阿武隈カエル図鑑

※ここで、カエルだけをまとめておきます。
※解説は『山渓ハンディ図鑑9 日本のカエル+サンショウウオ類』(松橋利光、奥山風太郎)  および 『日本のカエル』(http://www.hkr.ne.jp/~rieokun/frog/jpanfrog.htm)両生類保全研究資料室 を参考にさせていただきました。

ニホンアマガエル


07/06/11
日本全国に棲息する、最も「ありふれた」カエル。
アオガエル類よりヒキガエル類と近縁で、体表から弱い毒を分泌している。かぶれるようなことは滅多にないが、直接手で持ったときは、その後、流水でよく手を洗うこと。

アマガエル科
英名:Japanese Tree Frog
学名:Hyla japonica (「日本産のアマガエル」の意味)
体長:20〜45mm :背中は緑色。鼻先から鼓膜の後ろまで黒っぽい帯が入る
棲処:平野、低山の田圃など。夜、窓ガラスにやってくるカエルはまず間違いなくこれ
鳴き声:グエッグエッグェッ。クワックワックワックワッ。雨を予知して鳴くこともある
繁殖:本州では4〜8月。田圃や湿地などの止水。卵塊は小さいものを数回に分けて
オタマ:他のオタマジャクシに比べて目が極端に離れている。最大で50mmくらいまで成長。夏から秋にかけて変態し、上陸


05/07/23
窓ガラスで小さな虫を狙う


07/07/20
変態して間もない子カエル


アマガエル隊



06/05/07
身体の色を変えたニホンアマガエル
ニホンアカガエルは身体の色を灰色や茶色に変化させられる。その場合、背中にはこのような雲形の模様が現れる。

ヤマアカガエル

阿武隈地域ではニホンアマガエルの次くらいによく見られる。

アカガエル科
英名:Montane Brown Frog
学名:Rana (Rana) ornativentris (「腹に模様を持ったアカガエル」の意味)
体長:35〜78mm :背中は黄土色から濃い褐色までさまざま。腹の模様がかなり鮮明
棲処:平野の田圃から山地、森林など幅広く分布
鳴き声:ニャッニャッニャッ。キィラララララ キィララ
繁殖:本州では4〜8月。田圃や湿地などの止水。卵塊は小さいものを数回に分けて
オタマ:2〜4月と、他のカエルよりかなり早く繁殖活動に入るが、寒冷地では遅れることもある。産卵場所は主に水を張った田圃や水たまり。オタマの成長はゆっくりで、4〜5か月かかって60mmほどに成長。水温が成長速度に大きく関係している。個体による成長速度の差も大きいようだ。


07/05/05
池に産み付けられた卵


07/06/13
オタマジャクシ


07/07/20
脚が生えてきて上陸準備完了


07/07/18
顔もカエル顔になり、前脚も出て、上陸寸前


07/07/23
上陸したばかりでまだ体表が濡れ、尾が残る子カエル


07/07/22
尾が引っ込んでカエルの形に


07/08/02
兄弟揃って


07/06/15
ヤマアカガエルは顎の下や腹にかなりはっきりした模様がある



06/05/07

ニホンアカガエル

ヤマアカガエルに比べると体色が明るく、背中の筋がまっすぐになっているというが、混在していると区別は難しい。

アカガエル科
英名:Japanese Brown Frog
学名:Rana (Rana) japonica (「日本産のアカガエル」の意味)
体長:35〜70mm :背中は黄土色から濃い褐色までさまざま。腹の模様がかなり鮮明
棲処:平野の田圃から山地、森林など幅広く分布
鳴き声:キュッキュッキュッ。キョッキョッキョッキョッ
繁殖:ヤマアカガエルよりさらに早く、1月くらいから繁殖時期に入るものもあるらしいが、阿武隈は寒いので、ぎりぎり5月の連休くらいまでずれ込むのもいるようだ。産卵後に休眠(春眠)するとか。
オタマ:ヤマアカガエルのオタマと混在していることも多いらしい。ニホンアカガエルは背中に黒い斑点が一対あるというのだが、確認できたことがない。


07/07/26
これも背中の線の感じからニホンアカガエルか 。 左上にぼけて写っている子カエルはヤマアカガエルの子?

