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のぼみ~日記2018


2018/05/24

日大アメフト部事件が教える「破滅寸前の日本」


Google検索で「日大理事長」と入力した直後の予測ワード表示↑

日大アメフト部事件は、「監督がひどい」という問題にとどまらず、日本大学という「企業」が抱える驚くべき構造欠陥を浮き彫りにさせた。
テレビや新聞を見ているだけでは分からなかったことが、ネットでは次々に出てきている。
例えば、Googleの検索ボックスに「日大理事長」と入れただけで、たちまちこんな予測検索が出てくる。
パチンコ、ヤクザ、裏社会……。何も入力する前からこう出るのだ。

内田正人氏は、日大アメフト部監督というよりは、日本大学グループという企業体の経営陣ナンバー2だという。
ではナンバー1は誰かというと、理事長の田中英寿氏。
この理事長、相当なギャンブル依存症らしい。あろうことか内田監督、井上コーチのトンデモ会見があった翌日にもパチンコに興じていたという。
パチンコを終えて出てきた理事長に直撃取材を試みた記者に対して「俺知らないもん、全然。フットボールなんてルールも知らないし。それでも何か?」と答える映像には、見た誰もが驚愕した。
テレビのワイドショー「グッディ」に出ていた土田晃之は、「これ、日大の理事長だって知らされた上で見ていなければ、ナニリョク団のかた? って思いますけどね」と漏らしていたが、それこそ「普通の人」の感覚だろう。
間違いではない。この人物が日本一のマンモス大学のトップなのだ。

しかし「日大理事長ヤクザ」の検索予測ワードの意味は、「ヤクザっぽい風貌」「ヤクザのような言動」ということではなく、実際にヤクザとの深い関係を示すものだった。
2014年秋、田中理事長と山口組6代目組長がどこかの倶楽部で並んで一緒に笑っている写真が流出した。この写真は今ではネット上に数多く露出しているので、誰でも簡単に見ることができる。
2014年10月10日の「東京アウトローズWEB速報版」では、こう報じている。
司忍6代目山口組組長と田中英寿・日大理事長の2人を撮った写真が、複数の出版社に郵送されているのはほぼ間違いないことが本誌取材で分かった。しかし、ある週刊誌に送られてきた写真は何故か背景が黒く塗りつぶされており、日時・場所などの特定が難しく掲載は見合わされたという。この他、写真週刊誌にも郵送されており、実際に取材に動いたようだが、今のところ掲載されるかは不明だ。


実際にはほとんどのメディアは沈黙した。
2014年11月、米国VICE誌のWEB版が、Jake Adelstein記者名で「This May Be the Most Dangerous — and Most Costly — Photo in Japan(これは日本で最もヤバくて高くつく写真かもしれない)」というおどろおどろしいタイトルでトップ記事を発表(2015年1月に更新?)した。
この記事の内容はほぼ⇒このサイトにまとめられている
要点だけ抜き出すと、

……というもの。
さらに興味深かったのは、
同誌によれば、日本の警察当局の考えでは、山口組と敵対する住吉会がこの写真を流出させ、襲撃事件をセットアップすることで、これを山口組の仕業であると当局に思わせ、(少なくとも5千億円にのぼると言われる)2020年東京オリンピックに関連する建設ビジネスから山口組勢力下にある建設業者を追い出すことが目的だとしているという。(ロサンゼルス発 ジャパラマガジン)

という部分だ。
本当にそんなことが書かれていたのかとVICEの当該記事を確認してみたが、その通りのことが書いてあった。
Questions remain about who exactly attacked the journalists and threatened harm to other magazines if the pictures were published. The police are currently operating on the theory that the Sumiyoshi-kai may have released the photos and staged the attacks to make people believe the Yamaguchi-gumi was responsible. This could initiate a crackdown on all Yamaguchi-gumi front companies in the construction industry, forcing them out of the lucrative Olympic racket. The remaining pie could then be divided among other yakuza.
This May Be the Most Dangerous — and Most Costly — Photo in Japan VICE NEWS


