2014/12/06

映画『狛犬の棲む里』上映会までの道のり


今日は白河東文化センターというところで、桂俊太郎監督作品『狛犬の棲む里』上映会とトークショーがある。トークショーに参加するために早起きして白河へ。
白河東文化センターというのは白河市の外れにあって、白河の市街地からはかなり遠い。地元の人には「きつねうち温泉」と言ったほうが分かりやすい。温泉施設と同じ建物なのだ。

このイベントの主催者・東野出島活性化センターのみなさんには過去3度ほどお世話になっている。

最初は僕の単独「狛犬」講演会で、2011年2月。あの3.11の前。
雪が降り、会場までたどり着くのが大変だった。


講演の前に、小松家と福貴作石の石切場を案内していただいた


石切場を案内する小松寅吉の御子孫・利平さん


きつねうち温泉で一泊し、講演会当日を迎えた


雪の中、誰も来ないだろうと思ったが、250人くらい集まってびっくりした


この1か月後、まさか原発が爆発するなど誰も想像できなかった

これが最初。
ひと月後に東日本大震災。福島第一原発が爆発した映像をテレビで見て、川内村の自宅から慌てて逃げた。
そのとき、一月前のことを思い出し、神宮寺に電話をしたら奇跡的につながり、川崎の仕事場に避難する途中、一泊させていただいた。
地震で断水している中、わざわざ井戸から何度もバケツで水を運んで自宅のお風呂に水を張り、お風呂まで用意してくださっていた。

福島がとんでもないことになり、もう狛犬がどうのこうのなんて酔狂なイベントはできないなと思っていたら、なんとその年の12月に、今度は「狛犬見学ツアー」を企画したので案内役で来てくださいという依頼があった。
これには本当にびっくりした。

僕と妻は4月26日に川内村の自宅に戻っていたが、当時の川内村は全村避難中。
つまり、僕たちは誰よりも早く避難し、誰よりも早く村に戻ったのだった。
川内村の汚染が比較的軽度だったことが分かってきて、村の人たちもずいぶん落ち着いてきてはいた。でも、表向きは「全村避難」が続いていた。避難先の郡山のほうが概ね汚染がひどかったのだが、それも分かってきて、村の人たちはちょこちょこ家に戻ってきては掃除をしたり草刈りしたりして、一種の「二地域居住」を始めていた。

夏くらいからは、「避難者一人毎月10万円の精神的賠償金」やら休業・失業補償やら農地作付け禁止やら除染やら、賠償金や補償がらみのことで住民の心がばらばらになっていた。
それを目の前で見ていて、もうこの村に残っていても自分のやれることはないな、と思っていた。下手に何かをしても、村の人たちの心の分断や対立をこじらせるだけになる。
実際、そういう空気に押しつぶされそうになっていた。

賠償金、補償金を巡っては、避難命令が出た地域の人たちは一人10万円を毎月もらっていた(と、後で知った)が、その他の県民はもらえない。放射能汚染の度合でいえば、郡山市や福島市、二本松市など都市部がかなりひどい汚染だった(概ね川内村よりも汚染はひどかった)のに、避難命令が出なかったので一人10万円/月の精神的賠償金はもらえない。
その後、12月6日に文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会(能見善久会長)が求めた「警戒区域、計画的避難区域などを除く福島県の23市町村を対象に全住民に1人あたり8万円、妊婦と18歳以下の子どもに1人あたり40万円」という賠償金支払いをめぐってさらに変なことになった。
この賠償金は「自主避難への賠償」という名目らしい。30km圏内や「緊急時避難準備区域」、「計画的避難区域」などは命令を下して避難させたのだから、それに対する補償(一人ひと月10万円)をするが、それ以外の地域では逃げようが留まろうが知ったことではない、というのがそれまでの国や東電の賠償姿勢だった。
しかし、それではあんまりなので、自主的に避難した人たちにも賠償しましょう、避難しなかった人たちにも賠償しましょう、ということになったわけだ。
しかしこの賠償金が支払われる23市町村から白河市や矢吹町、中島村、鮫川村、棚倉町などは外れ、石川町、浅川町、古殿町などは入った。↓
汚染状況と賠償金支払い区分け線引き
セシウム汚染度合と賠償金支払い区分け線引きを重ねた図↑

狛犬見学ツアーのルートであるエリアはちょうどこの境界線を挟んでいる。そのため、12月の見学会に集まった地元の人たちは、1人あたり8万円(18歳以下と妊婦は40万円)をもらえる人ともらえない人が混在していて、この話題はタブーのようになっていた。

そんな状況にあったときに「狛犬を見て回るツアー」をやるから案内役をやってくれ、と言うのだ。
嬉しかった。
金のことでぐちゃぐちゃやっているより、先人が残してくれた文化遺産を見て回ろうという心意気に打たれた。
村を出ようと決意するひとつのきっかけになったと言えるかもしれない。
自分の生き方を大切にしたいという思いで阿武隈に移住したが、同じ理由で出ることを決めたのだった。

今でも強く思う。福島という言葉でひとくくりにしないでほしい、と。
福島は広い。いろんな人がいる。みんなそれぞれに悩み、苦渋の決断をし、人生を切り拓いている。

一言では言い尽くせない思いを抱きながら、狛犬ツアーのガイド役を務めたのだった。

2011年12月11日 バス2台を連ねて「狛犬見学ツアー」が行われた


白河市の借宿にある寅吉の狛犬も倒壊していた


東野出島の近津神社。和平の銘がある狛犬も台座から落ちていた


3回目は2012年の12月15日。第2回狛犬講演会ということで、白河東文化センターで行われた。



2012年12月の第2回狛犬講演会

そして今回が4回目のイベント。

テレビのドキュメンタリー番組を制作していた桂俊太郎さんが番組制作会社を退職後、自分のやりたい映画だけを撮りたい、ということで、自主映画を作り続けていたが、僕の『神の鑿』に触発されて、南福島に展開した石工三代記を訪ね歩くドキュメンタリー映画を完成させた。
その最初の上映会が、地元で行われたのだ。

上映後のトークショーに参加するために僕もはせ参じた。
会場に入る前に、倒壊した借宿の羽黒神社山道口の燈籠と狛犬、そして会場そばの近津神社の狛犬が修復されていると聞いていたので、立ち寄ってみた。

(次ページへ続く)





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