信夫山にある。お袋が自分で率先して親父や義母を説得し、建てさせたような墓だ。
その墓には、1年以上行っていない。
その墓地は今でも1μSv/h前後あると思う。お袋が今生きていたら、毎日怒り続けているだろうな。
お袋は一時期、本気で政治家になるつもりでいた。それを諦めたことがきっかけで、人形作家になった。そのときの決意表明みたいなものを、僕はしっかり覚えている。
「私はね、仕事を辞めなければ今頃は看護協会を背負って代議士として立候補していたかもしれないのよ。それを諦めたのは子供がいたから。だから、×××(妹の名前)が手を離れたら、それに代わることを始めるつもりだったのよ。いろいろやってみたけれど、たどり着いたのが人形。だから、これは一生やり続けるし、一生の仕事として完成させる」……というような内容のことを言っていた。
人間、生まれたからには、一生をかけて追い続けるテーマを持たなければもったいない、とも言っていた。
お袋は政治家に向いていたと思う。コネが幅を効かせる美術界の中でも、お袋は、僕には到底真似のできない処世術で、政治的にもよく動いていた。

死ぬ前、何度も「私の人生はいい人生だったわよね」と、自分に言いきかせるように言っていた。それが救いかな。


このページの写真はフジフィルムのXF1、X-S1、パナソニックのLX5で撮っています

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