2013/05/01

子供を「守る」ということの意味


オオカミ池転落事件??は、どうやら池には致命傷を与えずに済んだようで、水量は極端に減っていない。
まあ、人間の子どもがお話に加わると、のぼみ~日記に厚み?が出るので、読者?のみなさんには、より楽しんでいただけるかな……と。
ピーナッツブックスみたいな世界に近くなれば和むしね。

レギュラーのキャラが増えると面白いのだが、どうかな。
ひとんちの子どもだと、いろいろ気を使わなければならないし、フィクションとは違って、日記の中のドラマ作り??は難しい。


うちの裏側。裏手の家の敷地との間、ほんの1メートルあるかないかの隙間から見上げた風景


曇り空の夕暮れ。色がくすんでしまっているけれど、雰囲気は伝わるかしら


黄葉した秋の風景みたいだが、これ、新緑。実際こんな風に黄色っぽく見える


え~~と……


これは白ヤマブキ


夕方、こんな雲が……


窓から夕焼けの写真を撮っていたら、のぼるくんも後ろから見ていた


のぼるくんは窓のそばが好き

写真とは関係なく、いくつか今日考えたことなどを……。

「天皇陛下万歳」


僕の誕生日でもあった4月28日、安倍首相の肝いりで「主権回復の日」の政府式典なるものが開かれた。
政府から天皇への臨席要請を宮内省が断れなかった時点で、いわゆる「左派」と呼ばれる人たちだけでなく、「右翼」を自認している人たちの一部からもずいぶん疑問の声が上がったようだ。
陛下のご意志を無視して、安倍ごときが陛下を呼びつけるとは何事か……と。

⇒このブログ を書いている人の「大変お気の毒だと思うのは、天皇陛下も参列を安倍内閣に要請されたらしく、宮内庁も断るに断れない苦渋の選択をしたようだ。最終的に、式辞は述べないという条件で容認したようだが、心からお気の毒だと考える。あきらかに自民党の天皇の政治利用である」という部分は、まったく同感。
しかも、あろうことか、両陛下が退場される際、会場から突然「天皇陛下万歳」の声が上がり、それに合わせて、「壇上にいた安倍晋三首相ら三権の長がそろって両手を上げ、声を合わせた」(沖縄タイムス)というのだから大ごとだ。
このときの様子をTBSのニュース画像で見たが、両陛下、特に皇后のこわばった表情が印象的だ。
いちばんの「被害者」はお二人だったのではないだろうか。


↑TBSのニュース映像より

ところで、沖縄タイムスの記事の最後の部分も気になった。

//一方、児童合唱団が歌声を披露する場面でも不可解な空気が漂った。出席者に向かって舞台上で歌うのではなく、出席者と同じ舞台下から、天皇皇后両陛下や首相などが並ぶ舞台上に向かって「翼をください」などの歌を合唱した。//

杉並児童合唱団の子供たちは、歌い終えた後、舞台の下から、「天皇陛下万歳」と叫ぶ首相ら、「えらい大人たち」を見上げていたのだろうか。

子どもが、大人の勝手な行事に否応なく利用される図は気持ちが悪い。
4月になり、今まで幼稚園で習った童謡などを大声で歌っていた子供たちが、突然、「君が代」を歌い始めたりしている。一瞬ぎょっとするのだが、考えてみると「国歌」を歌う子供たちを見てぎょっとすること自体が不幸なことではある。
僕は子供を作らなかったが、30代後半の頃だろうか、子供を作らない同年代の男3人(編集者、ライターと僕)が集まって飯を食っていたとき、話題が「子供を作らないこと」になった流れで、ライターをしている一人がこう言ったのを覚えている。
「だってさ、そもそも学校に行かせていいものかどうかってところで悩んじゃうじゃない」
「そうだよね~」と、残りの2人もすぐに同調したのだが、ほんとにそうだ。
自分が子供の頃を思い出してみても、常に学校で問題を起こす僕と学校の間に入って親はなんやかやと「折衝」していた。
獏原人村の人たちも、子供が学校に行くようになってからは、子供のことでいろいろ学校や「村」と揉めたと聞いている。中学校に上がって、「校則」で男子生徒は全員坊主頭にしなければいけないと言われ、原人村の親たち(元ヒッピー?)が猛反発して、頑として子供に髪を切らせなかったエピソードなどは、マサイさんから聞かされたときは思わず苦笑してしまった。

