のぼみ~日記 2015

2015/04/13

先立つミュージシャンたち ガロ

いくつか前の日記の冒頭に載せたガロの動画、あの日の本論とはずれていたので、削って、改めてここに独立した話題として載せることにした。

別件で調べ物をしているとき、ガロの堀内護さん(マーク)が昨年12月9日に胃癌で亡くなっていることを知った。
ガロといえば、トミー(日高富明)氏が自殺したのはいつだっただろうか。
調べたら1986年9月のこと。もう30年近く前のことだ。
Wikiを見ると、当初は自殺と報道されたものの、事故死の可能性もあるらしい。

ガロが諏訪湖だかどこだかの音楽祭で演奏した『青い目のジュディ』をFMエアチェックして持っていた。カセットに入れてあったのだが、だいぶ前に紛失。今もどこかにあるはずだと、探してみたりすることがあるのだが、見つからないのでほとんど諦めていた。
マークも亡くなったと知って、駄目元でYouTubeで「ガロ 青い目のジュディ」で検索したら、なんと動画がアップされていた↑
かなりきれいな映像でびっくり。

ガロも、考えてみると不幸なバンドだったかもしれない。ギターフリークの二人と、ギターがうまくない、だみ声の一人が組んだ3人組。ヒットした『学生街の喫茶店』を始め、知られている曲のほとんどは当時の売れっ子作曲家、作詞家が提供したもので、彼らのオリジナルはアルバムには収録されたものの、どれもCSNのコピー色が濃厚だったりして、ヒットはしなかった。
例えば『時の魔法』や『暗い部屋』(堀内護・作詞作曲)は『青い目のジュディ』の影響を強烈に受けているし、他にも、ああ、これは『Helplessly Hoping』だな、これは『Carry On』だな、『Teach Your Children』だな、『Find The Cost of Freedom』のイントロそのものだな……などなど、CSNの元歌?をすぐに連想できる曲がいっぱいあった。
CSN(Crosby,Stills & Nash)が始めたと言われている「アコースティックロック」の衝撃は大きくて、アメリカでもその名もAmericaというバンドが放ったヒット曲『Horse with No Name(名前のない馬)』などはCSNの影響をすごく受けていた。
かく言う僕も、一時期は夢中になっていたし、自分の曲作りへの影響も大きかった。特にクロスビーが多用したEm9を基調にした奏法は今でも自分のギタープレイの基本のひとつになってしまっている。

↑これは元祖のほう。伝説のWood Stock (1969)の演奏


↑これは1990年。クロスビーが相当太ってしまったけど、これでもすでに四半世紀前。スティルスのギターが渋い!


↑これは2012年。つい3年前。一時期スティルスも丸々と太っていたが、だいぶダイエットしたみたい




不思議なことに、音楽的にも芸術的にも頭抜けていたPaul Simonの全盛期の作品よりも、どこか荒削りながらかっこいいStephen StillsやEm9べったりで作っていたDavid Crosbyの曲のほうが、歳をとってからは懐かしく思い出されて、何度か聴き返した。
車の中で聴くためのテープ(今はMP3だけど)にも、S&Gは入れてなかったけど、CSNや初期のオフコース(PPMのコピーやバカラック、ビートルズなんかを歌っていた頃)のライブ演奏なんかは、音質が悪くても入れていた。

それにしても、CSNが全員まだ生きているのに、CSNに憧れて結成したガロが二人ももう亡くなっているというのは切ない。

ローラ・ニーロのアルバム、まだ知らないのがこんなにあった

若い頃夢中になった、あるいは影響を受けたミュージシャンが若くして亡くなったといえば、なんと言ってもローラ・ニーロがいちばんショックだった。


これは1969年。テレビに初めて登場したときのローラ。1947年10月生まれだからまだ21か22歳


↑あのエルトン・ジョンが、ローラ・ニーロの『New York Tendaberry』に影響を受けて『Burn Down The Mission』を作ったと言っている。
『ニューヨーク・テンダベリー』は僕もすごい影響を受けたアルバム。

エルトンは演奏のテンポが自在に変わるレコーディングについて語っている。当時も今も、スタジオレコーディングではリズムマシン(業界用語では「ドンカマ」)やドラムマシンが刻むビートを聴きながらミュージシャンが演奏するというスタイルが主流。だから、曲の最初から最後まできっちりテンポが同じというものが多い。
でも、ローラのアルバムに収められた曲の多くは、うねるようにテンポチェンジを繰り返す。
それとテンションコードの多用。
9thだけでは飽きたらず、2度、4度、6度といった、ポピュラー音楽ではあまり使われないようなテンションノートがいっぱい入ってくる。
そのテンションノートの響きで脳が刺激されて、絞り出すようなメロディとハーモニーが生まれる……という曲作り。『ニューヨーク・テンダベリー』はその典型だろう。

