2014/07/12

シモツケコウホネ

涼風号MarkIIで、今日は板荷方面へ。
東武日光線の無人駅周辺には、住むのに心地よさそうな場所がいくつかある。穴場だと思う。安いし。

板荷小学校に隣接している河川公園。「せせらぎプール」というのだが……


泳いでいる人、遊んでいる人はおろか、公園内にはまったく人影がなかった


帰り道、杉林の山を上り下りして抜けて、小代に戻ってきたとき、「シモツケコウホネ自生地」という看板が目に入った↑
コウホネは知っているが、自生しているのを見たことはなかったと思う。看板に案内されるまま、道を曲がってみたが、「自生地」と呼べそうな沼地は見えない。田んぼと住宅があるだけ。
変だなあ……と帰ろうとしたときに、ようやく、道沿いの水路に目がいった。黄色い花がぽつんぽつんと水面から出ている。
ん? もしかしてこれのこと? 自生地って、用水路のこと?


用水路の中から黄色い小さな花が首を出している


これ?


どうやらそうらしい


下の草は、流れてきた草が引っかかっているだけで、コウホネの葉ではない


土手沿いに歩くと、トウキョウダルマガエルがあちこちでぴょんぴょん水に飛び込む


これが「自生地」だったとは……


後半部分、涼風号MarkIIを挟んで、U字溝を埋めずに土と石で残した水路。そこに「自生」している


田圃に入ってからの水路ではこんな感じ


緑の葉はコウホネのではない。水の中に見える茶色いワカメのようなのがコウホネの葉


かつては田んぼの用水路はみんなこんな感じだったので、いろんな動植物が棲息できたのだな


今日、たまたま看板を見つけてここに来るまで、シモツケコウホネというものは知らなかった。
いや、何かで読んだことがあるような気はするが、あまり気に留めていなかった。イメージしていたのは「蓮」のようなものだから、ずいぶん想像と違っていた。

ネットで調べると、
2003年に世界で初めて発見された、沈水性のコウホネ属の植物。
世界中で栃木県内の4箇所だけに生育(日光市、那須烏山市、真岡市、さくら市)している。
北海道から九州まで分布する同じ属のコウホネと異なり、葉は水中に没した沈水葉だけで、抽水葉(水上の葉)を作らないことが最大の特徴。
花茎だけが水面からまっすぐ10~15cmほど突き出し、先端に黄色い花を一つ咲かせる。開花時期は6月末から10月頃までと長く、一個の花の寿命は1週間ほど。現状の自生地は水路など流水の環境。
……だそうだ。

まだ発見されて10年、 2006年9月に新種だと認定されてからはまだ8年も経っていない。

⇒ここ や ⇒ここ や ⇒ここ にシモツケコウホネ訪問記や、守る会の柴田さんの話などがある。
2011年や2012年の写真を見ると、水路の脇の道路は砂利道で、まだ舗装されていなかったことが分かる。柴田さんらが働きかけをしなければ、この水路は完全U字溝化されるか、暗渠になってしまっていたに違いない。
今も、U字溝化を免れているのはごく一部で、前後はU字溝になってしまっているので、シモツケコウホネは棲息できない環境だ。

⇒このブログに出ている柴田さんの話が興味深いので、一部を短くまとめながら引用させていただく。










……僕自身が「復活の沢」を巡って日々経験していることとも重なってくるから、とてもよく分かる。
栃木県だけではないだろうが、足下にある宝物に対してあまりに無頓着だ。
このへん一帯のいちばんの宝は、日光連山から流れてくる豊かできれいな水。それを単にU字溝で上から下に流していくことで、豊かな清流が育んできた環境を急速になくしてしまっている。
雑木林の山を次々につぶして杉を植えたり、ゴルフ場を増やしたり、人が住まない住宅地にしたり、といった「開発」行為は、もうこれ以上やってはいけない。実際、バブル崩壊の後では、やり尽くした感じで止まっている。
これからは、人間も野生生物も暮らしやすい環境に、ゆるやかな再構築をしていくことが課題だろう。

