のぼみ~日記

2013/09/06

東照宮へ狛犬を撮りに行く(7)いよいよ奥の院の狛犬と対面




鳥居を潜ると、いきなり狛犬が出迎える。おお~、ついにご対面。同じ「日光市在住」なのに、なかなか会いに来れなくて悪かったねえ。平素のご無沙汰を詫びつつ、さっそくパシャパシャパシャ。


阿像


阿像


阿像



奉納者である「松平右衛門大夫正綱」の文字がなんとか読み取れる


阿像は角なし。四肢の付け根と足先に走り毛。鬣は瘤状に巻いている



背中には肋が浮き出て、尾は短めに上が切れている


このピースサインみたいに飛び出しているのはおそらく走り毛


かなり大きく口を開いている

阿像の奉納者として名前が刻まれている「松平右衛門大夫正綱」は、三河の大河内氏の系譜。
大河内秀綱の次男として生まれ、天正15年(1587年)に徳川家康の命で長沢松平家分家の松平正次の養子となって松平姓を称し、文禄元年(1596年)より家康に近仕(Wikiより)

//家康の没後は久能山への埋葬や、駿府城に遺された莫大な遺産の管理を担当。元和3年(1617年)の日光への改葬にも付き従っている。勘定方首座の任を外れてからは、家光の意を受けて日光東照宮の造営に従事した。//
……とある。
日光杉並木の寄進もこの人だ。
ただ、家光に重用されたかというと逆で、権力を持ちすぎることを警戒され、東照宮の大規模改造工事や杉並木寄進など、金のかかることをやらされて勢力を弱らされたのではないかとも言われている。

となると、この「武家として初めて狛犬の寄進を許された」というのも、栄誉にかこつけたいじめ?に近かったのかもしれない。
いずれにせよ、命じられた(寄進を許された?)からには、家康の墓前を守る守護獣として立派なものを彫らせなければならないわけで、当時の一流の石工にやらせたはずだ。

吽像と作風は同じだから、おそらく同じ石工の作。もうひとりの秋本但馬守泰朝と費用を折半したというわけだ。

では、その秋本泰朝が奉納した吽像を……。


角があり、鬣は長く流れている


胸にある瓔珞のような飾りが興味深い。中国獅子の影響かそれとも走り毛に合わせたのか


尾は阿像より少し長めだが、やはり上が横に切られたようなデザイン




脚にはやはり走り毛らしきものが彫られている


眉が太い


子供が興味を示していたが、この子の親は知らん顔だった


秋元泰朝(やすとも)は、天正8(1580)に生まれて寛永19(1642)年に急死している。
父は秋元越中守長朝で、父子共に家康に仕えた。
豊臣氏滅亡後の残党狩りも行ったという。寛永10年(1633)に甲斐国東部の郡内地方を治める谷村藩の城代として1万8000石に封ぜられ、その後寛永13年に、日光東照宮の造営で総奉行を務めた。

この秋元泰朝が吽像の奉納者として名を刻まれているが、もしかすると金は松平正綱が多く出していたのかもしれない。

で、この狛犬は、狛犬史上非常に貴重なものなのだが、その理由としては、 ……といったことがあげられる。
狛研理事の山田敏春さんは、完成時期は寛永18年10月から19年の4月と推定(1641~1642)している。
本来ならこの狛犬こそ、その後、一般大衆が地元の神社に大量に奉納し始める狛犬のモデルとなるべき存在だったはずだ。
ところが、この狛犬のデザインは完全に孤立していて、この狛犬のコピーらしき江戸時代の狛犬は見たことがない。
なぜか……。
それは奥の院、つまり家康の墓所の前に置かれた守護獣なので、一般大衆はおろか、武将でも相当地位の高い者でないと見ることができなかったからだ。
もしこの狛犬が一般参拝者も立ち入ることができた陽明門より外側に置かれていたら、江戸時代の狛犬の多くはこの奥の院狛犬を模して造られていたかもしれない。
そうはならず、ほとんど人目に触れない場所で孤独なまま現在まで墓所を守ってきたこの狛犬は、狛犬史の中でも孤立した存在だ。まさに「孤高の狛犬」と呼べるだろう。

この狛犬を見ることができた者が極めて限られていたと思わせる一例として、香川県東かがわ市の白鳥神社の狛犬を見ていただきたい。


東かがわ市 白鳥神社の狛犬↑(写真提供:永野建生)

白鳥神社は、高松藩主・松平頼重は東照宮が大改造営された寛永13(1636)年の2年後に将軍家に初見。寛永16(1639)年に常陸下館5万石。寛永19(1642)年に讃岐高松12万石として転封。寛文4(1664)年にこの白鳥神社を造営したとされているので、まさに東照宮大造営時代後に生きた人だ。
で、この狛犬は神社造営時(寛文4)に建立されたと推定されている。
後に形が固まってくる浪花型とも江戸獅子とも違う作風だが、東照宮奥の院の狛犬とも似ていない。
むしろ、「異形の狛犬」として知られる塩竃神社(宮城県)の狛犬に似た雰囲気だ。

↑塩竃神社の狛犬 延享4(1747)年

頼重がもし東照宮奥の院の狛犬を見ていたなら、白鳥神社の狛犬を彫らせるときに、「東照宮の狛犬を手本にせよ」と命じるのが自然だろう。ところができあがった狛犬は東照宮の狛犬とはだいぶ違う。
水戸徳川家初代徳川頼房の長男の松平頼重でさえ東照宮奥の院の狛犬は見ていなかったのだろうか?
おそらく見ていないのだろうし、もし、奥の院参拝を許された機会があったとしても、緊張して狛犬のデザインなど目に入らなかっただろう。
ただし、東照宮の狛犬の存在は知っていたはずで、松平頼重が白鳥神社を造営し、狛犬を建立しようとしたときに、東照宮の狛犬のことが念頭にあったことは想像に難くない。
東照宮のように狛犬を奉納したいが、どんな狛犬なのか見たことがない……結果として、伝聞を頼りに石工に彫らせたのがこの狛犬なのではないだろうか。

東京都内で最古と言われる目黒不動尊の狛犬が承応3年(1654)
青森県弘前市にある弘前八幡宮、熊野奥照神社など3社にある越前禿型狛犬が寛文4(1664)年
(この年に白鳥神社造営)
塩竃神社(宮城県)の狛犬が延享4(1747)年

日光東照宮の狛犬は人の目に触れることがなかったが、この白鳥神社の狛犬は一般参拝客も石工たちも見ることができた。その結果、後の浪花型狛犬などに影響を与えたのではないかと考えられる。

いずれにしても、東照宮奥の院の狛犬が名品でありながら、後の狛犬史に影響を与えられなかったことはちょっと残念な気もする。



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