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のぼみ~日記2018


2018/07/28

「社会的知性」の劣化が深刻

とんでもない書類


先月、北海道の弁護士事務所から突然封書が届いた。中には「侵害情報の通知書 兼 送信防止措置依頼書」なるタイトルの印刷物が入っていた。
どこそこの会社がネット上の書き込みによって信用毀損の被害を受けているというのだが、このURLに使われているドメインも、サーバーも、まったくうちとは無関係のものだった。なんの接点もない。一体どういう根拠でこういうものをうちに送りつけてきたのか、と呆れ果てた。
電話でやりとりするのも煩わしかったので、この弁護士事務所のWEBサイトに設置された問い合わせフォームから「どういう根拠でこういうものを送りつけたのか。大変迷惑である」というクレームを入れたが、一か月以上経った現在に至っても、謝罪メールの1通すらこない。
まったく関係のない者にこうした迷惑行為をしておいて謝罪の言葉ひとつないというのはどういう神経なのかと、さらに呆れ果てた。

こういうトンチンカンな問い合わせや依頼のようなものはたまにくる。そのほとんどはまったく無関係なドメインについて、そのドメインの管理者がうちだと勘違いしてよこしたものだ。アメリカのドメインレジストラが提供しているDNS(ネームサーバー)を使っていることで、なぜかうちがドメインの管理者であると思い込むらしいのだが、そのレジストラのパートナー企業は世界中にいくらでもいる。Whois情報にうちの名称が出てくるわけでもない。おそらく、ネームサーバーを検索したら、うちのサイトがヒットしたのだろう。単に、同じネームサーバーを使っているらしいというだけで「削除依頼」やらなにやらのメールが来るのだ。IT事情に疎いにもほどがある。
ネームサーバー(ドメイン名とサーバーのIPアドレスを紐づけするサーバー)は、多くはサーバー会社が提供しているが、ドメインレジストラがドメイン所有者に無償で開放しているネームサーバーもある。当然、そのネームサーバーの利用者は世界中に膨大な数存在するし、ネームサーバーがIPを紐づけしているドメインも膨大な数にのぼる。
同じネームサーバーを使っているみたいだからこのドメインもおまえの管理下にあるのだろう、と言われてもまったくトンチンカンな話だ。
問い合わせてくる弁護士の中にはドメインとサーバーの意味や関係すら理解していない者も多い。
メールで問い合わせや間違った依頼がきた場合は、そういう説明をして、たいていの場合、相手は「こちらの勘違いでした」と一応は謝ってくるのだが、どこか上から目線の書き方だったりする。弁護士は謝りの言葉を絶対にいわないよう訓練されているのかね。
今回はそうした謝罪がないどころか、こちらでそのドメインを検索したところ、ネームサーバーもまったく関係のないものであって、どうやらドメインレジストラが同じという理由だけでうちにこの書類を送りつけてきたらしい。驚くべき無知、無能、非常識ぶりだ。
しかも書面には、依頼人がどういう被害を受けているかという内容が、実際に書き込まれた文章まで添えて具体的に説明されていた。弁護士が依頼者の個人事情をまったく関係ない第三者に送りつけているわけだ。依頼者が削除したがっている内容を弁護士がさらに「拡散」しているのだから呆れ果てる。依頼者は弁護士事務所に安くないであろう依頼料を払って、自分のマイナス情報を関係のない外部に拡散させていることになる。

政治家や官僚の劣化は広く知られるところだが、社会の正義や秩序を守るべき弁護士という職業の人たちまでがここまで知性を劣化させていることを危惧する。ネット犯罪やトラブルの相談は日常茶飯事だろうに、ネットの基礎知識も学んでいなければ、人との交渉や接触に際しての常識も持ち合わせていないとは。

