のぼみ~日記 2015

2015/07/06

4年前の今日 KAMUNA上智大学ラストコンサート


カムナの調合 -The Ultimate Compound-

今年は7月に入っても肌寒い日が続いていて、太陽がなかなか見えないが、4年前の今日、2011年7月6日の東京はものすごく暑かった。
その4か月前に原発が爆発して避難。混乱と緊張と不安の中での暮らしが始まり、4月の末には、全村避難中の川内村に戻って、生活を始めた。
上智の非常勤講師授業のために6月末にまた川崎に行き、猛暑で毎晩眠れない中、上智大学ソフィアホールで行うコンサートの準備をした。

上智の非常勤講師を最初に引き受けたのは2000年のこと。元担任だった草深教授から連絡があり、英語学科の変わり種卒業生を集めた輪講を企画したので、手伝ってくれないかという話だった。
今の学生は覇気がない。完全な受け身で就職ガイダンスに出てくるだけ。自分で何がしたい、そのためには何をすればいいのかということを考えようとしない。
そんな学生たちにカツを入れるために、英語学科の卒業生で、ユニークな活動をしている人たちを講師として集めて1年間輪講をする、というような話だった。

当初はひとりが3回~4回受け持っていた。ゼミ形式で1年続くというようなことなら話は別だが、たった3回4回、「ゲスト」感覚で呼ばれて話をしたところで何が伝わるだろう。どんなにいい話をしたところで、どうせすぐに忘れてしまうに違いない。
そこで僕は草深教授に「最後の1時間は教室でコンサートをやらせてほしい」と頼んでみた。
難色を示されたが、終わると学生たちの反応が非常によくて(そりゃそうだろう。退屈な話を90分聴くより、音楽を楽しめたのだから)、「来年からも必ずやってくださいね」と言われた。
一回だけのことだから、と提案したことだったのだが、やめるにやめられなくなり、11年続いた。
その間、僕は中越地震で越後の家を失い、川内村に家を買い、そこで暮らすようになり、吉原センセと会うことも激減した。毎年7月に上智の教室コンサートで会うだけ。「七夕の彦星と織り姫みたいだね」「あれからまた1年経ったの? 嘘みたいだな」などと言いながら、11年続いたわけだ。
草深教授が大学を辞め、後任の教授になってからもコンサートは続いた。
でも、輪講の性格がずいぶん変わってきた。
当初は講師役に呼ばれるのは本当に「変わり種」の卒業生が多かったのだが、次第に会社社長や官僚といった偉いさん、いわゆる出世した人たちが呼ばれるようになった。当然、受講する学生も「成功者への道」を聴きたいと集まるから、卒業生による就職ガイダンスとあまり変わらなくなってしまった。

1人あたりの授業の回数も減らされ、ついに2011年は「節電対策」で当初の授業回数が減ったために僕の担当は1日だけになってしまった。
その1日をコンサートにするのはあまりにも不自然でしょう、ということで、じゃあ、コンサートは全学開放でソフィアホールを借りてやりましょう、という計画を担当教授が立ててくれた。
ソフィアホールはコロシアムのように半円形を掘り下げたような建物で、雰囲気もよい。
授業ではないので誰もが入れる。一応チャリティコンサートでカンパ受付をして、3.11で実家が被災して授業料を納めるのが困難になった学生を援助するという名目で開くことになった。
幸い、紅白歌合戦などもやっているサンフォニックスという音響会社の社長がPAを無料で引き受けてくれた。

初めてソフィアホールを使えるのはよかったが、直前に他の授業の教室として使われているので、リハのためにセットしたPAを一旦撤収しなければならなくなったり、ホールの設備管理担当の職員が5時で帰ってしまって照明などのコントロールをする人がいなくなったり、いろんなハプニングがあった。
ただでさえ連日の猛暑と準備に追われていた忙しさで眠れず、疲労困憊の中だったので、最後まで身体がもつかどうか不安だったが、なんとかなった。

残念だったのは学内からの聴衆がほぼゼロだったこと。広いホールにパラパラと座っていたのは、ほとんどが僕がメールなどで呼んだ外部の人たち。だから、客席の年齢層がすごく高かった。
聖光学院の同期生や近所のテニス仲間のおばさんたちに混じって、若い頃にお世話になった作曲家の樋口康雄さんや、今でもいろいろ相談に乗ってくださっている作詞家の伊藤アキラさんなどもいた。(それを知ったのは後日だったが)

