尿意がなくてオムツに全量出してしまうタイプと、なんとかトイレに行こうと頑張って、でも、間に合わずにダ~っと出てしまいトイレを浸水させてしまうタイプでは、どんなにオムツの量がかさんでも前者のほうがずっと楽だ、とスタッフは言う。そりゃそうだろうなあ。
最近はホームを訪れるたびにトイレの床を掃除をしているスタッフの姿が目に入り、申し訳なくなる。
自分たちもそうなるのだろうか……その前にスッと死ねたらいいのだが、そううまくはいかないのだろうなあ……。
オムツが必要になったとき、介護してくれる家族もいないし、施設に入る金もないし、国は疲弊していて介護保険も破綻しているだろうし……と、オムツデイにはどうしてもそういう思考になってしまうが、それだけでは精神が持たないので、せめてオムツを買った後には美味しいものを食べよう、と気持ちを切り替える。
といっても、また魚べいなんだけどね。
結局、処方箋に書いてあった3つの薬が全部揃う薬局がなくて、3軒目で諦めて、漢方薬だけ後から取り寄せということに。
オムツと薬をホームに届け、家に戻ったらもう夕方。レオの世話をして、珈琲タイム。
「焼きたてや」で買った鯛焼きを食べる。「高級食パン」も気になるので、時間がたつ前にと、薄く切って軽くトーストして、何もつけずに食べてみた。
う~~~~~ん……。
なんだろう。ふわふわともどっしりとも違う。粘り気があって甘みが強い。
助手さん曰く「塩原に行ったときに観光牧場の売店で買ったパンの食感と味」
それはあまり覚えていないのだが、言いたいことはよく分かる。
コンビニやヤマザキのような大手工場で作られたパンのようにふわふわで軽い食感ではない。かといって、ブヴロンのパン小屋のパンのようなどっしりした小麦本来の旨みがじわ~っと広がってくる食感でもない。
とにかく「甘い」のが気になる。
砂糖、油脂、乳製品、卵不使用が売りで、砂糖の代わりに蜂蜜を使っているとのことなのだが、蜂蜜の量が多いのか、それとも酵母との相互作用が砂糖と蜂蜜ではかなり違うのか……。
砂糖を使わないでパンを焼くと失敗するという人がいたので、ネットで砂糖とパンについてあちこち検索してみた。
パン作りの中で砂糖は重要な役割を担っています。通常の食パンにおける砂糖の配合率は5~6%ですが、町のリテールベーカリーでは10~12%に増やしているところもあります。通常12%というとバターロールに加えられる配合率ですが、この配合率の食パンの方が、クラスト(皮)が薄く、老化も遅くなり、おおいに売れているお店もあります。
一般的なパンの砂糖配合率はフランスパン、ドイツパンは0%、食パンが5~6%、ドックロールが8~10%、バンズ、中華饅頭が13%、菓子パンが18~25%、スイートロールが20%、パンドーロが30%といったところです。
砂糖の添加量によって使われるパン酵母の種類も量も変わります。砂糖の添加率が0~7%の時は無糖用パン酵母を、7~25%では菓子パン用パン酵母(耐糖性パン酵母)を、30%以上になると最近開発された高糖用パン酵母を使います。
(パン作りと砂糖 製粉協会理事 製粉研究所長 竹谷光司)
……そうなのか~。勉強になった。
さらには、
- 砂糖を5%加えると、吸水は1%減少。
- 砂糖が多いとグルテンがつながりにくくなるので、若干硬めの生地をしっかりミキシングするのがポイント。
- 糖量が約10%まではパン酵母の発酵力を促進するが、10%以上になると徐々に発酵力を阻害する。
- 最近は耐糖性の強いパン酵母も開発されているので、砂糖の配合量にあったパン酵母の種類と添加量を決めることが大切。
- 砂糖、食塩の配合量による浸透圧の値がパン酵母の発酵力に影響を与える。味のバランスもあるが、砂糖の添加量が増えるに従って、食塩量を減少させる。
- 砂糖の配合量が多くなると、焼成によるカラメル化、メイラード反応を促進するため、焼き色が早くつく。
……なんだそうだ(上記サイトより引用)。
知識も経験もないので、偉そうなことはなにひとついえないのだが、「パン作りは難しい」ということだけはよく分かる。
日光に来てから食べたパンで、今のところいちばん感心しているのはブヴロンのパン小屋のパン。特にフランスパン系は本格的でとてもうまい。
カルフールのフランスパンもうまいと思った。安いのでさらに感動したのだが、さすがに安すぎてやっていけなくなったようで、最近大幅な価格変更があった。
輝麦のパンは安いのにうまいからとても評価している。菓子パン類は特に安い。
鹿沼のクロワッサンからの移動販売車からはいちばんよく買う。ここのフランスパンはどう考えても「フランスパンではない」のだが、別の美味しさがあるので好きだ。冷凍保存しておいても美味しさが損なわれないのもいい。
人気のあるTOMOZOベーグルのベーグルは価格が高いけれど、それなりの価値がある商品だと思う。
逆に、日光のパンを代表する超有名ブランドのパンは、高いだけで全然美味しいとは思わない。直売所で1度買っただけで、その後は買っていない。
他にも、なんだかな~と思うパン屋さんは何軒かあった。
しかし、パンは好き好きであり、ラーメンと同様に人によって大きく評価が分かれる。
この店の食パンを月に一度くらい買っているというホームのスタッフの話では「子どもがあの甘い味が好きみたいで、買ってくれとせがまれる」と言っていた。「うちは生協のパンを主に食べているので、それに近い食感なのかもしれない」とも。
ああ、そう言われてみればそんな気もする。生協のパンって、最後に食べたのはずいぶん前のことだが、記憶をたどれば、確かに似ているかもしれない。
自宅に窯を作って自分でもパンを焼いているS氏は「自分の志向とはまったく違うけれど、材料にこだわり、有名店で修業したというのだから、店主はあの味と食感に確信を持っているのでしょう」と評した。
また、「これが受け入れられるなら、今市での商売の可能性を感じる」というようなことも。
それはまったく同感だ。
1500円以上する食パンが日常的に地元の人たちに買われていくなら、今市はまだ経済的にも余裕があるということになる。しかし、その方向はかなり難しいだろう。
テレビなどに取り上げられて、観光客が押し寄せるような店になるとすれば、観光ルートから外れた今市の郊外でもPR次第では商売を成功させられるという証明になる。
実際、
別の食パン専門店が何度かテレビでも紹介されていて、ネットにも「一時間半並びました。が、売り切れで食パンは買えませんでした」なんてコメントが並んでいる。
土曜日しかやっていなくて、行列ができて、午前中には売り切れるというこのパン屋さんのパンは食べたことがないし、多分、今後も食べるチャンスは訪れないと思うが、そこまで噂になるとさすがに気にはなる。
まあ、パンに限ったことではないが、食べ物を売るというのは大変なことだなあと、改めて思う。
食べ物だけではないか。自分がいいと信じるものが世の中の多数の人たちの心をとらえられるかどうか……。価値観や感性に絶対的な評価はなかなかつけられないもんね。