ワンセグケータイ裁判のデタラメ

「合法的集金稼業」に前のめりになっている弁護士事務所が増えた。テレビをつければその手のCMがわんさか流れてくる。
集金ターゲットが高利貸し業者ならまだいいのだが、IT弱者ともいえる高齢者を狙う手法もエスカレートしているようだ。
以前、「老人よ、弁護士とNTTとNHKから身を守れ」と題する日記を掲載した。これに関して、同様の被害を受けたので裁判を起こしているというかたからメールが来た。
僕が日記に書いたのは自分の例ではなく、親父の契約についてだから、契約締結時のいきさつやその後のことはよく分からない。しかし、メールのかたはご自分の契約のことで、したはずのないオプション契約を勝手に締結され、十数年間もクレジットカードから引き落とされていたという。このかたは海外に在住しており、明細が示されていない一括引き落としだったために気づくのが遅れたそうだ。
海外生活に入る前に結んだ契約時の書類も出てきて、相手方(プロバイダ)の説明がウソだらけであることも証明できているという。
「海外のマスコミも視野に入れ、なんとかこの事実を高齢者の方にも知ってもらい、自分が課金されているものの詳細をチェックするように働きかけたい」という。しかし、相手は巨大企業。個人で裁判を続けていくのは大変だろう。
日本の裁判所は、ワンセグケータイを持っているだけでNHKとの受信契約を結ばなければならないというトンデモ判決を出す。そういう国なのだ。
テレビを視聴できるワンセグ機能付き携帯電話の所持者に、NHKと受信契約を結ぶ義務があるかが争われた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(深見敏正裁判長)は26日、1審・さいたま地裁判決(2016年8月)を取り消し、「契約義務がある」としてNHK側の逆転勝訴を言い渡した。同高裁では別の裁判長らも22日に契約義務を認める判決を2件出しており、控訴審ではいずれもNHKの勝訴となった。
「ワンセグ携帯 NHK逆転勝訴 義務認定3件目 東京高裁」 毎日新聞 2018/03/26)

「別の裁判長らも22日に契約義務を認める判決を2件出しており」というのは、水戸地裁と千葉地裁で起こされた同様の裁判を22日に東京高裁が控訴棄却したことをさしている。
控訴していたのは50代と60代の男性で、どちらもテレビを所持していないのに、ワンセグ受信可能なケータイ端末を所持していたというだけでNHKとの契約を結ばされたというもの。
どちらの裁判でも、
とした。
家にテレビを持っていない中高年が、ケータイの小さな画面でわざわざワンセグテレビを見るとは到底思えない。
これがまかり通るなら、速度超過運転をする意思がなくても時速200km出せる自動車を所持しているだけで違法だとか、そういう話にもなるのではないか。

NHKを視聴しなくても契約義務が生じるという滅茶苦茶な論理の根拠となっている放送法第64条を改めて見てみよう。
【放送法第64条(受信契約及び受信料)】
第1項  協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第126条第1項において同じ。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。

ここには「設置」とある。
2016年8月26日のさいたま地裁判決では「ワンセグ機能付き携帯電話の所持は放送法上の受信機の設置にあたらない」として、原告勝訴となった。あたりまえの判決だろう。
しかし、上記、今年(2018年)3月26日の東京高裁では、このさいたま地裁判決を取り消し、放送法64条第1項の「設置」は備え置くだけでなく、携行も含む、という拡大解釈までしてNHKの逆転勝訴とした。ケータイを所持していることが「NHKを受信できる装置を設置した」ことになるというこの「解釈」を、はたしてどれだけの人が受け入れられるだろうか。
デジタル放送になって、テレビ受像器はB-CASカードなしでは受信できなくなった。放送法を現状に合わせて改定し、NHKもWOWOW同様、スクランブルをかけて放送すればいいだけのことだ。「公共放送」というのであれば、災害時の緊急放送などだけノンスクランブルで放送すればよい。現状ではNHK総合は、災害時にもL字枠に「死者○人」などと出すだけで、ドラマやスポーツ中継を流している。民放となんら変わらないのだから。

最近、こんな事例を知った。
東北のある町から大都市の大学に進学し、初めて都会のひとり暮らしを始めたばかりの女性の部屋に「NHKの契約はお済みですか?」と男が訪ねてきた。
女性はテレビを部屋に持っていなかったし、これからも持つつもりはなかったが、そう答えると、「携帯電話は持っているんじゃないですか?」と問い詰められ、ワンセグ受信が可能なケータイだったため、契約書、しかも銀行口座から自動引き落としする契約書にその場で署名捺印させられたという。
この話を聞いて、高齢者だけでなく、田舎から都会に出てきた若い女性なども集中的に狙われるのかと、暗澹たる気持ちになった。
社会正義とか公平公正などという言葉が通用しない日本の法律、法の運用。それを利用して非生産的なビジネスにしがみつく大企業やら弁護士事務所やら……本当に情けない国になってしまった。






↑これは私の「遺言」です。大人にこそ読んでほしい




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