のぼみ~日記 2015

2015/04/24

作品A

この曲、1976年6月の上智大学講堂でやった「アンガジェ解散コンサート」のライブ録音に入っている。
ということは作ったのはその前で、多分、1975年。20歳の頃だ。
当時はプロデビューすることだけを考えていて、デモテープ作りやコンテストやオーディション応募に明け暮れていた。
そのために楽器を買ったり録音機材を買ったりする金が必要で、毎晩のように家庭教師を掛け持ちしたり、夏休みや春休みには新日本気象海洋という環境調査や天気予報の会社でアルバイト。
新日本気象海洋は長寿番組だった『ヤン坊マー坊天気予報』の内容提供もしていた会社。会社のロッカー室にある洗濯されていない作業着に着替えてハイエースの助手席に乗り込み、首都圏各地の河川や海岸、湖沼を回って水のサンプルを集めたりしていた。

当時、家庭教師を荒川区で2軒かけ持ちしていて、夜中、終電間際まで教え、帰りは地下鉄千代田線、日比谷線、東横線、南武線……と乗り継ぎ、最後は武蔵新城という駅に着く。そこから家までは歩いて40分くらい。真夜中、バスがなくなった道路を重い体を引きずるようにして帰った。
力が入らず、へたりこむこともあった。
今思うと、本当に身体を酷使していた。

プロデビューして日本の音楽界、いや、世界を相手にするメロディメイカーとして成功するという目標を持っていたので、身体の辛さは耐えられたが、とにかく寂しかった。
大学生活の4年間はプロデビューするためのモラトリアムととらえていたので、デビューできないまま時間が過ぎていくのが怖かった。

この曲はそんなときに作った。
帰りの電車の中で思い浮かんだイメージを書き留めて、少し体力が回復したときに曲にまとめたような気がする。

あの頃はローラ・ニーロの影響を受けていて、この曲にも顕著に表れている。途中、add9のテンションを入れた6/8拍子に変わるところなんか、もろに。

曲に仕上げたものの、歌詞が一番しかないし、試作品という感じで『作品A』と名付けたまま、ずっと放置していた。
いつかもっとちゃんとした形でまとめられたらとも思ったが、何度聴いてもこの曲はこの構成のままのほうがしっくりきた。
曲として体裁を整えた他の曲より、永遠に未完成なままのようなこの『作品A』のほうが、音楽として好きなのだな、ということを、還暦を迎えた今、改めて気づいた次第。

そんなわけで、40年の時を経て、新たに録音してみた。
元々の歌詞はあまりにも恥ずかしいので、一部書き直した。


今日のオマケ

■死は人生最後の友

4月20日にフェイスブックのノートに書き留めたメモ書き↓
朝、目が醒めるとき、アイデアが浮かんだり、過去の失敗を悔いたり、前日にやったことの間違いを急に見つけたり……いろんなことが脳の中で起きる。
1時間もするといつもの生活リズムに戻るのだが。

数日前、「自殺の練習」という本を書いてみようか、というアイデアと共に目覚めた。

昔『完全自殺マニュアル』という本がヒットして、社会現象というか、論争を巻き起こした。
その本は僕も買って、今も本棚にある。ミステリー小説を書く上での資料のつもりで買った。

数日前にひらめいた「自殺の練習」というのは、それとはかなり違うイメージ。

一昨年だっただろうか、うちの近所で藪の中から行き倒れ死体が見つかった。
鹿沼市の特養?施設から、雪の降る日に失踪した老人だと判明した。失踪した日からは3か月くらい経っている。雪に埋もれ、周囲が藪だったので長い間誰も気づかなかった。僕もそのすぐ脇の道を何度か通っているのに気づかなかった。

そのときは、幼女誘拐殺人事件などではなくてよかった、と思ったのだが、しばらくして、ああ、こんな死に方がいいな、と思った。

老人がいた養護施設はここから5km以上離れている。つまり、彼は雪の中を最低5km以上は歩いてきたことになる。歩くことができる程度には健康?だったわけだ。
社会的には、ボケ老人が徘徊して凍死した事故死として処理された。でも、きっと彼は死ぬために雪の日を選んで施設を抜けだしたのだと思う。


凍死は楽な死に方らしい。雪が降りしきる冬の日に、山の中でひっそり横たわり、そのまま眠るように死ぬ。痛みや苦しみはない。眠る感覚だから、多分恐怖もそれほどではない。強い酒でも飲めば寒さもあまり感じないかもしれない。
おやすみ~、と寝るだけ。
最高ではないか。

寝るのは怖くない。
毎晩、割合すっと眠りにつける。どうしても寝付けない日が月に一度くらいはあるけれど、概ね、今のところ寝付きはよい。
だから、その感じで(眠りにつく感じで)死ねたらいちばんいい。

病院のベッドに縛り付けられ、点滴の管がつながれたり、拘束具で身動きも取れなくなって、理性も半分なくなっている中で苦しみだけは感じる……そんな死に方は最悪だ。

朝起きるとき、過去の失敗を悔いて、あのときに戻って人生をやり直したいと苦しみながら一日が始まるのも、もういい加減やめたい。
今の人生は閉ざされたチューブの中を這っているようなもので、そのチューブの外側の世界がきっとある。でも、今の人生を生きている間はその世界とは接することができないし、知ることもできない。
そもそも「知る」という行為も、今の人生に限定された行為のひとつにすぎないわけで、多分、死んだ後は「知る」とか「感じる」ということも意味をなさない。もっと違う次元の何かがあるのだろう。
ともあれ、生きている限りは究極の安らぎや幸福は得られない。

でも、あと少し生きなければならないから、その時間を、何か少しでも「意味のあること」をやって過ごしたい……と思うこの「心」もまた、今の人生に縛り付けられた精神活動のひとつ。
そこから開放されるのは生から死へというスイッチの切り替えでしか実現しない。

そう考えると、死こそ人生最後にして最高の友なのではないか、と思えてくる。
まだ会えないが、道の少し先で待っている友。
その友にどんな形で会えるのか、その準備、練習……そういう意味での「自殺の練習」。

数日前、朝起きるときに頭に浮かんでいたのはそんなイメージだった。

まあ、タイトルとしては「自殺」という言葉で誤解されるだろうから、「死は人生最良の友」くらいにしたほうがいいかな。

死を恐怖ではなく、友だととらえる心の準備、練習を重ねていくうちに、副産物としての「よき創作」が生まれたりするのかもしれない。

……あれ? まだまだ煩悩が残っているようだな。






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