カエル図鑑(9)

モリアオガエル

モリアオガエルの子
2008/08/02 変態直後のモリアオガエル 福島県川内村の自宅にて




2010/06/18 舗装道路の上をさまよっていたモリアオガエル


2011/06/05 モリアオガエルの産卵 川内村平伏沼にて
分布
本州のほぼ全域。主に中央山間部と日本海側。太平洋側では内陸部。

大きさ・容姿
40mm~80mmくらい。シュレーゲルアオガエルより一回り大きい。

産卵場所を求めてさまよっていた♀↑(2010/06/18 川内村下川内)



卵を産んだ後も残っているモリアオガエル↑(2007/06/12 川内村獏原人村にて)



上の写真の一部を拡大。残念ながらお尻だけ


木の枝に卵塊を産みつけるという独特の産卵スタイルで人気のあるカエル。しかし、普段は樹上高く生活しているため、滅多に人目に触れない。
姿形はシュレーゲルアオガエルと瓜二つで、昔は同種と考えられていたこともあるらしい。
西日本のモリアオガエルは細かな赤い斑点を持つものが多いが、東に行くほど斑点は少なく、緑一色の無地に近いものが多い気がする。そのため、一見すると大きめのシュレーゲルアオガエルかと思うかもしれない。
目の光彩が赤みがかっているのが見分けるポイントということになっているが、子供のカエルではそれもよく分からなかった。フラッシュをあてると確かに毛細血管が浮かび上がるからか、光彩が赤く写る。
卵塊は時期と場所が分かっていれば誰でも簡単に見ることができるが、大人になってからのモリアオガエルを見つけることは難しい。上の写真に写っている(お尻の)モリアオは、産卵後も木の枝に残っていたため同定できるが、もし、森の中でこういう写真を撮ったとしても、シュレーゲルアオガエルと見分けがつかないかもしれない。
日光市周辺では、小来川地区あたりが棲息の南限だろうか。東照宮のそばにある日光田母沢御用邸記念公園内の池にも毎年卵を産むという。
川治ダム方面などにはまだいっぱいいるようだが、今市地区からはほぼ姿を消している。



2011/06/05 モリアオガエルの産卵 川内村平伏沼にて
残念ながらこの年はこの後、沼が完全渇水して卵、オタマジャクシは全滅した



目が赤みがかっているのも、シュレーゲルアオガエルと区別できるポイント




産卵
木の枝に産みつけられる大きな白い卵塊は、実物を初めて見たときは本当に驚いた。
それまでテレビの映像では見たことがあったが、もっと小さく、泡も柔らかいものだと思っていた。
産みつけた直後から泡はかなりの粘度があり(スポンジケーキ程度)、表面が固くなってからは、中華饅頭くらいの硬さになる。
下に止水がある枝に産みつけるのだが、正確には、枝ではなく、枝についた葉っぱに粘着させるようにして産む。枝では接触面積が得られず、すぐに落ちてしまうからだ。
松の枝に産みつけられた卵塊は、強風で枝先ごとよく落ちている。
また、止水の上に出ている葉っぱつきの枝という条件は極めてシビアなので、田圃の畦の草むらに絡めるようにして産んだり、池や沼の縁に産みつけている例もある。
平伏沼
モリアオガエルの聖地・福島県の平伏沼↑  枝からたくさん卵塊がぶら下がっている