タゴガエル


07/04/21
伏流水の中に卵を産み、オタマは卵黄だけで変態まで成長するという謎の多いカエル。繁殖時期にくぐもった声で清流の岩陰などで鳴いているので、それを見つければ同定できるが、ちょっと見ただけでは他のアカガエル類と見分けるのは難しい。生態について分かっていることが少ない、謎に満ちたカエル。両生類学者の田子勝哉氏にちなんで命名されている。
背側線(背中の筋)は、鼓膜の後ろあたりで外側に曲がる。背面はヤマアカガエルに比べると滑らかな印象。オスとメスで身体の大きさにあまり違いがない。

アカガエル科
英名:Tago's Brown Frog
学名:Rana (Rana) tagoi tagoi (「田子氏のアカガエル」の意味)
体長:30〜60mm :黄土色や赤褐色などさまざま
棲処:山地、森の渓流付近
鳴き声:ググッ ググッ ゴゴッ(低く小さい声)
繁殖:4〜5月に繁殖時期を迎える。渓流近くの伏流水の中に卵を産み付けるため、卵を見ることは非常に難しい。卵の数も数十からせいぜい百数十個で、少ない。
オタマ:大きな卵黄を腹に抱え、その卵黄だけで変態まで成長する。そのため、オタマは大きくなっても20mm程度。


06/05/28
まだ大人になりきっていない

07/05/07
これは珍しい、シュレーゲルアオガエルに抱きつくタゴガエルの♂。カエルは繁殖時期になると、自分と同じ大きさの動くものにはなんでも抱きつく(抱接という)習性がある。抱きつかれているほうもまんざらではない顔をしているのがおかしい。

アズマヒキガエル


06/07/10
東北地方にいるヒキガエル科唯一の種。西日本には「ニホンヒキガエル」というのがいるが、亜種の関係で、繁殖が可能。地域差による個体の見栄えが違う程度らしいが、そもそもヒキガエルは多様な模様を持つので、細かな分類があまり意味をなさないようだ。カエルのくせに跳躍は苦手で、のそのそと歩いて移動する。鼓膜の後ろにある耳腺から毒液を出す。

ヒキガエル科
英名:Eastern-Japanese Common Toad
学名:Bufo japonicus formosus (「ハンサムなニホンのヒキガエル」の意味)
体長:40〜160mm :茶褐色、黄土色、赤褐色など、実にさまざま
棲処:平野から山地まで、物陰や落ち葉の下などに隠れるようにしている
鳴き声:クウックウックウッ。グゥグゥグゥ
繁殖:繁殖期は2〜7月と長い。池や田圃などに時に5mにも及ぶチューブ状の卵を産む。雌が極端に少なく、雄も縄張りを持たないため、一匹の雌に何匹もの雄が群がることも珍しくない。
オタマ:真っ黒。


手足を伸ばしてくつろぐ


07/08/06
こんな顔


07/08/02
アズマヒキガエルの子


07/08/02


アカガエルの子の大群に混じって、他とは明らかに違う子がたまに見つかる。アズマヒキガエルの子らしい。変態直後はニホンアマガエルより小さく、小指の先ほどもない。

07/07/22
これはニホンアマガエルの子かと思ったのだが、同定フォームで「かな」さんから、ニホンアマガエルではないというご指摘があった。足に吸盤がないことが決め手。目が横に付いているので、アカガエル系ではないことはすぐに分かったのだが……。背中にかなりはっきりと模様が見えている。何年か後に、この模様の入った大きなアズマヒキガエルが現れたら嬉しいなあ。