ちゃんと記録しておきたかったが、なにせ手が回らない。
直前に、持っていたコンパクトデジカメを助手さんに渡して、これで動画を撮ってと頼むのが精一杯。
640×480の解像度で撮られた揺れまくりの動画素材が残ったが、音も悪いし、一部をYouTubeにUPしたものの、そのまま忘れていたのだが、最近、HDDの整理をしていて、PA卓からダイレクト出力したMP3音声ファイルがあるのを見つけた。
PAエンジニアに頼んで録音してもらっていたものだ。
エフェクターもかかっていない直の音だから、しょぼい。頭のほうだけ聴いて、そのままにしてあったものだ。

でも、これと動画の音声を混ぜたら少しは聴ける音になるのでは? 今ならiMovieもLogicもあるし……と思いついてやってみたら、そこそこ鑑賞に堪えそうなものになったので、この際、語り部分も含めてほぼ完全版(2時間近くある)を20個くらいに分けてYouTubeに置くことにした。

全編まとめたページは⇒こちら(http://kamuna.com/live/)
上はラスト前の曲『カムナの調合』。↓下は最後の曲『奇跡の星』。

この日までは、まだ非常勤講師を続けるのかどうか決めかねていた。
今の輪講には自分はもう不適格だろうという思いが強かったからだ。
その後、来年度からまた担当教授が変わるということで、若い教授から書類が届いた。
来年からもやりたいならYESに、やらないならNOに○をつけて以下の番号にfaxしてください、というような内容。しかも、来年度からはひとり1時間に限らせていただきます、とも書いてある。
なんだこれは?

草深教授が始めたときとはすっかり様相が変わってしまったことを改めて知らされた。
○をつけてFAXを……は、あまりにも腹が立ったので、メッセージを添えてメールで返事をした。
1時間では何もできませんし、今までは「教室コンサートは必ずやってください」と言われていたので続けてきましたが、それも1回だけの授業でいきなりやるわけにはいかないし、費用持ち出しの度合も厳しくなるので、これ以上はできません……と。

非常勤講師に任命するというのは、一般のゲストスピーカーとして依頼すると謝礼が高くつくので、非常勤講師の規定給与と交通費(上限数千円なので、川内村から新幹線を使って往復しただけで当然赤字)だけで安く済ませるという手法。
同時通訳者として活躍していた卒業生は、その金額の低さに激怒して、一度は承諾していたが断ってきたという。
一方、一流企業の社長は、送り迎えの車が大学の近くで待機していて、授業が終わるとさっと出迎えにくる。当然、彼にとっては大学から支給される微々たる非常勤講師料(時給数千円)や交通費などはどうでもよくて、卒業生ボランティアのつもりで引き受けているわけだ。

僕の場合は毎年持ち出しでやっていた。ボランティアのつもりで。
教室コンサートをやるためのPAも、仕事場からアンプやスピーカーを運び出して都合した。このコンサートのためにミニミキサーやヘッドセットマイクなども買いそろえた。

そういう背景を一切知らないで「来年もやりたい場合はYESに○を、やらない場合はNOに○をつけてfaxで返送」と言ってきた若い教授とは、とてもうまくやっていくことはできないだろう。

正直なところ、少しほっとした。
でも、これで吉原センセと1年に1回会う機会もなくなる。これからどこに住むのか、どうやって暮らしていけるのかも決まっていなかったときだけに、KAMUNAのコンサートはこれが最後になるかもしれないという思いもあった。実際、今のところそうなってしまっている。

KAMUNAでやるコンサートが今後もうないのか、一度くらいはあるのかは分からない。でも、上智でのコンサートはもうないだろう。
授業でなければ(単位に関係なければ)学生は聴きに来ないということもよく分かったしね。

教室にいる学生たちとは、いつのまにか自分の子供というより、孫に近い年齢差になっている。
あと10年、音楽が続けられるとしたら(そのつもりでやっているのだが……)、どんな内容が自分のためにいちばん合っているのか、自分がやっていて満足できるのか、スリリングに感じられるのか……改めて考えてみたい。










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