2011/03/11
地震・福島第1原発
これを書いている今(午後10時)も、ひっきりなしに大きな余震が続いている。
最初のが来たときはジョンのお散歩の途中で、ちょうどうちのベランダ脇にいた。
外にいたので、母屋とスタジオがしなるように揺れるのがつぶさに観察できた。
すぐにカメラで動画撮影をしたのだが、どうもボタンの2度押しをしたらしくて、一瞬しか映っていなかった。
不謹慎な言い方かもしれないが、あの揺れが撮れていなかったのはすごく悔しい。
ガラスが割れなかったのと、停電がすぐに回復したのが幸いだった。首都圏も含めて広範囲で停電になっているらしい。うちは電気が来ないと水も出ないし暖房もできない。
情報が錯綜しているが、早々と「福島第2原発2号機でECCS(非常用炉心冷却装置)が作動した」というニュースが流れた。
本当ならとんでもないことではないか。
その後、情報が途切れていたと思ったら、夜も更けてきた頃になって、福島第1原発で水位低下で放射能漏れの恐れ。付近住民に避難命令というニュースが。
水位が低下? 原発にとっては最悪の事態ではないか。運転が停止しても、炉心はすぐに冷えるわけではない。まだ熱いままの燃料棒が露出したらどういうことになるのか。炉心を満たしている水位が低下しているというのだから、とんでもない事態だ。
東電の原子炉はすべて沸騰水型で、炉心の燃料棒に接触した冷却水からの蒸気を直接発電タービンにまで持ってきて発電している。つまり、この水は放射能だらけであり、それが「水位低下」(=漏れている)ということは、少なくともタービン建屋の中はすでに放射能汚染で手がつけられないような状態だと思える。
しかも、国内有数の老朽原発。(こんな原発でプルサーマルを許可した県知事の能天気ぶりに、改めて腹が立つ。プルサーマルは3号機だが、事故が起きたら何号機だろうが同じこと)
半径3kmの住民に避難命令というが、どこに避難しろというのか。一旦、建屋の外に放射能が漏れだしたら、どっちみち取り返しのつかない環境汚染になる。
後始末させられる作業員たちの被曝量も半端ではないだろう。
シロ、一昨日は夜中の1時半過ぎにやってきてお泊まり。昨夜は2時過ぎても来ないので寝た。
今日は地震(本震)の後にやってきて、ご飯食べて、強い余震が続くのもなんのそのでいつもどおり爆睡。
震度4程度の余震ではびくともしない。人間が「わ」と声を上げるくらいの強い余震のときも、ゆっくり背伸びして寝返りを打っただけ。肝が据わっている。
あちこちで、街ごと、市ごと壊滅状態。これは死者は万単位になりそうだ。
2011/03/12 9.00 am
放射能漏れ
メールその他でご心配いただいたみなさん、ありがとうございます。
地震の揺れそのものでの直接被害は今のところありません。井戸水が濁ったくらい。
停電がすぐに復旧したのがありがたい。電気が来ないと水も出ないし暖房も止まるので。
いちばんの問題は原発で、やはり放射能漏れが発表されました。うちからは福島第一も第二も20kmくらいで、隣町(富岡町)の住民が1000人くらい川内村に避難してきています。
川内村からも、さらに西方向に避難を始めた人たちがいます。
うちは避難先のあてがないので、まだ動けません。下手に動いてもかえって放射能を浴びてしまうし。
周囲、特に浜通りはあちこち壊滅状態で、当分、混乱が続きます。
あとは本能に従って、あるいは覚悟を決めて動く( or 動かない)しかないですね。
みなさまもどうぞご無事で。
2011/03/15 12.18PM
当分戻れないし、関東もかなりまずいことに
だいぶ時間が経ちました。
ご心配してくだっている常連の皆様、ありがとうございます。僕も助手さんも無事です。
シロとジョンが気がかりです。
福島第一原発1号機で最初の水素爆発が起き、その映像がテレビに映し出されたのが1時間半後。
あれでさすがに慌てて、避難準備に入りました。
午後6時過ぎに、バタバタと家を出て、ひたすら風上に走り、白河市のお寺をめざしました。
そこまでは一気に走り、お寺で休憩させてもらいながら次のルートを考えようという作戦。
小野町で一軒だけ小さなガソリンスタンドがあいていて、ガソリンを満タンにできたのが幸運その1。
ずっとつながらなかったケータイがそのときたまたまつながり、お寺にも「今から行っていいですか」と連絡を入れられたのが幸運その2。
お寺では、断水しているのに、井戸水をバケツで汲んで、お風呂を沸かして待っていてくださいました。