自在なテンポチェンジやジャズピアノのテイストを取り入れた曲作り、演奏、そして天才肌という点では、矢野顕子もそうかもしれないが、矢野顕子が陽だとすればローラは完全な陰で、対照的だ。

ローラはとにかく天才型のソングライターで、歌詞は神がかっていて英語ネイティブでも意味不明だというものが多いし、メロディは奔放で自在。それでいて透明で突き抜けている。ポール・サイモンみたいに「まとめ上げる」タイプじゃない。
ただ、唱法がエキセントリックで声もキンキンしていて安らげないから、好き嫌いがはっきり分かれてしまうのだろう。
実際、ローラの作品は自分で歌ったものよりカバーされたものばかりがヒットしている。
And When I Die は Brood Sweat and Tears や Peter Paul & Mary
Stoney End は バーブラ・ストライザンド
Wedding Bell Blues、Stoned Soul Picnic 、Sweet Blindness 、Save the Country などはフィフス・ディメンション
Eli's Coming はスリー・ドッグ・ナイト
Emmie は フランク・シナトラ……などなど。

でも、僕はこれらのカバーバージョンの多くはそれほど好きではない。(Peter Paul & Mary の And When I Die だけはコピーもしたのでローラ本人が歌うバージョンよりも思い入れが深いけれど)
どの曲も、ローラが歌っているオリジナルバージョンに比べると魅力というか「説得力」が落ちる。
なぜだろう。
ユーミンの曲も、英訳されてアメリカ人女性ヴォーカルグループに歌われたりしていたが、全然よろしくなかった。ユーミンは決して歌がうまくはないけれど、それでも本人が歌うバージョンがいい。
『卒業写真』なんかは、ハイファイセットという日本でも有数の「うまい」グループが歌ってヒットしたが、あれとて僕はユーミンが歌ったバージョンのほうが好きだ。
ユーミンの場合、メロディが素晴らしいのに、カバーしている歌手たちがみな、こねくり回したり、「うまいでしょ」唱法で歌っていて、メロディのよさを汚しているところがある。
でも、ローラ・ニーロの場合は、メロディだけを抽出してきっちり歌い上げたり演奏したりしても、オリジナルの不思議なパワーが削がれている感じがする。
やはり、ローラ・ニーロはただのソングライターではなく「アーティスト」なのだ。
生き様がビシビシ伝わってくる歌唱や演奏。そこに大きな魅力がある。
声がキンキンしていて辛いなあと思うことはよくあるが、それでも「ローラ・ニーロ」全体がひとつの作品なのだろう。

そもそもローラの書いた歌は、たくさんカバーされ、ヒットしたけれど、普通の人にはまず歌えないようなものが多い。万人に愛されて歌い継がれるというようなものではない。

一方、僕が昔から追い求めていたのは、そうした「アーティスト」的な音楽生活ではない。
純粋にメロディメイカーとしての音楽人生を求めていた。
自分よりうまい誰かに演奏してほしい、歌ってほしいと、常に思っていた。
今もそうなのだが、還暦を迎えて、微妙に気分が変わってきた。
自分にしか演奏できない音楽があってもいいじゃないか、と。


十代のときに名曲『And When I Die』を書いた天才ローラ・ニーロは、突然、49歳の若さで亡くなった。
日本に2回ほど来て、渋谷のあまり大きくないホールでコンサートをやったことがある。2回とも終わってから知った。訃報を聞いたのもそれからあまり経たない頃。ものすごく悲しく、悔しかった。



久しぶりにローラ・ニーロを検索していて、Billy Childsというピアニスト/アレンジャーが、ローラへのトリビュートアルバムを作っていることを知った。


去年のモンタレー・ジャズ・フェスでピアノ独奏で『ニューヨーク・テンダベリー』を演奏している動画も見つけた。
というわけで、ものすごく久しぶりに(何年ぶりだろうか)CDを立て続けに3枚も注文してしまった。

『ニューヨーク・テンダベリー』に強い影響を受けて書いた『作品A』という作品がある。19歳か20歳頃の作品。
ちゃんとした録音は残ってない。アンガジェの解散コンサートや、三井物産だか三菱商事だかの独身寮のお祭りに呼ばれて歌ったライブの録音が残っているが、どちらも出来がよくない。
この日記をUPした後で、ちょっとギター弾き語りでできるかどうかやってみようかな。


↑オリジナルバージョン 
今回注文したCDは↓この3枚。明日届くはず。楽しみ。



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