27日から遊びに来ていた国連職員のSくんは、自分がふるさとを飛び出した理由についてひとつのエピソードを語ってくれた。
子供のときから遊んでいた川で、ある時期から突然奇形魚が異常に増え始めたことにS少年は気づいた。
上流側にできた工場廃液のせいではないかと子供心に思ったそうだ。
時期を同じくして、川で遊んではならんというおふれが出た。「大腸菌」に感染するからというような理由だった。
ところがある日、その日は学校の創立記念日か何かで、Sくんの学校だけが休みで、近隣の学校はみな通常授業だったので「外で派手に遊んだりしていないように」と言われていたが、Sくんは言いつけを守らず、遊んではいけない場所になっていた川で、いつものように魚とりをしていた。そこを見回りの大人に見つかって、後日、学校の朝礼のときに、全校生徒の前に出されて吊し上げのような形で怒られた。
「川に入るな」の理由が、実は大腸菌などではなく、上流側にできた工場の廃液など、別の人為的な要因ではないかとうすうす気づいていたSくんは、それを隠して、今まで通りに川で遊んでいたという理由で子供の側を叱る、しかも公開処刑のように晒し者にして叱るようなその地の体質にほとほと嫌気がさし、「こんな町は出ていく」と固く心に誓った。
「子供にあそこで遊ぶなと命じる前に、川を危険な場所にしてしまった大人の側の問題を解決するのが先だろう? 問題の本質に責任を持つべき大人は放置して、子供をつるし上げにする社会なんて、冗談じゃないって思ったよ」
……とまあ、そんな内容だった。

大人は、子供は何も知らないと思い込む(思いたがる)が、実は、子供は大人の嫌らしさを大人以上に敏感に感じ取るものだ。
僕にも似たような経験はたくさんある。
中学3年のとき、体育の時間で全員が1時間中走らされたことがある。体育館の中を、全員が「いちに いちに」と号令をかけながら一糸乱れずにぐるぐると何周も走らされる。
体育の時間はいつも、教師が現れるまで、これをさせられていた。50分の授業のうち、最初の10分くらいはこれだった。
たいていは、教師は始業開始のベルが鳴っても現れず、少し遅れてやってきて、適当なところで「よし、やめ」と命じる。その時間は気分次第で、長くなったり短くなったりする。生徒たちは早く「よし、やめ」の一言が出ないかと思いながら走り続けている。走らされる時間が長い日は、あいつ今日は機嫌が悪いのか? などと思いながら走り続ける。
その日は授業が終わるまで「よし、やめ」が出なかった。
そして授業の終わりに体育教師がこう言った。
「よしみつが髪を切ってくるまでは、これからもずっと体育の時間は全員で一時間中走るだけだからそのつもりでいろ」
当然、僕はクラスのみんなから集中攻撃を受けた。「おまえが髪を切らないせいで俺たち全員が迷惑する。いいかげんにしろ」と。
ちなみに、このときたったひとりだけ僕を擁護してくれたのが工藤くんだった。
「でもよぉ、おれはよしみつが髪を切ったら、それはもうよしみつじゃないんじゃないかって思うんだ。こんなやり方はおかしいだろ」
工藤くんのその一言で僕がどれだけ救われたことか。
その工藤くんは、今、母校の校長・理事長をしている。
僕は工藤理事長を基本的に信頼している。それは同級生だったときの体験からくる信頼だ。

