日曜日に川内村の自宅に冬支度(防凍ヒーターを入れたり、トイレが凍結して割れないように水を抜いたり)しに行くつもりだったが、福岡国際マラソンの日だと気付いてやめた。
テレビ観戦で川内の応援。……ところが、川内はあっけなく負けてしまった。世の中、そうそううまくはいかない。
中山竹通が出ていた頃のマラソンはワクワクしたけれどなあ。もう長い間そういう気分のレース観戦がない。
寂しいねえ。
……で、1日遅れで川内村へ。
矢板北PAでいつものようにステーキ丼に大蒜どさっと乗っけてスタミナをつけてから行こうと思ったら……あらら~、矢板北PAは工事中で、食事ができない。4月までダメなんだって。ショックだわ~。
仕方なく、那須高原SAまで行く。
途中、いつものように那須塩原のミニホットスポットで線量を見ると、大分下がってきてはいるようだ。
それでも車の中で0.3μSv/h台。日光市の我が家の倍くらい。
下り線の那須高原SAのレストランって、今まで入ったことなかったのかな。記憶にない。ここはなかなかよいレストラン。上り線のレストランよりもメニューが凝っているし、価格も高くはない。点数高いぞ。
さて、雪が心配だったが、何事もなく川内村入り。
家への進入路で、いきなりブルーバッグのお出迎えか。
このブルーバッグの壁には、重大な問題が秘められている。
単純に線量が高い低いということではなく、
汚染度の高いものと低いものをこのようにあちこちからかき集めて、汚染の低い場所に一緒くたに積み上げてしまうことで、最初の汚染地図が書き替わってしまう、ということだ。
ここに積まれたブルーバッグは複数の場所から運ばれてきているのだろう。また、同じエリアでも、大して汚染されていない場所と汚染物質が集中したホットスポット(マイクロスポット)の土が隣り合わせに積み上げられてしまうことで、もともと安全な場所(汚染が低かった場所)を知ることが難しくなる。
実際、この場所は汚染度合が低かった「安全な場所」のひとつだったが、今は危険物が混じった汚染の壁ができた要注意地点になってしまっている。
このブルーバッグの山は仮置き場が決まるまでの、さらに仮の仮置き場ということだから、そのうちこれらの青い袋はまたどこかへ運ばれていく。有力候補地は、
小笹目の牧場の土地らしい。
そこは丘の上で、水源地でもあり、下流側には菊池製作所を誘致した元富岡高校川内分校跡や川内中学校、役場、かわうちの湯などがある村の中心部がつづいている。
小笹目一帯はかなり汚染されているエリアなので、そこで牧場再開は難しいから、土地を貸してくださいよ、という話なのだと思うが、村の中心部に向かって流れている沢や川の上流側、人間の生活圏より高い場所に汚染した土を積み上げておくという神経はちょっと理解できない。
ともかく、こんな風に、除染だ除染だといって、枝を払い木を伐り、土や住宅は以後の山を削り、そのゴミをブルーバッグに詰めてあっちへやったりこっちへやったり。こんなことに莫大な金が使われているのだ。
今後、ある程度安全だと分かっていた低汚染地帯にもこうしたものがどんどん持ち込まれて、汚染地図が書き替わっていけば、汚染拡散の予測が難しくなり、ますます対応が複雑になる。
目の前に積まれたブルーバッグの
汚染度合のばらつきを知って、その恐さを実感した。
どこが安全でどこが危険かという見極めがどんどん分からなくなっていくことが心配だ。金をかけて問題の解決を難しくしているだけではないだろうか。
その最たる例が、
鮫川村の放射性廃棄物焼却実験施設受け入れ表明だ。
環境省によれば、県内に保管されている8,000bq/kg超の農林業系副産物(稲わら、牛ふん堆肥、牧草、きのこ原木、果樹剪定枝など)を焼却対象物として減容化・安定化を図るため、仮設の小型専用焼却炉を設置し、焼却による減容化の実証試験を行うとされ、1日5トン程度を処理できる小型炉で、来年1月中に実証実験を始め、計600トンの焼却を見込むという。
敷地面積は1600平方メートル程度。焼却期間の終了は、平成26年9月を予定しており、焼却灰の管理は焼却炉の設置場所または隣接地に管理型最終処分場での処分を想定し、保管する方針という。
? 環境省の委託事業で、焼却炉の設置費用を含めた今年度の事業費は4億6200万円、25年度は1億8000万円、26年度は9300万円を見込んでいる。(いわき市議 佐藤かずよし氏のブログより)
放射能汚染を免れたと言ってもいい鮫川村で、放射性物質に汚染された稲藁、牧草などの「焼却実証実験施設」建設が始まった。主導したのは環境省。
この鮫川村の青生野地区という場所は、塙町、いわき市、茨城県北茨城市と隣接した水源涵養地で、複数の河川の源流部にあたるという。
実は、去年の夏、僕らは川内村の友人たちと一緒に、このエリアを移転先候補として回っていた。町議員のかたに案内され、特に塙町の那倉地区を重点的に回ってみた。移転するにしても「福島がいい」という思いがまだあったので、塙町、石川町、矢祭町など、汚染をほぼ免れた何部を中心に探し回っていた。
