カエル図鑑(6)

トウキョウダルマガエル


2012/08/29 日光市手岡の沢筋

分布
本州の仙台平野から関東平野にかけて。
トウキョウダルマガエルとトノサマガエルは、従来、ほぼ生息域が別れているとされていたが、最近では混在しているという報告も増えている。
従来の分布図を信じれば、日光エリアでこの風貌のカエルを見かけたら、まず間違いなくトノサマガエルではなく、トウキョウダルマガエルである……ということになっている。
『レッドデータブックふくしまII』(福島県生活環境部環境政策室自然保護グループ:編集・発行 2003/03)によれば、トノサマガエルとトウキョウダルマガエルは「未評価」となっている。理由は「(互いに)明確に区別できない個体が多く、分布に不明な点が多いため」だという。
また、「他県ではトノサマガエルとトウキョウダルマガエルは交配することも確認されており、細胞遺伝学的な研究も今後行う必要がある」としている。
栃木県でも混在している可能性はあるが、今のところ、栃木県内で見かけるこの手のカエルはトウキョウダルマガエルであると考えてよい。

大きさ・容姿
40mm~80mmくらい。。

緑色、茶色など体色はさまざま。トウキョウダルマガエルはトノサマガエルに比べて、 と言われているが、色も模様も様々であり、外見だけで断定するのは難しい。微妙な外見の個体は、結局のところ、棲息場所をよりどころとして「トウキョウダルマガエルでしょう」ということになるのではないか。

緑色の個体  (2012/04/29 日光市手岡 農家の池)



茶色い個体 (同上)



背中の線がはっきりしている個体



模様がはっきりしていない個体



ほとんど真っ黒な個体。♀を求めて鳴いている


(以上、2012/04/29 日光市手岡)


産卵
繁殖は、春から夏にかけてだらだらと続くらしい。雄は雌を獲得するために縄張りを作るが、そのためにヘビなどに襲われやすい。

↑トウキョウダルマガエルの縄張り内にヘビが侵入した形跡



♀を求めて鳴くトウキョウダルマガエルの♂(2012/04/28 日光市手岡)



抱接中のトウキョウダルマガエル(2012/04/29 日光市箱ノ森)



卵塊。我が家の周囲では、田植え前、水が入ったばかりの田んぼを覗くと簡単に見つかる



アカガエルの卵塊よりもつぶつぶが独立していて、時間が経っても球形があまり崩れない(2012/04/28 日光市手岡)



孵化しかけている卵塊



なかなか田植えが始まらず、干上がる寸前の卵塊 (2012/04/29 日光市箱ノ森)




孵化~オタマジャクシ時期
卵はほぼ剥き出しで産み出されるが、泥やゴミが付着して目立たなくなる。
トノサマガエルは1シーズンに1回しか産まないが、トウキョウダルマガエルは2回に分けて産むことがあるらしい。
オタマジャクシは一月半くらいかけて、最大60mmくらいまで巨大化する。

変態
夏の終わりくらいまでには変態して上陸するが、大人になっても、水辺からあまり離れることはない。

鳴き声
ゲゲッと、短く区切るように鳴く。アマガエルにちょっと似ているが、身体に似合わず、アマガエルより声量はなく、声の線も細い。

性格
トウキョウダルマガエルは人に慣れる、というか、学習するのか、時間が経つと人間の姿を確認してもほとんど逃げなくなる。
また、個体によって性格がずいぶん違うようだ。
一般的には、近縁のトノサマガエル同様、力が強く、他のカエルを寄せつけない性格であるとされている。
阿武隈では決して数は多くなかった。繁殖しているエリア(ほとんどは田んぼ)が限られていて、トウキョウダルマガエルが棲息する田んぼに隣接する家の人は、夜、家に無数のカエルが突進してきてバタンバタンとすごい音を立ててぶつかり、翌朝、軒下に死骸が累々と並んで、箒で掃き出すほどだったと言っていた。
トノサマガエルは獲物に向かって突進していく性質があるというが、窓ガラスや壁にあつまる蛾などに突進した勢いで衝突死するのだろうか。

日光のトウキョウダルマガエル
トウキョウダルマガエルは全国的に減少しているという。しかし、我が家(日光市手岡)の周辺では、広い範囲にわたり、いちばん目にするカエルである。田植えの時期などは、田んぼはトウキョウダルマガエルだらけになる。
これだけ多いと、岡崎現代型狛犬と同じで「ああ、またトウキョウダルマガエルか」とがっかりしてしまうのだが、それでも栃木県では当初、絶滅危惧II類になっていた。
その後、準絶滅危惧種に下げられたが、それでもシュレと並んで「準絶滅危惧種」である。
これだけトウキョウダルマガエルが多い地域というのは、全国的には珍しいという。

ただ、トウキョウダルマガエルが目立つというのは、絶対数が多いというよりは、他のカエルがあまりにも少ないので、相対的に目立っているだけかもしれないとも思う。

原発人災が起きる2011年まで、川内村の我が家の周囲でいちばん目にするカエルはアカガエルだった。
ヤマアカガエルもニホンアカガエルもいた。タゴガエルやシュレもいた。場所は限られているが、周囲にはモリアオガエルが繁殖する沼もあった。姿は見たことがないが、カジカが鳴いているのも聞いたことがある。
池を造ってからは、ツチガエルも集まってきた。
しかし、その時点でさえ、僕は川内村の我が家周辺で、トウキョウダルマガエルを見たことはなかった。
初めて見たのが2009年の春で、まだ小さなトウキョウダルマガエルを1匹だけ近所の田んぼで目撃した。
翌、2010年には、少し離れたところで、そこだけトウキョウダルマガエルが大量繁殖した1枚の田んぼがあった。
ところが、原発人災が起きて、村中の田んぼに水が入らなかった2011年春以降、あれだけあたりまえにいたアカガエルがすっかり姿を消してしまったのだ。
千代田区の17倍ある村全域で田んぼに水が入らなかったのだから、生態系は激変を余儀なくされる。
わずかに残った用水池などを覗き込むと、そこにはトウキョウダルマガエルとツチガエルだけがいた。どちらも普段はほとんど見ることができないカエルだったが、アカガエルやアマガエルが激減したために、相対的に目立つようになったのだ。
そしてついに、2011年以降、我が家の池にもトウキョウダルマガエルが進出してきた。アカガエルがいなくなった池にトウキョウダルマガエルが棲みついたのだ。
以後、川内村の池でのトウキョウダルマガエルとアカガエルの数は完全に逆転した。その劇的変化はちょっと信じられないほどだった。
また、アカガエルは消えたが、ツチガエルは残っていた。もともと数が少ないツチガエルだが、アカガエルのようにはあまり移動しないので、これまた相対的に目立つ結果になった。

この経験をした今では、トウキョウダルマガエルが目立つ場所というのは、自然が壊されていく過渡期なのではないかと思うようになった。
あまりにもあたりまえにいたので関心がわかなかったような生物、たとえばスズメも、今はほとんど見ることがなくなった。生物種の絶滅というのはこうして劇的に起きるのだろうな、と思う。
阿武隈にいたときは、アカガエルがレッドリストに入るなんて想像できなかったのだが、日光に移ってきてからはしっかり実感できる。
ということは、トウキョウダルマガエルが絶滅危惧II類に戻ったときというのは、かなり危機的な状況ということなのだろう。

2012/04/29 日光市箱ノ森の田んぼにて



2012/04/28 日光市手岡の田んぼにて

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