2012/09/13

 復活の沢、一歩前進



今日はまたとびきり暑かった。今これを書いている夜9時過ぎでも、部屋の中はムシムシと暑苦しい。

その強い日差しの中、渡辺さんが追加のベントナイトを10袋買ってきてくれたので、二人で沢へ下りていった。
水漏れ箇所をなんとか塞いで、沢を維持したいという追加作業。


水漏れ箇所を下で塞ぐのは限界があるが、一応止めておいて……
足下に見えている水路は、本来水が抜けてはいけない場所。カエルには好都合な水たまりなのだが……


上ははっきりした穴がないので、ベントナイトの大量投入作戦


一応やれるだけのことをやって、再び沢の上流から水を流してみる

暑いし、今日はこのへんで……と思っていたところに、農家のかたがやってきた。
いきさつを説明しているうちに、「下流側の掘りさらいをしっかりやらなきゃダメだ。俺が草を刈ってやる」と、家に戻って、草刈り機を担いで戻ってきた。
思わぬ助っ人が現れ、バリバリ下流側の草刈りを始めた。我々は圧倒されながら、その後をついて刈られた草を掘り返し、横にどけ、沢筋をきれいに露出させていく。
一人でやるには途方もない作業量だと思っていたが、結局、一気に最後まで草刈りと掘りさらいをしてしまった。
彼は昭和5年生まれの82歳だという。
その老人が、草刈り機のベルトも着けずに、手だけで軽々と操作して、しつこい蔓草や下枝ごとガリガリ刈っていく姿は圧巻だった。
その場所はすでに僕が先日おおまかには刈ってあったので、二回刈ることでようやく草の下に隠れていた水路がしっかり見えてきた。

上流側から流れてきた水を見て、彼も満足げな顔。
カエルの話などもして、打ち解けてから本日の作業終了、解散に。
と、そこへもうひとり、水路の管理責任者が現れて、いろいろと注意点などの指示を受ける。
そのかたには渡辺さんがすでに事情を説明して協力を求めていたので、話はほぼ通っている。
田んぼ側に水がいかないようにこちらも十分気をつけながら水の管理に参加する、ということで納得してもらえた。

田んぼと水路に関するキーマン二人と直接顔を合わせて話ができたことが、何よりの収穫だった。
農家にとっても、上の住宅街からの下水が流れていかず、田んぼに染みこんだり流入することがいちばん困るわけで、こちらが本気で沢を復活・維持させようとしている姿を見て、協力しよう、という気持ちになってくださったのだと思う。


バリバリ草刈りをする農家の人。82歳でこれだけ動ければいいなあ。見習いたい


沢復活。一緒に作業をしたことで、農家のかたにも理解してもらえたと思う


労働の後に見る夕焼け。充足感がある

当初から、この沢問題は微妙だった。
沢筋は、農家の敷地、住宅地の誰かの敷地、不在地主の敷地を縫うようにして通っている。
もともとは山際にきれいに沢が流れていたのが、圃場整備で寸断され、今では用水路の水を取り入れないと流れない、「自立できない沢」になってしまっている。
自立して流れていたときに、そこに上の森を切り開いてできた住宅地の下水が流れ込むように接続してしまった。
沢はそのまま隣接する田んぼの用水にも使われていて、最後は武子川に流れ込む。合併浄化槽を通っているとはいえ、新たに生活排水が流れていくことになったわけで、この段階で、河川組合のようなものと軋轢が生じて、住宅地の人たちが迷惑料のようなものを支払うという取り決めがされた。

その後、圃場整備が行われ、沢は寸断されて消滅。田んぼの用水は沢筋からではなく、武子川の上流から直接U字溝で引っ張ってきて取り入れるようになった。
これで下水が田んぼの用水に直接入り込むことはなくなったのだが、下水の出口から先のルートが消滅してしまい、下水の出口はヘドロや大雨で流されてきた土砂が堆積して、田んぼを圧迫した。
「復活の沢」作業は、下水を下流側にきちんと流してやるためには、元の沢筋に水を入れて流れるようにしなければならない、というところから出発している。
しかし、住宅地の人たちは、この問題は見たくない、触れたくないと言うし、農家の人たちは当初から、山の上にできた住宅地の下水が流れてくることは迷惑で、いい気持ちを持っていない。
しかも沢のルートが入り組んでいて、土地の所有者が複数いる。
用水路の管理は当然農家の人たちが組合を作ってやっていて、僕たちは入り込めない。

……世の中、いろいろな問題がこんな風に複雑な様相を呈している。理論では解決できない問題のほうが多い。
だから、(1)道筋を立てて考える人、(2)その理論を取り入れて、現状をよりよくしていく方向に指揮する人、(3)物事がうまく進むように現場で人間関係をうまくとりまとめて動かしていく人、というように、役割分担がうまくできていないといけない。
本来なら、(1)は学者や官僚、(2)は官僚、政治家、行政、(3)は組織(団体や組合)の長や、土地の長老などが担うものなのだろう。
現代ではそうした連携による社会形成がうまくいっていなくて、あちこちで断絶や無視、無責任が広がっている。

「地元学」の基本は、自分が使っている水はどこから来て、捨てた水はどこへ流れていくのかを知ること。
電気も同じ。
発電機を回す動力源は何か。その結果出るゴミや排熱はどこにどう捨てているのか。あるいはそもそも捨てられるのか。
……ま、ここでまたその話を始めるとウザイと思われるのでやめましょ。

ともかく、一歩前進したかなと思える、有意義な一日だった。
ちなみに、沢にはカエルだけでなく、小魚やサワガニも戻ってきつつある。


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