小学生時代には「合唱隊・鼓笛隊事件」というのがあった。
6年のある朝、学年主任のT先生(1組の担任)が僕がいる4組に入ってきて、いきなりこう言った。
「この前の通信簿で算数5をもらった子は誰? 手を上げて」
みんなギョッとしたが、僕を含めて3人が手を上げた。そのとき初めて、僕の他に算数5の子はYくんと、僕の初恋の相手M子ちゃんだと分かった。
「この3人ね? じゃあ、この3人は今度の金曜日の放課後、1組の教室に来るように」
それだけ言ってT先生は去っていった。
なぜ「算数5の子」を1組に呼んだのか、理由は一切言わない。
後で1組の子を捕まえて訊いてみたところ「あ、それは合唱隊の編成のためよ」と教えてくれた。
T先生は鼓笛隊と合唱隊の統括責任者で、自分が担任している1組の児童を中心に合唱隊を編成していたのだが、それではまずいということで、他の組からも何人かずつ入れることになったらしい。その選抜の仕方が「算数5の子」だったわけだ。
僕はあまりの横暴さに頭に来て、1組には行かなかった。
合唱隊に入れば、愛しのM子ちゃんと一緒にいられる時間が増える。そのことにはものすごく魅力を感じたが、それよりもT先生の横暴ぶりに従いたくない思いのほうが強かった。
「音楽5の子」ではなく(それも十分に問題だが)、「算数5の子」を、本人の意志も確認せず、なんの説明もなく合唱隊に入れようとするT先生を許すことはできなかった。
すると、ある朝、朝礼の前に行進の練習をするために並んでいた鼓笛隊の列にいた僕のところにT先生はつかつかと寄ってきて「はい。ご苦労さんだったね。もう来なくていいからね」と、僕から太鼓を取り上げた。
僕は全校生徒が見ている前で、ボロボロに泣きながら、鼓笛隊以外の一般児童の中に入っていった。

この話は親が知ることとなり、学校に文句を言いに行ったようだ。数日後、T先生は「悪かったねえ。声変わりに悩んでいたんだね。知らなくてごめんね。鼓笛隊に戻ってきてね。太鼓が待っているよ」などと、甘い声で言ってきたが、僕は二度と鼓笛隊に戻らなかった。
太鼓叩きに憧れて、いっぱい練習して、それでも小太鼓には入れてもらえず、あまりうまくない子たちが集まる中太鼓のグループに入れられていたが、中太鼓の中では断トツにうまくて、リーダー格を自認していた。みんなが全然打てない難しい曲をごまかしてやっているとき、僕ひとりだけが、 んだだだ んだんだ んだだだっだ んだんだ ……と、裏打ちがいっぱいあるフレーズを自信を持ってでかい音で叩いていた。
鼓笛隊の中太鼓は俺が支えているんだという自負があっただけに、鼓笛隊を辞めて卒業までの残りの時間を過ごすのはとても辛かった。でも、あのT先生の「支配下」に戻るくらいなら……と、意地でも戻らなかった。

//児童合唱団が歌声を披露する場面でも不可解な空気が漂った。出席者に向かって舞台上で歌うのではなく、出席者と同じ舞台下から、天皇皇后両陛下や首相などが並ぶ舞台上に向かって「翼をください」などの歌を合唱した//


↑これを読んで、遠い記憶が甦った。
子供は大人の道具じゃない。


自分の意志に反して「道具」として利用されていい人間はいない。
現憲法のいちばんの精神もそこにあるはずだ。
「天皇陛下万歳」と叫んだ首相や議員たちは、自分たちが天皇を道具として利用したことを心から恥じ入れ。
自分たちがどれだけ非礼なことをしたか分かっていないのだとしたら、政治家以前に人間失格だろう。


「フクシマ」以降、放射能から子供を守れという声があちこちで起きて、今も続いている。これはその通りで、「フクシマ」に何の責任もなく、かつ、いちばん放射線の影響を受けやすい子供たちを最大限守っていくことは当然。
でも、それ以上に怖いのは、子供たちが自由のない社会で大人になり、生きていくことだ。
子供たちを「天皇陛下万歳」の世界から守ること、そのために人々が日頃から意識して行動することが、今いちばん求められていることなのではないか。
「天皇陛下万歳」と叫んで死んでいった人たち、特に、その後の日本を背負っていったであろうあのときの若い世代の人たちの無念さを忘れることが、いちばんの「不敬」行為だ。


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