今日は2月11日。3.11から1年と11か月。あとひと月で丸2年なのだなあ。
去年のことになるが、大手新聞社の若い記者から取材を申し込まれた。
「カタカナのフクシマと漢字の福島について記事を書きたい」と、よく分からないことを言う。
『裸のフクシマ』という書名にカタカナを用いたのはなぜか、とか訊かれた。
正直、面倒くさいなあと思った。
去年の元旦『朝まで生テレビ』は郡山市からの生中継だったが、番組が始まる前に、ディレクターさんが困惑顔で相談しに来た。
集まった地元(福島県)の聴衆の中から「福島をフクシマとカタカナで書くのは許せない。差別意識の証明だ」というような激しい抗議があったそうだ。
もちろん福島の人たちがみんなそういうことを言っているわけではない。若い人に多いようだ。
これだけのことが起きたのだ。世界史に残ることを起こしてしまったのだ。その意味で「ヒロシマ・ナガサキ」と同じように「フクシマ」は今後、人類史が続く限り語り継がれる。その運命はもはやどうしようもないわけで、カタカナで書くなとか、そんな狭い視野で怒っていてもどうしようもない。なんにも始まらない。
さて、今日、こんな動画を見つけた↑
フランスのCEREA(Centre d'Enseignement et de Recherche en Environnement Atmospherique)という研究機関がWEB上に公表している、福島第一から漏れたセシウム137の拡散シミュレーションだ。
CEREAは直訳すれば、大気環境の研究教育機関ということになるだろうか。
研究協力機関として、
- Air Network of the French Ministry for the Environment (フランス)
- INERIS, National Institute for the Industrial Environment and Risk (フランス)
- IRSN, National Institute for Nuclear Protection and Safety (フランス)
- EDF Polska (ポーランド)
- IER - Institut fur Energiewirtshaft und Rationelle Energieanwendung (ドイツ)
- Centre d'etudes techniques de l'equipement (CETE - Nord Picardie), Center for transportation technical studies (フランス)
- Air quality forecasting laboratory, North Carolina State University (アメリカ)
- Academy of Sciences (ウクライナ)
などの名が並んでいる。
フランス国立統計学校(国立土木学校)とフランス電力が共同で資金援助している機関らしい。
電力会社(フランスだから、もちろん原発メイン)が支援している機関だから、原発を否定するような活動はしていないはずで、放射性物質拡散を大袈裟にPRするような意図はないだろう。
出所は
⇒ここ
このサイト、淡々と研究発表が並んでいるのだが、この福島第一原発事故のページにもしもメッセージが込められているとすれば、
「福島第一から漏れた放射性物質によって環太平洋エリア全体が汚染されたが、その汚染度合は、例えばアメリカ西海岸は西日本よりひどい」
……という内容だろう。
上の動画のようにほとんどの放射性物質が太平洋側に流れていった結果、セシウムによる土壌汚染は↓このようになったという。

↑クリックで拡大
関東・東北が真っ赤なのが悲しいが、西日本はほとんど汚染されていないことが分かる。風が西から東に吹いたからだ。
さて、ここで僕が言いたいことは2つ。
1)「フクシマ」は福島の問題ではない。地球規模の問題。首都圏がひどい汚染から免れたのは放射性物質が漏れたときの風向きや天候の「たまたま」の結果にすぎない
2)「たまたま」助かった日本は、この大失態から何を学んだのか? 何一つ学んでいないではないか。
廃炉技術の開発は、これから必須のものであると同時に、大きなビジネスになる。日本が今いちばん力を入れなければならないのはそこだ。
田中康夫氏も同じことを言っているが、これはビジネス界にとっても大きなチャンスなのだ。
日本は廃炉をきちんとできるのかどうか、世界が注視している。
それなのに、原子炉の真下を走っている断層が活断層かどうかで議論しているなどというのは愚かとしか言いようがない。そんなもの、たとえ活断層でなかったとしても、もはや動かしてはまずいだろうということくらい分からないのだろうか。
動かなくても、その気になれば発電できるよという状態に保てれば「資産」、廃炉が決まったら「負債」。だから必死になって廃炉時期を延ばすという程度の頭しかない人間が原子炉を扱っている。こんな恐ろしいことはない。
例えば、大気汚染防止のための排気フィルタリング技術において、日本は世界のトップレベルにある。今の中国に必要なのはこの技術と、なによりも「環境を汚染しないためには金を使わなければいけない」という思想・哲学だ。
ところが、原子力の分野では、日本は世界で最も野蛮なことを続けている。もんじゅなど狂気の沙汰だ。本当に恥ずかしい。こんな愚行を莫大な国費を使って続けている国に暮らしていることが恥ずかしい。
これだけ世界に放射性物質をばらまいておきながら、今後も「原発を輸出する」と言ってのける厚顔無知ぶり。
輸出すべきは廃炉技術であって、間違っても原子炉ではない。
自分たちがまともに管理できなかった物を輸出して少しでも金にしようなどというのは、人間性がおかしいだけでなく、技術立国として生き残るというビジネス戦略、政治戦略面でも、まったく間違っている。
もはや、日本は世界中からバカにされている。今までの行け行けどんどん発想で生き残れると思うのは甘すぎる。
「日本は原子力を使うことをやめました。これからは後片づけに全力を尽くします。そのための技術と経験を買ってください」と世界に向けて表明することこそ、これ以上日本の資産を食い物にされないための生き残り戦略ではないか。