今はこの卵塊の真下はぎりぎりなんとかなりそうだが、これ以上水が減って水際が後退すると、落ちたところが地面でそのまま死ぬ



2010/06/10 平伏沼にて



上のモリアオガエル。水の中で自由な格好をしている



田圃の縁に産みつけられたモリアオガエルの卵塊↑


上の写真を拡大↑



↑どういうつもりか、国道の上に産みつけられた卵塊


このU字溝に水が流れていたときに産んだのだろうか?↑


このままでは100%死んでしまうので、救出↑ その後、わが家の池で無事に育っていった


田圃の縁の草むらに産みつけられた卵↑

ここからは日光(小来川)での写真

2016年5月31日 小来川の小さな田んぼにせり出した枝に


毎年ここに産みつけられる
モリアオガエルの卵塊は、シュレーゲルアオガエルの卵塊に比べると、大きくて丈夫にできている。
とはいえ、高温の日が続き直射日光が当たると、たちまち内部まで乾ききり、卵は死滅する。
モリアオガエルの卵にとっていちばんの敵は太陽光、その次は強風だ。
風に飛ばされて落下した地点が土の上だと、完全にアウトである。水の上に落ちれば、まだそのままじわじわと溶ける間にオタマになって生き延びる可能性がある。
田圃の縁(の草むら)などに産みつけられた卵塊は、オタマになったとき、下が地面である。しかし、すぐそばに水があれば、しっかり育ったオタマなら、身体をよじらせるようにしてジャンプし、水をめざす。そのくらいモリアオガエルのオタマは強い。
卵塊の中で十分にオタマとして成熟してから外に出たほうが生き延びる確率は上がる。
水に落ちたオタマは、ものすごい勢いで泳ぎだし、安全な場所を求める。水底まで一気に潜り、次に水面へ顔を出して、自分が落ちた場所の水深を計測する。
水に落ちてからの数分間が、オタマにとってはいちばん危険な、生死を分ける時間だ。このときを待って、アカハラ(ニホンイモリ)などが待ちかまえている。一足先に数センチにまで成長したアカガエルのオタマなども、植物性から動物性の餌に切り替わる時期で、小さなオタマは食べてしまう。
しかし、オタマの大きさも運動能力も成長速度も、モリアオガエルはシュレよりずっと上回っており、孵化した後の生存率はシュレより高いと思われる。
逆に言えば、モリアオガエルのオタマを見ていると、シュレのひ弱さ、デリケートさが際だってくるのだ。
救出卵塊の「半人工孵化」でも、モリアオのほうがシュレよりずっと楽だ。卵がしっかりしているために、保管がしやすい。ときどき霧吹きで湿気を与えておけば、ほぼ間違いなくきれいに孵化してくれる。
シュレーゲルアオガエルの卵塊は形がすぐに崩れるし、乾燥しやすいので、とても難しい。水に入れて(浮かべて)おくと溶けてしまうし、水のない場所に置くには、元の形がかなりしっかり留まっていないと難しい。

溶け出す卵塊から落ちていくモリアオガエルのオタマ



落ちる瞬間




孵化~オタマジャクシ時期
モリアオガエルのオタマジャクシは、最初の3日間くらいを無事に生き延びれば、その後は力強く成長していく。マツモムシやアカハライモリの魔の手を逃れ、水底の落ち葉の陰などに身を潜めながら、じっと変態までの時間を過ごす。あまり泳ぎ回ったりしないのも、外敵に食われてしまうリスクを下げるための本能なのだろう。
ただし、他のオタマジャクシ同様、水温が低いとなかなか成長できないので、一日中陽の当たらない沼や、絶えず沢水が流れ込む池などはあまり適した環境とは言えない。


左がモリアオガエル、右はニホンアマガエル


変態
変態直後のモリアオガエルの子は、1日ほど低木の草の上などでぼーっとしている。このときが唯一の撮影チャンスで、この後はすぐに森の奥深くへと移動してしまう。そこから先は、3年後、産卵のために戻ってこない限りはまず目にすることはできない。そのへんが他のカエルとは違うところだ。
変態直後のモリアオガエルの子は小振り(1年くらい)のアマガエルほどの大きさだが、アマガエルの子とはまったく大きさが違う。オタマジャクシの大きさはあまり変わらないのに、変態後の大きさが違うというのは面白い。

モリアオガエルの子たち

08/08/23


葉っぱからぶら下がる



鳴き声
シュレーゲルアオガエルの声を野太くした感じ。アカガエルにも似ているが、アカガエルよりもずっと太くて声量もある感じの声。

性格
モリアオガエルは、シュレーゲルアオガエルに比べるとあらゆる点で力強く、生きる意志が強い。
この二種は、大昔は同じカエルで、みんなシュレーゲルアオガエルのような生き方をしていたのではないかと想像する。そのうち、孵化の確率があまりに低いことに嫌気がさしたグループが、卵を土の中ではなく、水の上に張り出した枝に産みつけるという荒技を編み出した。それを実現するためには、体力や運動能力を強化する必要があり、トレーニングと気力で身体を一回り大きくさせた。
結果、卵も大きく、粘りのあるものになった。
それを横目に、「そこまでする?」と呆れ顔で見ていたのがシュレーゲルアオガエルのグループで、この連中は今でもデリケートでリスクの高い産卵方法を続け、普段の生活ものほほんとしている。
……どうも、そんな気がしてならない。

大楽センセのカエル学(森水学園特別授業書きおこし)


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