2013/12/16

最近、空がいろんな表情を見せるのだが、地震の前兆じゃないよね……などと余計なことを思ってしまって、素直に「きれいだな~」と見上げられない感じもある。まあ、地震雲なんてないと思ってはいるんだけれど……。
今日はいつになく飛行機雲がきれいにくっきり、長く現れた。








2013/12/17

テレビはニュース番組から死んでいく


テレビがいよいよダメになってきた。
今年の7月ひと月だけで日本政府は米国債を5兆円も買い増ししていたという。
ほんまかいなといろいろ調べてみたのだが、どうやら本当らしい。
しかし「米国債 買い増し」と検索しても、大手メディアの記事はまったくヒットしなかった。見つけられたのは海外メディアなどが中心。
5兆円……。
巨大数に麻痺している庶民でも、この数字がいかに狂気に満ちているか分からないといけない。
日本国で働く能力のある人間(潜在労働人口)は多く見積もっても約7000万人というところだろう。その人たちが一人10万円ずつ負担する金額が7兆円(1桁の兆)だ。実際にはしっかり稼いで10万円以上の国税を払っている人は5000万人いるのかどうか。
……と考えると、5000万人の納税者が今年7月のひと月だけで、アメリカのボロボロになった国債を一人10万円ずつ出して買い増ししたのだ。
兆単位の税金を使ってこういうことをしらっとやっている今の政府。メディアはなんにも報じない。
そもそも誰がどういう権限でこういうことをできるんだろう。財務官僚? 政府?

ハンナ・アーレントは『全体主義の起源』の中で官僚制支配は帝国主義の特徴のひとつだと鋭い指摘をしている
法律というものは特定の人格(支配者や政治家)もしくは立法府の責任において発布されるが、官僚制支配の社会では法律ではなく法令・省令が「匿名」のもとで行われる。だから個々のケースについて理由を示すことも正当化させる必要性もない、と。その結果、責任をとる者もいない。
日本はそういう国になって久しい。
消費税を1%値上げすると2兆円の増収になるという過去のデータはもう通用しないという指摘がある。となると、まず現行の5%が8%に引き上げられる3%分の増税でも税の増収が5兆円に届くかどうか怪しい。つまり、もうすぐ消費税が3%値上げされるが、その3%増税分を今年7月の米国債買い増しですっかり使ってしまったことになる
しかもこれは今に始まったことではない。 我々小市民だけでなく、巨大数の金額を簡単に動かしている連中も感覚が麻痺しているに違いない。

で、そういうことも含めて、大手メディアは重要なことをことごとく伝えなくなっている。
最近ではNHKでもニュースは見る価値がなくなっている。下手にニュースを見てこれが今の日本だと思い込んでしまうとどんどん盲目になる。
ドラマの中に辛うじてこんなシーンを見つけては、お! と思うくらいだ。

NHK大河ドラマ『八重の桜』最終回。
 海外出兵や軍備増強を主張するようになった教え子・徳富蘇峰と主人公・新島八重のやりとり。

「徳富さんの国民新聞、近頃は政府の機関紙のようですね」
「軍備増強ば煽っとるちゅうことでしょうか?」
「ええ」
「国家のためです。私は国を愛する者です」
「襄も愛国者でした。でも、襄が愛した国というのは、そこに暮らす人間一人一人のことです。同志社に来た頃、徳富さんは自分の目で見た世の中の本当を伝えたいと言ってた」
「だからこそ新聞も雑誌も自分の手で作った。言論が人を動かす時代が来たんです」
「その力を何に使うのですか?」
「え?」
「人を動かすその大きな力を……」





今日のオマケ

例のごとくフェイスブック経由で、今日はハンナ・アーレントという哲学者のことを知った。
たまたま今、日本で映画を公開中だということも知った。

恥ずかしながら、僕はこの人のことを今日までまったく知らなかった。
最初にたどり着いたのは⇒この 苫野一徳氏のブログの中の1ページ
苫野氏は「哲学・教育学名著紹介・解説」というシリーズをブログで書いていて、長大な哲学書を分かりやすく紹介・解説してくれている。こういうサイトはとても助かる。感謝。
このページで解説している『責任と判断』はアーレントの未刊行遺稿集だという。

