今頃？

今日の毎日新聞に、
「福島第１原発:ベント前　放射性物質が１０キロ圏に拡散」
という記事が掲載された。

要約すると、

• 福島県は原発周辺に25基の放射線量計測モニタリングポストを設置していたが、3.11直後、そのうち5基は津波で流され、20基は電源喪失でデータを送信できなかった。
• データが回収できなかった20基について、蓄積されていたデータを回収して2012年9月までに解析。
• その結果、2011年3月12日に１号機格納容器の便とを始める5時間も前から、放射能漏れが10km圏に拡散していたことが判明した。放射線量が通常の700倍に達していた場所もあった。
• この解析結果は県のWEBサイトに掲載され、関係自治体に連絡したが、ベント前に放射性物質が拡散していたことは周知されておらず、国会と政府の原発事故調査委員会も把握していなかった。
• ちなみに最初のベントは3月12日午前10時17分に試みられ、4回目の同日午後2時半ごろに「成功した」とされている。

……という内容。
なんだかなあ……。今頃何を言っているのだろう。
「ベント前に放射性物質が拡散していたことは周知されておらず、国会と政府の原発事故調査委員会も把握していなかった」と書いているが、『裸のフクシマ』にも書いたように、福島県は3月12日の早朝からモニタリングカーを出しており、午前8時台にはすでに15μSv/hとかの異常な線量を計測していたのだ。


モニタリングポストのデータを回収するまでもなく、リアルタイムで知っていたのだから罪は重い。
福島県はおそらく、国や東電よりも先に原発敷地外への放射能漏れを直接計測して知っていた。いちばん先に知っていた。しかし、危険にさらされている周辺自治体になんの指示も出さなかったし、情報提供もしなかった。
……そういうことなのだ。

……と書いて、ふと目の前の線量計を見ると、なんだかいつもより高めのような……。まあ、平均値が大きく変わらないうちは心配しないことにしている。

しばらくガンマスカウトのログをチェックしていなかったので、チェックしてみた。
日時の切り替えは、初期設定した時刻が14:38だったのでそのままになっている。つまり、最初の1行は2012年1月9日の14時38分から1月10日の14時38分までの24時間ということ。
ピンクの行は川内村を往復した日をまたいでいる。

こうしてみると、やはり川内村を往復した日は若干高くなっている。
ルートとしては、いつも宇都宮ICで東北道にのり、矢吹ICで下りて、そのままあぶくま高原道路を通って小野町から入る。矢吹～小野町あたりはむしろ東北道を走っているときより低い値をさしているので、那須塩原～白河あたりを通過しているときの線量が影響して高めになるのだろう。
あとはもちろん川内村の自宅に着いてからの滞在時間中もその程度の線量にはなるので影響している。
これが、東北道を郡山ICまで走ってそこから磐越道にのるルートだと、被曝量はもう少し高くなるはずだ。

それはそうとして、気になるのは去年の7月25日あたりからしばらくの間、ずっと高めに出ていることだ。
これは何を意味しているのだろうか？
線量計は壁にかけたままで、外には持ち出していない。屋内の定位置に置いたままなのにこの期間、明らかに線量が上がっているのだから、外の空間線量が上がっていたのだろう。放射性物質の飛散が収まっていない証拠だろうか。

上の図は、東電が発表している4号機のカバー取り付け工事の予定表。
本工事は2012年4月17日から始まっている。2012年7月下旬から8月にかけてというのは、まさにこの工事で連日、粉塵を巻き上げながら外壁の撤去などをしていたときにかかっている。
もしかすると、その工事と風向きの関係で日光にまで粉塵が飛んできたのかもしれない。

……まあ、よく分からないなあ。
しかし、これだけ差があるということは、まだまだいつ放射性物質が飛んでくるのか、降ってくるのか、吸い込んでしまうのか分からないということだ。憂鬱。
それにしても、夏は海側から風が吹く。上の気象データを見ても、東南東とか北東とか、東側からの風が目立つ。
原発が爆発した3月はまだ冬型の気象で、ほとんど西風（太平洋側に押し出す風）だったから助かった。
日本の西日本より、何千キロも離れたアメリカ西海岸やアラスカのほうが汚染された。
もしこれが夏だったら？
風は海側から吹いてくるから、日本列島の汚染はとんでもないことになっていたかもしれないのだ。
本当に、今の程度の汚染で済んだのは、ジャンケンに5回連続して勝つくらいの運のよさだったのではないか。

1. 夜ではなく、作業員がたくさんいる昼間だった
2. 土日ではなく平日だったから作業員がたくさんいた
3. 風が海側に吹く季節だった
4. 半年前に免震重要棟が完成したばかりだった
5. 4号機は作業ミスで点検日程が遅れ、たまたま原子炉に水が満杯状態だった
6. 地震で歪んだ隔壁の隙間を通ってその水がたまたま4号機の燃料プールに流れ込んだために、燃料がメルトダウンを免れた

……こういう連続ジャンケンにことごとく勝ったという偶然。幸運。
どれか1回でもジャンケンに負けていたら、被害は今の何倍にもなっていたのではないか。