シュレーゲルアオガエル


06/07/10
全身緑色のカエルだが、色は環境に合わせて褐色に変えることもできる。小さいうちはニホンアマガエルと混同しやすいが、顔の横に黒い筋がないことでニホンアマガエルとの区別は容易にできる。問題はモリアオガエルとの区別で、阿武隈のモリアオガエルは模様がないため、外見からはほとんど区別できない。名前は、江戸時代にシーボルトが標本を母国ドイツに持ち帰った際、それを研究したドイツ人学者、ヘルマン・シュレーゲルにちなむが、純粋な日本固有種。

アオガエル科
英名:Schlegel's Green Tree Frog
学名:Rhacophorus schlegelii (「シュレーゲル氏のアオガエル」の意味)
体長:30〜60mm :緑色。色は褐色にも変えられる
棲処:湿地や田圃、森林など
鳴き声:キリリリリリ、カララララ
繁殖:繁殖期は3〜7月。田圃の畦などに横穴を掘って白い泡状の卵塊を産み付ける。雨が降ると流れ出し、畦にへばりついているのを見つけられることもある
オタマ:やや色が薄い程度で特徴がないため、他のオタマと見分けるのは困難。6〜8月に変態して上陸


06/07/10

枝につかまっているシュレーゲルアオガエル


07/06/11
卵塊
06年7月に見たアオガエルはかなり大きく、60mm以上はゆうにあった。モリアオガエルかと思ったが、エリアから判断するとシュレーゲルだった可能性が高い。

モリアオガエル


07/06/12
木の枝にパンのような白い卵塊を産み付けることで有名なカエル。日本全国どこにでもいるが、その卵の形態が印象的なために人気があり、地域によっては天然記念物扱いにしている。
阿武隈エリアでは平伏沼(川内村)は繁殖地として国の天然記念物指定を受けている。
阿武隈のモリアオガエルは模様がなく、シュレーゲルアオガエルとの区別はほとんど無理ではないかというくらい酷似している。目の縁が赤みがかっているのがモリアオガエルという区別の方法もあるのだが、阿武隈のモリアオガエルに関しては、これもあまりはっきりしていないようだ。
結局のところ、抱接中の個体や卵のそばに留まっている個体を見ることくらいしか、「モリアオガエル」と同定できるチャンスはなさそう。上の写真は獏原人村の田圃脇にあるタラの木に産み付けられた卵塊を下から撮ったものだが、上方に小さくモリアオガエルが写っている。
モリアオガエル
上の写真のカエルだけを拡大。残念ながらお尻しか見えない


07/06/15
平伏沼のモリアオガエル卵塊


07/07/22
田圃に落ちてしまった卵塊。これは救出して孵化させた



07/07/19
孵化したばかりのモリアオガエルのオタマジャクシ


07/08/02
地上に上陸したばかりのモリアオガエル? シュレーゲルの可能性も高いが、希望を込めてモリアオかも……ということに。


モリアオガエルは普段は森の中の樹上で生活しており、滅多に目にすることができない。繁殖は夜中が多いので、興味津々の卵塊作りの様子も、まず見るのは難しいだろう。オタマから変態した子カエルも、アカガエルなどと違って、さっさと森へと散っていくようだ。
結局、いちばん目にしやすいのは卵塊なのである。「卵がいちばん可愛い」という人もいる。確かにそうかもしれない。

■写真はモリアオガエルの一部(獏原人村、平伏沼)を除いて、すべて我が家の敷地内で撮影したもの
写真の下の数字は撮影年月日
禁無断転載
※参考:『山渓ハンディ図鑑9 日本のカエル+サンショウウオ類』(松橋利光、奥山風太郎)
    『日本のカエル』(http://www.hkr.ne.jp/~rieokun/frog/jpanfrog.htm)
    『両生類保全研究資料室』(http://web.hc.keio.ac.jp/~fukuyama/frogs/)

「阿武隈カエル図鑑」最新版は、http://abukuma.us/frogs/に移動しています。最新版は⇒こちら http://abukuma.us/frogs/でどうぞ。

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