このことを日本では、日刊ゲンダイなど一部のメディアが、海外で2020東京五輪が「ヤクザオリンピック」になるのではないかと危惧しているといった内容を報じたりはしていたが、メジャーメディアは黙殺した。
(海外メディアの記事は)JOC副会長の田中英寿氏(日大理事長)と指定暴力団住吉会の福田晴瞭会長の関係。〈田中英寿氏は福田会長と過去においてよい友人であった。また彼が山口組のボスの少なくとも1人、さらにはほかの暴力団の構成員とも友人関係を維持していることを示す書類もあった〉と紹介している。
また、組織委員会会長に就任した森喜朗元首相についても、〈以前にヤクザとつながりがあったと日本の報道機関(毎日新聞、週刊文春など)が報じている〉〈森氏は犯罪組織のボスの息子の結婚式に出席したし、ヤクザが支援する右翼団体のリーダーと親しかった〉と指摘。〈警察筋によると、この両名が過去にどの程度ヤクザと関わりを持っていたか、そして犯罪組織と現在つながりがあるかについて、調査中であるとのことだ〉と書いた。
さらに、2020年のオリンピックの建設費用が38億ドルと推定されているとした上で、〈田中氏、あるいは森氏さえもが犯罪組織を五輪へつなげる口利きの役割を果たしているかも知れない、と警察は心配している〉と続けている~。
米メディアが衝撃報道 「東京五輪はヤクザ・オリンピック」 日刊ゲンダイDIGITAL 2014年2月14日)

この報道の影響か、田中氏はその後JOC副会長職をひっそり辞任している。
2015年末にはトヨタ自動車社長・豊田章男氏がJOC組織委副会長を突然辞任しているが、これも、JOCの裏側を知って嫌気がさしたのだろうかと勘ぐってしまう。

国全体を支配する「いじめ体質」


内田前監督が問題の試合後、記者たちの囲み取材に答えている録音でいちばん印象に残っているのは、
「宮川はよくやったと思いますよ。もっといじめますけどね」
という部分だ。
宮川選手は、自らの謝罪会見の立派さを見ても分かるように、非常に優秀な人間である。その人間性に対して、内田氏は嫉妬し、いじめを開始した。
内田氏自身気づいていないのかもしれないが、これは病的な「マウンティング」なのだ。
俺のいうことを気に入らないと思っているらしい選手がいる。あいつをとことん屈服させてやる、というマウンティング。
そのいじめの結果、自分の理不尽な命令に素直に従った宮川選手を「よくやった」としながらも、これからも「もっといじめる」と口にしているのだ。
戦時中、軍隊で行われていた陰湿、凄惨ないじめと同じだ。頭の悪い人間が、自分より優秀な人間を権力で屈服させることに快感を覚え、常軌を逸したことが行われる。
特攻を命じた上官たちの一部が、終戦後は口をつぐみ、自分たちはのうのうと長生きしたという図式にも通じる。

テレビに出てくるアメフト業界関連のコメンテイターたちがみんな及び腰な中で、ひとりスポーツライターの小林信也(のぶや)氏は日大問題の核心を臭わせる発言をしている。(それでも相当慎重な口調でだが)
その中に「私はむしろ、宮川選手は内田監督から見込まれて、(手下候補として)試されたんじゃないかと思う」というような内容があった。
忠実な自分の手下として育てるためにいじめ抜き、それに従わせて、ゆくゆくは井上コーチのように、なんでもいうことを聞く便利な手下にしようとしていた、というわけだが、これはあたらずも遠からずだろう。
ただ、宮川選手は井上コーチとは比較にならないほど優秀で、立派な人間性を持っていた。内田氏もそのことはうすうす気づいていただろう。だから、手下にすることは無理だとしても、徹底的にいじめ抜いて、宮川選手の人間性が崩壊していくのを見るのを楽しもうとしていたのだと思う。
完全なサイコパス、しかもいざとなれば逃げ回り、平気で嘘をつく最低のサイコパスだが、こういう人物が巨大大学のナンバー2の地位にまでのし上がっていたという現実に改めて戦慄を覚える。

そして、この構図とまったく同じ、怖ろしいほど同じなのが今の日本の政体だ。

2018年5月29日に行われた関東学生連盟の会見で、内田監督、井上コーチの除名(永久追放)などが発表された。その理由を述べた部分を一部抜き出してみる。
学校法人日本大学の常務理事、人事担当でもある内田氏の言うことは絶対であり、誰も何も言えない状況でありました。(略)コーチですら何も言えないのであるから、選手が内田監督に物申すとか、指示、指導に従わないというのはあり得ないことでありました。どんな理不尽であっても、はい、と返事して実行するのが、内田フェニックスの当然のおきてでありました。
内田監督および井上コーチの供述は、内田監督を守ろうとしての、事実をねじ曲げていることが明らかであり、まったく信頼性に乏しい
内田監督は規律委員会のヒアリングでも記者会見でも一貫して私からの指示は一切ないと供述し、(略)発言については(略)不自然極まりない供述をしています。
本件に関する内田氏の発言は、自身の関与に関連するものについては、おおよそすべてに信用性がないと規律委員会は判断します。


↑この説明での「内田監督」を「官邸の司令塔」と置き換え、「コーチ」を「官僚や与党議員」と置き換え、「選手」を「現場の実働部隊職員」と置き換えて読んでみるといい。そっくりそのままあてはまると感じる人は少なくないだろう。
首相官邸の司令塔から発せられる命令は絶対であり、誰も何も言えない状況でありました。閣僚や政務次官ですら何も言えないのであるから、現場の実働部隊官僚らが官邸に物申すとか、指示、指導に従わないというのはあり得ないことでありました。どんな理不尽であっても、はい、と返事して実行するのが、安倍政権の当然のおきてでありました。
閣僚、官僚らの供述は、安倍首相を守ろうとしての、事実をねじ曲げていることが明らかであり、まったく信頼性に乏しい
↑このような説明を、いつか国民は耳にすることができるのだろうか?