塙町の那倉地区はいい場所だったが、空き家物件が乏しく、諦めた。
そのとき一緒に回った小塚さんは、その後、佐渡へ移転。今も佐渡で農業をしながら終の棲家物件探しをしている。僕たち夫婦は二転三転の後に今の日光市に移転。関守はまだ村にいるけれど、北海道移転を計画中。
もし、だれかがこの地に移転していたら、今度はこの事件に巻き込まれ、さらに神経をすり減らすことになっていただろう。
まさにこの有力な移転先候補地のひとつだった那倉の人たちが鮫川村村長にあてた要望書を、そのままここに転載する。
鮫川村村長 大樂勝弘 殿
焼却処分場工事の白紙撤回を求める要望書
青生野地区焼却処分場建設計画について以下の理由により直ちに白紙撤回することを求めます。
1.焼却炉建設の必要性がない。
8,000ベクレルを超える放射性廃棄物の焼却実験とのことですが、対象のものはわずか28トンに過ぎません。どうしてもこの処理が必要ということであれば、これだけ一時的に保管し5年後に政府が作る最終処分場に持ち込めばよいだけの話で、焼却炉を作る必要はありません。
また600トンを焼却する予定ですが、堆肥原料落ち葉10トンは業務開始後に搬入、庭木・立木342トンは実施期間中発生の都度搬入となっており、要するに今後集めることになります。しかし、貴村は福島県内にあって非常に汚染の低い村であって除染の必要はなく、庭木、立木、落ち葉を広範囲に集める必要はありません。除染対象地区に指定されたのは昨年度でありその後1年を経て線量は0.1マイクロシーベルト台に下がっています。沢水など村民の生活に直結するマイクロスポットのみの除染で十分なはずです。
2.処分場は放射性物質の二次汚染を引き起こす可能性が高く危険である。
当会では処分場建設について専門家を招き、勉強会、講演会を重ねておりその結果として危険性の高い施設であると認識しています。建設予定地周辺には多くの住民が居住しており健康被害、風評被害が予想されます。
他町村で行われた焼却実験では、200万ベクレル/kgを超える汚染灰が発生しています。貴村では焼却灰を10万ベクレル/kg以下に抑えるとのことですが、単に灰を希釈するかどうかの違いだけで、放射性物質の総量は変わらず意味がありません。焼却灰の保管は5年とのことですが、貴村が計画しているセメント固化は崩壊が早いこともあり、また万一の地震を勘案すれば充分な施設とはいえません。
建設予定地は自然林に囲まれた水源涵養地であり3つの河川の源流となっています。国の天然記念物であるヤマネも生息する豊かな生態系があります。こうした地を二次汚染の危険性に晒すのは愚かです。
3.地域住民の同意を得ていない。
建設予定地は塙町、いわき市、北茨城市との境にあり、処分場建設による影響は貴村住民だけでなく近隣市町村住民にも及ぶものですが、建設が始まろうとしている11月になっても依然として貴村では地域住民への説明会すら行っていません。また当会で開催した専門家による勉強会に再三参加要請したにも関わらず貴村からは大楽村長はじめ誰一人参加せず、安全確保を図るためにあらゆる観点から安全性や危険性を把握しようとする姿勢が見られません。さらに、当会が求めてきた施設資料の開示すら応じていません。
こうした放射性物質の焼却処分場を作るのであれば、はじめに地域住民への説明を行って、どのような施設を作り、どのような業務を行うのか、その際の環境汚染やそれに伴う地域住民への健康被害はどれほどが予想されるのか、またその対処をどのようにとるつもりであるのか等を地域住民が納得するまで説明し、同意、了承を得るのが行政がとるべきやり方です。
大楽村長は放射性廃棄物を一掃して事故前のきれいな村にしたいと説明されていますが、焼却処分場を作っても放射性物質の総量は変わらず、単に一箇所に集めるに過ぎません。鮫川村から汚染物を近隣市町村との境に集めて迷惑施設を押し付け、地域住民には一切の情報開示も説明も行わず、自分達だけが綺麗になればよいというのは余りにも身勝手であり、住民の健康と安全を守る自治体の責務を放棄していると言わざるを得ません。
4.貴村の信用とイメージが失墜する。
貴村は大豆で村興しを掲げ、安心安全な農産物作りを行い全国から高い支持を集めていたはずです。貴村を大切にしてきた村民の気持や努力、多くの人の支持や信頼を失うことは、村政の汚点として村史に残るはずです。
5.公費の無駄遣いである。
事業は3年間で7億円とされています。予定地は広大であり焼却せずに保管する方法も十分考えられますが、焼却による減容化により巨額の公費が投入されることになります。被災者の補償が進まず、未だに県内の線量の高い地域に多くの子供たちが生活しているのですから、これらの方々に少しでも回すべきです。
那倉を放射能汚染から守る会
極めてまっとうかつ正当な内容だ。
鮫川村は、たかだか数億円の事業費目当てに村の将来と今まで積み上げてきたイメージを全部壊すつもりなのだろうか。愚の骨頂とはまさにこのことだ。