2012/06/12の5

 鹿沼市文化活動交流館

「木のふるさと伝統工芸館」のおじさんに教えてもらった「あそこにもある」という場所は、鹿沼市の「文化活動交流館」という名称の施設だった。
WEBサイトには、
//この施設は、美術や工芸など市民の創作活動を展開する“創作工房機能”、歴史的資料や文化財などの展示や情報提供のための“郷土資料展示機能”、芸術文化作品の発表や観賞の場となる“ギャラリー機能”を併せ持ちます。また、障害者の働く場として、市役所1階の「夢未来」と同様の“喫茶コーナー機能”もあります。
皆さんの生涯学習や文化・芸術活動などによる交流事業が活発に展開されることが期待できます。そして、誰もが気軽に楽しく利用できる施設です。//


とある。
いつも行っているビバホームやヨークベニマルがあるショッピングモールのすぐそばだった。
全然気がつかなかった。
教えてくれたおじさんも施設名は出てこなくて「川上澄生美術館の裏」と言っていたくらいだから、市民でもあまり馴染みがないのかもしれない。

広い敷地にはのんびりと子どもが遊んでいた。

で、小雨の降る中、ここかな? と入ると、すぐ右手に、あった、あった。
例によって誰もいない。係員が僕らを見つけて、すぐに広い展示室の照明をつけてくれた(つまり、それまでは照明も落ちていた)。

立派な彫刻屋台が2台。ここは触れられないように仕切り柵があるが、ガラス越しではないので光の反射などはなく、よく見える。
写真を撮り始めると、係の女性が寄ってきてこう言った。
「一応、写真は許可していますが、ホームページなどに載せることはおやめください」
……はあ?
何を言っているんだろう、と、最初は理解できなかった。
彫刻屋台は鹿沼市の所蔵品ではなく、各町内自治会が所有・管理している。
その点をまず確認すると、1年単位で2台ずつあずかって展示しているという。
では、何を根拠に「写真を公開してはいけない」と言うのか?

そもそも鹿沼市はこの文化遺産を全国区に押し上げるために宣伝努力する立場ではないか。WEBに写真を載せるなとはどういう了見なのか。

今まで見てきた展示施設の人たちはみな自治会のボランティアだったが、全員「宣伝してください」と言っていた。写真を撮るのにも「ここからだときれいに撮れます」などと協力してくれた。
みんな、この文化財をもっと広く知ってほしいという気持ちを持っていることがよく分かった。
そうした住民の気持ちを逆なでするかのように「写真を公開するな」と言うのだ。それも鹿沼市が。
驚くと同時に呆れ、腹が立ち、その女性係員にたくさん質問をした。
それは誰の命令か。担当部署はどこか。何人でやっている部署か。責任者は誰か。
……まあ、彼女にしても、上から言われたことを言っているだけというつもりだっただろうから、なぜ自分が詰問されるのかと不愉快になっただろう。
このおっさんは何をムキになっているのかと。
だから、分かるように説明した。

「これは、庶民が権力に屈しないで生み出し、残してきた貴重な文化なのよ」
「その庶民が生んだ文化を、官が『表に出すな』と統制するとはどういうことか」
「文化を守るのは官ではなく、我々みんなの力なのだ。みんながこの文化の存在を知ることから始まるのだ」
「知られないものは、抹殺されても、粗末にされても、気づいてもらえない。みんなが知ることで、なんとか長く、次の世代にも伝えなくては、守らなくてはという意識も芽生える。それを阻害するようなことを文化課が命じるとは、心得違いも甚だしい」
……とまあ、ちくちくと言ったのだが、まあ、彼女に言っても上にはきちんと伝わらないだろう。変なクレーマーが来て困りました、とか報告するのが関の山か。

立派な建物にすばらしい文化財を展示してあるというのに、おそらく鹿沼市民もあまりこのことを知らないのではないだろうか。
もちろん、お祭りのことはみんなが知っているだろうが、お祭りは1日2日限りのこと。普段から、こういう「文化財」がこの町に存在しているということを知らしめることが重要なのだ。

行政に勘違いした人間が多いと、ほんとに不幸なことになる。
おそらく鹿沼市文化課は、文化を保護するという意味を根本から勘違いしているのだろう。
普段ならここまで腹を立てたり、がっくりきたりはしなかったかもしれない。しかし、福島県が放射能漏れを国よりも先に知っていながら県民に知らせなかったり、SPEEDIのデータを隠したりといったもろもろの経験を経てきたときだけに、僕の身体の中で行政の勘違いぶりに対してのセンサーがかなり過敏になっている。
きっと、役場の中での人員配置が適材適所になっていないんだろう。

