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のぼみ~日記2016

2016/06/03の5

イタリア大使館別荘公園(4)プライベートビーチと戦争


別荘本邸の脇から湖畔に降りてみる。こういうのをプライベートビーチというのだろうな。穏やかな天気の金曜日。午後のひととき。人もいなくて、のんびりと日光連山を眺めたり、魚群のきらめきを凝視したり……。
かつてはここにはヨットが係留され、大使家族やゲストがマス釣りやセーリングを楽しんでいた。

別荘が建てられたのが昭和3年(1928)。
日本では特別高等警察(特高)が設置され、助成も投票権を持った普通選挙法での初めての総選挙が行われた。
三・一五事件で社会・共産主義者が弾圧され、第二次山東出兵で中国に兵隊を送り込む。済南事件、張作霖爆殺事件(関東軍が北京政府の事実上のトップであった張作霖を暗殺)、治安維持法が改正されて目的遂行罪など取り締まり強化。
12月には蒋介石率いる国民革命軍が北京政府を倒して中国を統一。
ちなみに僕の両親が生まれた年でもある。



正面に白根山など日光連山



右手には男体山が迫る



目の前には何かの稚魚の群れ



マスですかね?



こんなのもいたりして



これも動画をどうじょ


ただ「きれいだね~」「素晴らしい景色だね~」で終わってはもったいないので、改めて日本とイタリアの関係を思い起こしてみる。

二階の寝室に貼ってあった歴代大使一覧は、1877年赴任のバルボラーニからになっているが、Wikiを見ると、
1866年8月に日伊修好条約が締結され、1867年3月31日に最初の公使ヴィットリオ・サリエール・デ・ラ・トゥールが着任した。この時期、日本の輸出品の主力の一つが蚕紙であり、総輸出量の4分の3がイタリアに売却されていた。
1872年に岩倉使節団がローマを訪問し、国王に拝謁している。その後大きな問題は起こらず、1900年の義和団の乱、1914年の第一次世界大戦をともに戦ったが、相互に重なる利害関係は薄く、関係は濃厚であるとは言えなかった。

……とある。

小学校で歴史を習い始めたときからずっと、「なんとなく」日本とイタリアは仲がよかった……みたいなイメージが植えつけられていた。イギリスやアメリカとは凄絶な戦争をしたが、イタリアとはしたことがない、というのがその理由かもしれない。

この別荘が建てられた1928年の7年後、1935年10月、ムッソリーニはかつてから植民地政策を展開していたエチオピアへの侵攻を宣言。第二次エチオピア戦争が始まる。
古い武器しか持たず、訓練もされていないエチオピア軍は歯が立たず、イタリア軍はたちまちエチオピア全土を制圧・占領。それに対して国際連盟はイタリアへの経済制裁を決めたが、実際には大して実効がなかった。
このことで、国際連盟の無力さが露呈され、イタリアは米英仏との関係を悪化させて、ドイツ、日本との関係を強めていく。
1937年11月、イタリアは日独防共協定に参加して「日独伊防共協定」が締結され、1940年には日独伊三国同盟が成立。
そして第二次世界大戦……。

そうした激動の時代でも、この別荘はここ日光中善寺湖畔にあって、大使らは優雅な避暑生活を続けていたのだろうか。
なんとも不思議な感覚になる。

さらに、この別荘の設計者であるアントニン・レーモンドは東京大空襲のために開発された焼夷弾実験にも深く関わっていて、ますます複雑な思いがわき起こる。








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