一晩泊めていただき、翌朝、朝ご飯までごちそうになってから出発。
国道294号をメインにして、なるべく海側を避け、裏道っぽいルートで東京へ。
途中、大子町などは信号機が全部切れていて、断水エリアはさらに広く、トイレが使えない状態。ガソリンスタンドは軒並みダメ。たまに空いていると長蛇の列。
ダイソーがあったので、電池とマスクとUSBのケータイ充電器を購入。
千葉県に入り、ようやく正常に。ファミレスで昼食。
その後も道が渋滞することはなく、首都高は嘘のように空いていて、午後3時台には川崎ICを下りていました。
その後、取手市に避難した友人と電話で話したら、同じ頃、幹線道路は大渋滞で、歩くより遅いような速度でしか走れなかったということですので、ルートのとり方がうまくいったのでしょう。
まずは手を洗い、服を着替え、車の外側を洗い流し、少し落ち着いたところで近所のスーパーに買い物に。
米やカップラーメンの棚は空っぽでしたが、他はそこそこ買えました。ダイソーでは単4以外の乾電池が売り切れ。
持ってきたLED照明が全部単4だったので、単4電池をしこたま買い込み……。
そんな感じで本日(15日)まで経過。
無事です。
慌てていたので、忘れ物がいろいろあるのですが、戻れないですね、もう。
やや平常心を失ったのは、爆発シーンが最初に民放で流れたのが、発生から1時間半も経っていたことと、その後の枝野の記者会見が、あまりにもとぼけていたこと。その発表前に、官邸でどこまで発表するか揉めていた様子だったことが大きいです。
事故の事象そのものよりも、正確な情報が伝わってこない、騙されてしまうという恐怖。「見えない恐怖」は、冷静な判断力を失わせるのだということがよく分かりました。
リアルタイムで情報を普通に流してくれていたら、もっと冷静に行動できたのにと思うと、腹が立ちます。
最初の爆発映像は、どうやら地元福島中央テレビの定点観測カメラらしいのですが、あまりにも衝撃的な映像なので、流すかどうか1時間半も迷っていたのでしょうか。この1時間半の隠蔽が、どれだけ付近住民にとって致命的なものだったか、メディアはもっと真剣に反省してほしいのです。伝えることによるパニックより、伝えないことによるパニック(教えてもらえないと疑心暗鬼になるパニック)のほうがずっと怖いということを知ってほしいのです。
あの最初の衝撃的な映像が流れたときも、他の民放やNHKでは映像もなく、うだうだと古い情報を伝えていました。
地元テレビが、原発関連のニュースになると、わざとなのかどうなのか映像が切り替わってしまったのも怖かったです。仕方なく、BSに切り替えて原発情報を探っていました。
この情報統制、あるいは報道現場の勇気のなさはなんとかならんのでしょうか。
どう動けるのかは人によって違います。情報をすぐに伝えないことで、動ける人までもが冷静に動けなくなり、いたずらにパニックを引き起こしたり、避難所を溢れ返らせる結果になっています。
今回の災害は、要するに「地震」ではなく「大津波」災害です。未曾有の天災には間違いないですが、それをさらに悪化させ、救助活動や復旧活動を妨げただけでなく、とんでもない方向に被害を拡大させた東電の責任は計りしれません。その体質を作ってしまった保安院はもっと重罪でしょう。
民主党政府の頼りなさ、勘違いぶりもひどいものですが、原発事故の土台を作ったのは自民党政権です。利権政治が、企業の正常な経営姿勢、技術力、最低限度のモラルといったものを腐らせてしまったのです。
福島原発はすべて廃炉になるでしょうが、予想以上に放射能を漏れさせてしまったのは120%人災。冷却水が漏れていることは早い時点で明白なのに、言わない。隠しきれなくなってから「……の可能性も否定できない」などと言っている。
保安院の広報官は爆発後もにやけながら、要領を得ない話を偉そうに言っている。役に立たないのだから、メディアは東電社員と中立的立場の学者のみ登場させて、極力、正確で迅速な情報伝達を心がけてほしい。
保安院を通すと分かるものも分からなくなる。あれが情報錯綜フィルターの働きをしている。
2011/03/15 17.51PM
近くに残っている人たちへ向けて 15日夜時点でのまとめ
いろいろ言いたいことはあるけれど、緊急時なので前向きなことだけ箇条書き。
福島第一原発に近いところに残っている人たちに向けて:
- 今夜が最初の山場。風は陸側に向かって吹いており、しかもみぞれ or 雨。じっと耐えて外に出ない。特にみぞれや雪に身体をさらさないことが最も重要。