小代は、下小代駅の駅舎保存問題などでも住民が頑張った歴史があるらしいし、けっこう骨のある地域なのかもしれない。けっコウホネがある……。


↑これは環境省のレッドリストに掲載されているスイレン科の絶滅危惧種一覧(Wikiより)

シモツケコウホネのみが絶滅危惧IAに指定されている。IAというのは、今すぐにでも絶滅してしまうかもしれないという最高ランク。この上は「絶滅種」で、もう絶滅してこの世には存在しませんよ、という認定になる。

ちなみに「ギフヒメコウホネ」が消えているのは、指定した後に新種ではなく、オグラコウホネであったと同定されたから。
他のコウホネは、葉が水面に浮かんでいるか水面から出ているかで、シモツケコウホネのように花茎だけが水面から突き出ているものは他にはないので、今後もシモツケコウホネが新種ではなかったとされることはないだろう。
それほど稀少な種であるのに、この程度の保護でいいのかなあ、と心配になる。

幻の彫刻屋台

その後、助手さんから「枝豆を茹でる塩がなくなったので買ってきてくれ」と頼まれていたので、文挟で唯一と言っていい雑貨屋さんに行って、粗塩を買った。
「塩? お祭りに使うんですか?」と訊かれた。
ちょうど文挟地区の夏祭りで、これから屋台が出るところだったのだ。

文挟にも鹿沼の彫刻屋台同様のものが1台あるはず。
日光市の指定文化財になっていて、日光市のサイトによると、
繊細な彫りと大胆な彫りを適時に配して、彫刻図案構成の融合が図られている。その豪荘にして華麗な彫刻屋台の意匠構成である。
彫り様式、技術等から文化文政期(1804~1829)の建造説と、明治15年の建造とする説がある。
……というもの。これは前から見てみたいと思いながらかなわないでいる。
いい機会なのでお店のおばちゃんに訊いてみた。

「彫刻屋台も出るんですか?」
「いえいえ、出ません。あれはお金がかかるから、もう出せないね。バラバラにして保管してあるんだけど、組み立てるのもお金と人手がかかるし、今はお金もないし、若い人もいないから」
「前から気になっていたんですが、どこに保管してあるんですか?」
「神社の横の倉庫ですよ」
「見たことありますか?」
「私はありますよ。昔だけど。これから先、もう見ることはできないだろうねえ……」

……その倉庫というのはこれ↓





もったいないなあ、と思う。
お祭りで曳き回さなくてもいいから、せめて組み立てた姿を見てみたい。
日光市が金を出して組み立てて、組み立てたまま保管する倉庫を作ればよいのだ。仲町のように、ガラス越しにいつでも見られるような構造にして。そうすれば文挟地区の観光資産として生かせる。
そして、年に1度でいいから、点検をかねて倉庫から出してガラス越しではなく見られる「お披露目デイ」のような行事を作ると、なおよいね。
その日は地元のアーティストが集まって作品を披露するとか、現代風にアレンジして。

そんな難しい話ではない。土地はあるし、他に変なことにいっぱい金を使っているのだから、ガラス越しに見学可能な収蔵倉庫の1つくらいできるだろうに。

塩を買って帰ろうとしたら、ちょうどJAの駐車場から屋台が出てくるところだった。
リアカーみたいなゴムタイヤの屋台にボンボンや提灯をあしらったやつ。それが例幣使街道をゆっくり曳かれていくのだが、倉庫に眠ったままの白木造り彫刻屋台のことを思うと、なんとも「貧しい」気持ちになってしまった。
祖先が残した立派な文化遺産があるのになあ……。
見たいなあ、文挟の彫刻屋台。

ちょうど「現代の屋台」が出てくるところにかち合った


本来の彫刻屋台を、僕は死ぬまでに見られるのだろうか





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