安保法制を巡って、その反対派が国会議事堂前でデモを行いました。過去最大規模だそうです。(略)
このデモの結論は明らかです。
この法案は可決されます。間違いありません。
そして、このことは国会議事堂前に集まったすべての人は皆知っているはずです。
この類のデモというのは基本的に議会制民主主義の中では最初から敗北しています。法案を提出した自民党が議席の絶対多数をもっているのですから当たり前です。そしてそれでもやるというのは「敗北主義」です。
ここでいう敗北主義とは、負けるとわかっていてもやらねばならないという態度のことです。なぜならばそれが次につながるからです。そうすると、この敗北主義というのは負け方が重要なことになります。いかにうまく負けるか、それが焦点です。
ここで負けても実は最後には勝っている・・・それを目指すのが敗北主義の目的です。議会制民主主義を肯定するならばそれは当たり前の態度です。ここで安保法案が成立しても、次の選挙で勝てばいいだけですから。よって負け方が次につながらないと如何様にもならない。
ところが往々にして敗北主義なのに本気で戦って敗北してしまう人がいるのは政治の世界ではよくあることです。勝てるはずもない戦いに勝とうとすれば、それだけ傷も深くなる。もちろん動員のために、タテマエとして勝利を目標にするのはあるでしょう。だが、それをタテマエだとわからなくなってしまう人がいるのもよくあるパターンです。
ホリエモンという人が、デモに参加する学生は自分だったら採用しない、思想が理由ではなく仕事できなそうだから・・・みたいなことを言ったと聞きます。これはこの事を指します。敗北主義を本気になってやって、それ自体が何事かを成すと思いこんでいるのは、バンザイ突撃を繰り返して死屍累々の無惨を晒した日本軍と同じだと私も思います。
(略)
国会前に集まり抗議するのは、首相官邸前で抗議するのに動員をかけた3.11以降の反原発運動からの流れです。この首相官邸前抗議が、これまでの市民運動のスタイルから歴史的に隔絶されたものというのは気づいている人は多いと思います。それは思想もさることながら、動員のスタイルや人的リソースにまで及びます。
国会前のみなさんのなかには、現政権を指して「ファシズム」という人がいる。自分は必ずしもそうは思いませんが、実際にそうだったとしましょう。
そうすると、まだマルクス・レーニン主義の革命フェティシズムに染まっている人は、権力を倒せという。国家は一部の人に支配されていると思いこんでいるからです。
しかしファシズムというのは一部の人が大多数を支配するようなものではないのです。議会制民主主義の果てにファシズムがあります。リベラリズムの結論が18世紀にはナショナリズムで、それをさらに突き詰めたのがファシズムです。
ファシズムの正体とはそこいらにいるオッサンオバサン有権者のことです。
スーパーで野菜が高くて困るとか、ダンナの給料の上がり下がりに一喜一憂したり、ランチの値段を比較しながら美味い店を探して昼休みにオフィス街をうろついたり、ヤフーニュースを読んで単純な義侠心から韓国けしからん!と思っていたり、中国の株式市場の動向を不安そうに見つめていたり、ニッポンは外国でこんなに評価されているというテレビを見てちょっと嬉しくなったり、3.11の後に自民党じゃなきゃやっぱりダメだと民主党から鞍替えしたりする人です。国会前でまた左翼が騒いでいると思っている人もそうです。
議会制民主主義を肯定していくならば、このオッサンオバサンたちを味方に引き入れるしかない。それに国会前の敗北主義がプラスになるかならないか。問題はそこの部分なのです。
(略)
60-70年代の新左翼の前衛主義(少数派でも正しいことを言っている自分たちが正しく、わからない人たちを先導していくという考え方)は大失敗しました。だが、陣地戦に入り、自分の生活範囲内で地道に活動してきた無党派は確実にリベラルとして存在し、勢力として今でも強いです。
ここで負けても実は最後には勝っている・・・それを目指すのが敗北主義です。議会制民主主義を肯定するならばそれは当たり前の態度です。よって負け方が次につながらないといかようにもならないのです。
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