- 水に不自由していないなら、こまめに手を洗う。口・鼻はマスクなどでふさいでおく。
- 明日は強い西風の予報。通り過ぎた放射能が舞い戻る可能性もあるので、少し時間をおいてから行動したほうがいい。親族など、受け入れてくれる場所が遠くにある人で、移動が可能な人は移動する。避難所の人数を減らすことで協力するという発想を。移動する場合は、海岸沿いや幹線道路は避ける。道中ガソリンは手に入らないと考えること。今あるガソリンでどこまで移動できるかを見極めることが必要。一人ならバイクも有効。
- 放射能は相当量漏れているけれど、爆発(再臨界)はなさそうなので、最後は収束する。落ち着いて、体内被曝を避けることに集中する。避難所(最低でも30km離れているはず)の外での放射線量は、計測可能値上限が低い(10マイクロシーベルトとかの)簡易計測計ならメーターが振り切れるかもしれないが、短時間浴びてもどうこうというレベルではない。数値が大きくても「マイクロシーベルト」で表せるうちはまだ大丈夫。危険なのは放射性物質を吸い込んだり口から入れたりして体内に溜めてしまうこと。それさえ防げれば、なんとかなります。
- チェルノブイリと比べて……といった情緒的な情報や流言飛語には耳を貸す必要はない。現実は「放射能が漏れ出していて、とめる手段はもはやない。しばらくはこの状態が続くが、いつかは収束する」ということ。何号炉の状態がどうのこうので、一喜一憂している状況は終わり。今後も、もう1回くらい水素爆発などあるかもしれないが、もうどうでもいいこと。冷却水はとっくに漏れていたのです。建屋が吹っ飛んでいるので、漏れだした冷却水から出る放射能を遮るものはない。炉心に突っ込まれている燃料棒よりも使用済み燃料棒のほうがはるかに強い放射能を持っているけれど、それを沈めて冷却しているプールの水も循環せずに沸騰 or 抜けてしまっている。この状況の中で、自分はどう動くべきかを冷静に考えるしかありません。放射能漏れピーク時を過ぎれば、放っておいても漏れる量は減っていくはず。第一原発はそのまま廃炉作業に移行します。それまでの持久戦です。
日本人は蛇口をひねれば飲める水道水を持っていながらわざわざ高い金を出してペットボトルいりの水を買っている。天然水とか自然水とか謳っているものもあるが、そもそも天然、自然じゃない水なんてあるのか? 不自然水とか?
なんとかの霊水とか龍神水なんてのも売られているけれど、龍神さまをペットボトルに入れるんじゃない、と言いたい。
その感覚で「汚染水」と言い続けていると、聞かされている人たちは「水」の問題だと勘違いする。
水はもともとあった。あってあたりまえ。なければ困る。
そこで毒物を作ったり持ち込んだりすることが問題なんであって、あれは「汚染された水」の問題ではない。僕は「海ごろし」と呼んでいるけれど、そうすると日本酒「鬼ごろし」がかわいそうかもしれない。
「汚染水」と呼ぶことで問題が矮小化されていることが腹立たしい。
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『3.11後を生きるきみたちへ 福島からのメッセージ』(岩波ジュニア新書 240ページ) 『裸のフクシマ』以後、さらに混迷を深めていった福島から、若い世代へ向けての渾身の伝言 第1章 あの日何が起きたのか 第2章 日本は放射能汚染国家になった 第3章 壊されたコミュニティ 第4章 原子力の正体 第5章 放射能より怖いもの 第6章 エネルギー問題の嘘と真実 第7章 3・11後の日本を生きる ■今すぐご注文できます ![]() ⇒立ち読み版はこちら |
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『裸のフクシマ 原発30km圏内で暮らす』(講談社 単行本352ページ) ニュースでは語られないフクシマの真実を、原発25kmの自宅からの目で収集・発信。驚愕の事実、メディアが語ろうとしない現実的提言が満載。 第1章 「いちエフ」では実際に何が起きていたのか? 第2章 国も住民も認めたくない放射能汚染の現実 第3章 「フクシマ丸裸作戦」が始まった 第4章 「奇跡の村」川内村の人間模様 第5章 裸のフクシマ かなり長いあとがき 『マリアの父親』と鐸木三郎兵衛 ■今すぐご注文できます ![]() ⇒立ち読み版はこちら |
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