テレビにつないでいるスピーカー(audio proというスウェーデンのメーカーのトールボーイ型)を鳴らすのに、BOSEの1705というミニパワーアンプを使っていたのだが、テレビの電源と連動しないため、24時間電源が入りっぱなし。消費電力は数十Wだと思うのだが、ちょっと気になり始めて、もっと省電力のミニアンプはないものかしらと思い、アマゾンで探していたら……2880円で出ているパワーアンプを見つけた。
こんなことが書いてある。
>商品の説明
TA2021 TA2024 等々、最近流行のデジタルアンプですが、マッキントッシュ等の数百万クラスのピュアオーディオアンプにも勝ったといわれる元祖、Tripath TA2020-020 搭載デジタルアンプ
どんなに高品質なTA2021 TA2021B TA2024アンプも TA2020の前では無意味です
作りは中国生産、非常に作りは荒いのでご注意下さい
初期傷、バリ、複数台購入でも 色の差が出たり致します
音質に関しましては雑誌や各方面で絶賛されている通りでございます
すでに倒産してしまったTripath社のTA2020-020搭載品ですので、チップが現存する限りの品物ですが、安価に楽しんで頂けると思います。
…………??
イマイチ理解できなかったので、Tripath TA2020-020 で検索をかけてみたら、あちこちのオーディオマニアのブログなどで面白いことが書いてある。
例えば
⇒ここ。
「デジタルアンプ」というのは、実は定義が曖昧で、かつてはデジタル入出力端子を備えたアンプは中身がどうなっていようが関係なくデジタルアンプと呼んだりしていた。
本来は、文字通り「デジタル処理で音を増幅」させるアンプということになるはずで、その程度もまたいろいろあるようだけれど、難しい話はどうでもいいや。聴いて音がよければOK。
この歳になると、重くてごつくてお金がかかるオーディオ製品はいくら音がよくても守備範囲外。
この2880円のちっちゃなアンプでテレビからの出力がaudio proのスピーカーに渡せればそれでよし。
12V電源のデジタルアンプだから、消費電力は間違いなくBOSEの何分の1かにはなるはず。
値段が値段なので、駄目元でえいやっと注文ボタンを押してみた。
翌日届いたのがこれ。
ACアダプタがついている。これでそこそこの音が出てくれれば、2880円だから文句はない。
さっそく今までのBOSEを外してつないでみたところ……。
え? これが2880円の音?
BOSEの1705というアンプは、まあ、オーディオアンプとしては廉価なものだが(それでも中古で2~3万円くらいはする)、腐ってもBOSE。普通に(ぎりぎり?)鑑賞に堪える音にはなっているはずなのだが、2880円のこのデジタルアンプ、明らかに印象が今までのBOSEよりもいい。
人間の声はクリアで聴きやすくなった感じだし、音楽では低音がしっかり出てくる。
オーディオ鑑賞としてはお話にならないテレビの音(圧縮音声だし、音声出力段には全然お金がかかっていない)でもこっちのほうがよく聞こえるというのはどういうことなのか?
まあ、大満足で交換を終えたのだが、WEB上の情報をいろいろ読むと、どうやらこの製品に使われているICチップ Tripath TA2020-020 というのが、数年前にオーディオ界で話題になったようなのだ。
作っていたTripath社はすぐにつぶれてしまい、今はこのチップは製造していない。しかも、初期の2020というチップは、その後に出てきたTA2021 TA2021B TA2024 といったチップよりも人気があるらしい。
ごく初期のロットは米国生産だとも書いてある。
いずれにせよ、このチップはもう新品では入手できないのだから、このチップを使った製品が今頃出回っているのも不思議な話。おそらくは中古のチップを買い集めて、それを使って他の部品を安い新品で組み込んだのだろう。当然、中古チップもなくなれば製造できない。きっと、今ある限りで、在庫がなくなり次第おしまい。
そう思ったら、予備にもう1台ほしくなり、届いたその日に、今度は別の店に同じものを注文してしまった。
翌日、それが届いたので、仕事場に持ち込んで、本格的に聴き比べをやってみた。
うちにあるいちばんいい音がするアンプはNEIT2というイギリスのアンプで、30年くらい前に人からもらったもの。その当時で十数万円していたと思う。
これと、出前ミニライブのPA用に購入し、その後は、昨日までテレビの出力につないでいたBOSEの1705と比べてみたのだが、まず、BOSEには圧勝。音の透明感、解像感がまったく違う。BOSEは全体に靄がかかったような感じなのに対して、この2880円アンプはそうしたまどろっこさがない。
NEIT2とはいい勝負。クリアな感じという意味ではこの2880円のほうがいいかもしれない。
デジタル特有の、な~んかがすぽんと抜けているような感じ?もするのだが、サラッと感はNEIT2よりあるかもしれない。NEIT2は粘っこいエネルギー感がある。どっちがいいかは好き好きかなあ。
あと、大出力には向いていない。でかくすると音が歪む。そんな音、うちではまず出さないからいいんだけど。
歳で、耳もだいぶ悪くなっていると思うから、これ以上は気にしてもしょうがないかな、と思う。
いずれにしても、十数万円のオーディオアンプと、2880円の粗悪部品でできた中国製アンプが「いい勝負」というのは驚くべきことだ。
なんなんだろう、これって。
ほとんどの人にとって、オーディオ観賞用アンプはこれでいいんじゃないの? 小さいし軽いし安いし電気食わないし。
ばらして、コンデンサなどの部品を高級なものに変更すれば、もっといい音になることは間違いないだろうが、これだけ小さい基盤のものをばらす根性はないし、そこまで頑張って出てくる音質の差を、今の僕はもう必要としていない。
これで十分満足だ。
……と言っても、仕事場のアンプは変更しなかった。つなぎ替えるのが面倒だから。
セレクターを介して、いろんなものがつながっているから。
あとは、長年使ってきたNEIT2を引退させるのが悔しいから。
Tripath TA2020-020 チップがいよいよなくなったら、その後に出た2024などのチップを使った兄弟製品もいろいろ出ているようなので、それも悪くない選択では? ↓
ただし、すべて基本的には中国製で品質のばらつきなどはかなりあるようだから、とことん自己責任でどうぞ。僕が購入した2台はどちらも不具合はなく、満足のいく商品でした。