//犯罪が行われたとすれば、その責任は常に個人にある。しかし個人を犯罪に駆り立てたシステムの責任もまた、もちろん問われる必要はある。//

//道徳性がたんなる習俗の集まりに崩壊してしまい、恣意的に変えることのできる慣例、習慣、約束ごとに堕してしまうのは、犯罪者の責任ではなく、ごく普通の人々の責任//

//最大の悪者とは、自分のしたことについて思考しないために、自分のしたことを記憶していることのできない人、そして記憶していないために、何をすることも妨げられない人のこと//

……深い名言がいっぱい出てくる。
これらの言葉はすべて「フクシマ」を経験した現在の日本人には重要な意味を持つ。
「フクシマ」以前から、日本の社会は真の道徳性が崩壊していたが、「フクシマ」以降、それを是正する方向に進むどころか、むしろ急速に、さらに堕している。

で、アーレントのことをいろいろ調べていくと、彼女を一躍有名にさせた事件というのがあったことを知ることになった。
ナチスドイツでユダヤ人大量虐殺をした現場の責任者とされるアイヒマンの裁判を、アーレントが傍聴・取材してアメリカの雑誌「ニューヨーカー」にリポートを書いたことで非難をあびたという一件。
彼女は「悪の凡庸さ」というキーワードを使った。
ヒトラー政権下で命ぜられるまま残虐行為を行った人たちは特殊な悪人というわけではなく、自分で善悪を判断することを放棄した「普通の人たち」だったと結論した。
そこから、最もタチの悪い「悪」は、凡庸さゆえに自ら判断し、責任を持ち、よりよいものを志向する意志を持たないこと、放棄すること、そしてそのことを忘れてしまうことだと主張した。

……これこそ、今の日本の世相、人々を支配する諦めと保身を戒める哲学ではないだろうか。
僕は、「フクシマ」問題はシステムの問題だ、ということを以前から何度も訴えてきた。
それを説明するために、敢えて田舎社会のずるさや弱さについても触れてきた。
「フクシマ」問題に対して「問題の本質は放射能云々ではない」とも訴えてきた。しかし、そういうことを言うとすぐに「御用だ!」などと叩く人たちがたくさんいる。そうした人たちの言動も、ある意味では「凡庸さゆえの悪」の裏返しではないだろうかと思う。

アーレントに興味と共感を抱いたのも、こうした世相を目の当たりにしている最中だからだ。

彼女の代表著作とされる『全体主義の起原』全3巻(第1部「反ユダヤ主義」、第2部「帝国主義」、第3部「全体主義」)についての苫野氏の解説は実にありがたい。
なにせこの本は日本では1冊5000円前後する。ちょっと興味を持ったという程度ではなかなか買えるものでもない。

この著作の中でアーレントが指摘した数々のことが、今の時代にそっくりそのままあてはまるように思える。
ものすごく簡単に並べてみれば……、

●国民国家が帝国主義へと進むことになった原因は、資本家たちがさらなる投資先を海外に求めたこと。資本家たちの富が一国の枠に収まりきれなくなり、溜めこんだ過剰資本を、より有利な投資先へと注ぎ込んだこと。
  ⇒現在「グローバル経済」と呼ばれているものの正体も同じ。

●権力なき富は、人びとから軽蔑と妬みを浴びせられる。
  ⇒ホリエモン、小沢一郎、猪瀬直樹といった妬みの対象、ヒーローから一転してヒールになるスケープゴートを作り上げ、メディアに大量露出させることで、庶民のガス抜きを図り、本当の悪を見えにくくさせる。