広い空間に展示された2台の彫刻屋台



1832年は天保3年。天保年間といえば、小松利平が故郷の高遠藩を捨てて福島に定住を決意した時期か


脇障子の彫刻は次回にじっくり見てみよう



こちらは白木造りの麻苧町の屋台


唐獅子牡丹で賑やかに飾っている


左右の高覧にある金箔の龍は、これより古い、彩色を禁じられる前の屋台のものをつけている↓


この屋台展示室の奥には、日本中どこにでもある民俗資料を展示したスペースがあるが、呆れたことに「撮影禁止」の札があちこちにあった。
撮影を禁止するほどのものがどこにあるのか? 何を隠そうとしているのか? 貧乏くさい役人根性丸出しの空気が、立派な施設を台なしにしている。歴代のお偉いさんの写真が並べられていたり、なんともちぐはぐ。
今まで見てきた民間?の展示施設との違いに愕然とさせられた。
ものすごい金がかかっている施設だけに、本当にこのせこさ丸出しの雰囲気が残念でならない。
来客があるたびに鹿沼の町を案内し、自分でも鹿沼の魅力を探そうとしていて、これからも鹿沼の町を盛り立てていくことに、何か力を貸せないだろうかと思っていた矢先だけに……、しかも、ネコヤド商店街の若い力や、古い町民たちが屋台彫刻を誇りに思って一生懸命PRしている姿を見てきた後のことだけに、本当に悲しい気持ちになった。

おそらく、な~んにも考えていないのだろうな。この行為の意味を


こんなに立派で素敵な建物外観なのに……


生き金、死に金という言葉があるが、


この素晴らしい施設が死に金の象徴にならぬように祈りたい


たくき よしみつ 新刊情報

4月20日発売 『3.11後を生きるきみたちへ ~福島からのメッセージ』(岩波ジュニア新書)


『3.11後を生きるきみたちへ 福島からのメッセージ』(岩波ジュニア新書 240ページ)
『裸のフクシマ』以後、さらに混迷を深めていった福島から、若い世代へ向けての渾身の伝言

第1章 あの日何が起きたのか
第2章 日本は放射能汚染国家になった
第3章 壊されたコミュニティ
第4章 原子力の正体
第5章 放射能より怖いもの
第6章 エネルギー問題の嘘と真実
第7章 3・11後の日本を生きる

今すぐご注文できます 
アマゾンコムで注文で買う
⇒立ち読み版はこちら
裸のフクシマ  『裸のフクシマ 原発30km圏内で暮らす』(講談社 単行本352ページ)
ニュースでは語られないフクシマの真実を、原発25kmの自宅からの目で収集・発信。驚愕の事実、メディアが語ろうとしない現実的提言が満載。

第1章 「いちエフ」では実際に何が起きていたのか?
第2章 国も住民も認めたくない放射能汚染の現実
第3章 「フクシマ丸裸作戦」が始まった
第4章 「奇跡の村」川内村の人間模様
第5章 裸のフクシマ
かなり長いあとがき 『マリアの父親』と鐸木三郎兵衛

今すぐご注文できます 
アマゾンコムで注文で買う
⇒立ち読み版はこちら

「ガバサク流」推しのデジカメ パナソニックLX5

撮影サンプルは⇒こちら




一つ前の日記へ一つ前へ  abukuma.us HOME    takuki.com HOME      次の日記へ次の日記へ

よいお買い物研究所

放射線量計 デジカメ 洗浄便座 HDD録画テレビ あえてiPod 自転車・バイク保護
解説は⇒こちら 解説は⇒こちら 解説は⇒こちら 解説は⇒こちら 解説は⇒こちら 解説は⇒こちら



↑タヌパックの音楽CDはこの場で無料試聴できます
Flash未対応ブラウザで、↑ここが見えていない場合はAmazonで試聴可能



たくき よしみつの本 出版リストと購入先へのリンク  デジカメと写真撮影術のことならここへ! ガバサク道場

  タヌパックブックス

狛犬かがみ - A Complete Guide to Komainu

狛犬かがみ A Complete Guide to Komainu

(バナナブックス、1700円税込)……  オールカラー、日英両国語対応、画像収録400点以上という狛犬本の決定版。25年以上かけて撮影した狛犬たちを眺めるだけでも文句なく面白い。学術的にも、狛犬芸術を初めて体系的に解説した貴重な書。
アマゾンコムで注文で注文


HOMEへ 狛犬ネット入口目次へ



  タヌパックスタジオ本館   ギターデュオKAMUNA   あぶくま狛犬札所60番巡り   日本に巨大風車はいらない 風力発電事業という詐欺と暴力
Google
abukuma.us を検索 tanupack.com を検索