日大問題においてようやくメディアも矛先を向け始めた田中理事長は、現政権の構造欠陥問題においては安倍総理に相当するだろう。
組織が崩壊寸前になっているのに最高責任者が「俺は知らないもん」と開き直る、理解を超えた異次元レベルの言動も重なる。
しかし、内田監督に相当する「官邸司令塔」の名前も顔も、メディアの人間ならみんな知っているが、モリカケ疑惑に対して未だにほとんど報じられることはない。

結局は「個人の資質」の問題

Aera Dotに掲載されている「政治学者・白井聡が語る〈安倍政権の支持率が下がらない理由とその背景〉」というインタビュー記事がとても考えさせられる内容なので一読をお勧めしたい。
前後編になっているが、最後のほうのこの部分、
結局は個人の質にかかっている」ということです。森友・加計問題では、特定のメディアが追及を続けています。これは、組織で動いているというよりも、一人一人の記者が頑張っている。官僚からのリークもあると推察しますが、そうした行動は、「これではダメだ」という個人の信念に基づくものでしょう。伊藤詩織さんのように、レイプ事件を安倍政権によってもみ消されたという疑惑を、あらゆる嫌がらせに遭いながら訴え続けている人もいる。
 魔法の薬はないのです。今日の社会の歪みを修正できるかどうかは、こうした筋を通すことのできる個人がどれくらいいるかにかかっているでしょう。
政治学者・白井聡が語る〈日本を再び破滅に導く「戦後国体」の正体〉

宮川選手の記者会見を見終わったとき、このインタビュー記事のこの部分を思い浮かべた。
彼は自分の間違いと罪を悔やみ、しっかり筋を通そうと勇気を持って全国生放送のカメラの前に立った。
記者たちが、何度も何度もしつこく監督やコーチへの恨み言を引き出そうと「誘導尋問」したにも関わらず、毅然とした口調で「やらないという決断ができなかった自分が悪い」と言いきった。
これこそ「個人の質」だ。物事の正邪を判断し、間違いに気づいたときはそれを認めるという資質を兼ね備えているだけではなく、実行する勇気。
少なくとも彼は、嘘を平気でつき、責任を下のものに押しつけ、逃げ回るような大人にならずにすむだろう。

それにしても、20歳の青年がたった一人で立ち向かった巨悪の正体を想像すると身がすくむ。
彼の勇気ある単独会見がきっかけで、いろんなものが引っぱり出された。
田中英壽、山口組、住吉会、森喜朗、亀井静香、阿佐ヶ谷のちゃんこ屋女将、ちゃんこ屋での日大「最高会議」といったキーワード的なものはもちろん、果ては、ハードゲイポルノ、村上幸史、DV、舞の海、グルコサミン、琴光喜、野球賭博、バウムクーヘンなんてことまで検索するはめになった。
いやはや、一人の青年の力はすごいなあと、改めて感心してしまった。

日大事件から日本の国全体が壊れかけているという怖い構図に気づく人は少ないのかもしれない。実際、安倍政権の支持率は全然下がらないどころか微増しているという。
しかし、宮川選手の正直さと勇気に心打たれた人はたくさんいるはずだ。そこだけは唯一の救いだと思うことにしよう。
フェイスブックやツイッターには賞賛の声が多数書き込まれたが、1つだけ紹介してみる。

日大選手は、最終的にアイヒマンになることを拒否しました。彼は組織の命令があったとしても、行為の責任は個人にあると明言しました。立派な態度だと思います。日常で、人はいつでも日大選手と同じ立場に立たされます、彼の問題は組織に属するすべての人間の問題です。

— 山根幹雄 (@mickeyo0) 2018年5月22日

20歳頃の自分を思い浮かべると、到底あんな立派な態度を取れなかったし、一歩間違えば犯罪者になっていたかもしれないな、と思う。
60代の今でも、全国生放送のカメラの前であんな風に語れる自信はまったくない。
せいぜい、こんな駄文を日記に残しておく程度のことしかできないのだが、何も書かないよりはいいと思って、気が重い中で書いてみた次第だ。

今夜の月は雲がかぶっていた





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