●帝国主義下における植民地では、徹底した官僚制支配が敷かれた。官僚制支配と人種思想が帝国主義を作る。
  ⇒中国韓国への憎悪を煽るメディア。

●法律は特定の人格もしくは立法会議の責任において発布されるが、官僚が発する「政令」「省令」は発布する者がつねに匿名であり、個々のケースについて理由を示すことも正当化も必要とされていない。
  ⇒責任の所在がどこにあるのか分からない。しかも「特定秘密保護法」で、問題の存在すら分からなくなる。

●言い換えれば官僚制支配は秘密結社による支配である。そしてその目的は、ただひたすら膨張すること。膨張のための膨張。 この「超目的」とも言うべき一種バーチャルな目的遂行は、全体主義と同じ構造を持っている。
  ⇒実体のない金融取引。巨大化する架空マネー。そのために破壊される自然環境や人と人の精神的交流。結果、監視社会、全体主義社会が形成されている現在の日本。

●「大衆」は、階級社会が崩壊して出現した。階級社会から経済社会へ移っていくに従い、人々は自分のことだけを考える「大衆」へと変わった。経済的な勝ち負け、成功者と失敗者に二分される社会において、人々は「社会的成功者」にならなければいけないという目的のために自らの生活を集約させていく。結果、一市民としての義務と責任は「余計な重荷」になる。一人一人がばらばらにされ、隠した妬みを抱いている、組織されない「大衆」という多数派層の出現
  ⇒勝ち組・負け組。格差社会。選挙での投票による意思表示の放棄。

●最大多数派が無党派、分断された大衆である社会では、階級利害を代表する従来の政党は魅力も役割も失う。代わりに漠然と大きな世界観を掲げる世界観政党が台頭する。
  ⇒自民党の変質。もはや「保守党」でさえない。

●全体主義の支配の勃興に伴って、人びとは徹底的に孤立化される。
  ⇒今まさにその段階。

●コントロールされた大衆が恐るべき犯罪をやってのける。
  ⇒今、こうなる序章にあることに、「大衆」は気がついていない。

●全体主義者は「自分のことしか考えなくなるバラバラの大衆」を作りだす。これこそが全体主義を作る最大の基盤。
 ⇒アベノミクスとやらの「おまじない」が、少しでも自分の利益につながると信じたいがために、他のことには目をつぶるようになる。

さて、こうした事態をこれ以上悪化させないためにはどうすべきか……。
「隣人とつながれ」「新しく始めるという自由を絶対に手放すな」とアーレントは主張しているらしい。
一人一人が、心の中に「他者から見捨てられた」という思いを抱くときにテロが生まれる、とも言っている。

……まさに今の時代のことだなあ、と思う。


話を元に戻せば……、

//犯罪が行われたとすれば、その責任は常に個人にある。しかし個人を犯罪に駆り立てたシステムの責任もまた、もちろん問われる必要はある。//

//道徳性がたんなる習俗の集まりに崩壊してしまい、恣意的に変えることのできる慣例、習慣、約束ごとに堕してしまうのは、犯罪者の責任ではなく、ごく普通の人々の責任//

//最大の悪者とは、自分のしたことについて思考しないために、自分のしたことを記憶していることのできない人、そして記憶していないために、何をすることも妨げられない人のこと//



「フクシマ」を引き起こしたシステムを正すためには、まず犯罪と呼べるあの事態を引き起こした責任者たちにしっかり責任をとらせることから始めなければならない。
危険だと分かっていて手を抜き嘘をつき続けた企業のトップ、責任者たちをきっちり罰することは、ここまで原子力ムラを放置してきた我々国民全員が罰せられることでもある。
そのけじめもつけられないで、何が事態の収束か、復興か。
責任をとらない、とらせられない今の政体をこのままにしておくことは、国民全体が「フクシマ」を引き起こした共犯者として自らを認めるということにほかならない
これができるかできないか、少なくともけじめをつけようと努力するかどうかが、ドイツと日本の大きな違いなのではないだろうか。



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