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のぼみ~日記 2015

2015/09/12の7

 川内村野良猫日記(9)

ネコ画像で2011年の夏を振り返る (承前)



夏になり、周囲では除染バブルが始まっていた。
放置した田畑に伸びた草を刈る作業にも金が出るというので、農家の人たちが少しずつ浮き足立っていくのが分かった。
「精神的賠償金一人月10万円」云々という話も、村民の心をかき乱していた。でも、住民登録をしておらず、村が避難命令を出す前にすぐに避難し、逆に避難命令が解除されない村に戻って普通の生活を再開していた僕は、まだこの時点で賠償金や除染バブルのことをよく知らなかった。
それが、散歩をしてすれ違う村民の立ち話を耳にするにつけ、なんか変だな……と感じるようになる。
移住してきた友人たちはみんなへんてこな金の流れややっつけ制度について知っていた。
だんだん分かってくるにつれ、ああ、この村にいてはいけないのだと気づいた。
大きな金が流れ込んできて、みんなそわそわしている。口をつぐみ、自分から動かないようになっている。下手なことをするともらえるものがもらえなくなるという気持ちで毎日行動するようになってしまっている。
こうなってしまったら、もう何もできない。僕のような人間がここにいるのは邪魔なだけだし、今度こそ自立した地域経済を……なんていうのは、はた迷惑なお題目にしか聞こえないだろう。

自分にとって少しでも理想的な人生を……と、この過疎の山村にやってきた人たちは、みな感じていたと思う。でも、お金にまつわることとなると、ひとりひとり事情が違うし、下手なことは言えない。
こうして、友人同士のコミュニケーションでさえ、ぎくしゃくする場面が出てくるようになった。

村を出ようと真剣に考え始めた。
金の竜巻に巻き込まれる前にここを出て、少し距離を置いて考えよう。急いだほうがいい。どんどん変なことになっていく。
村の人たちとの関係をこれ以上微妙なものにしたくない。いい想い出を持って出て行けるうちに行動しよう。

チャッピーとの散歩や野良猫の世話をしながらも、僕と助手さんは移転先を探し始めた。
移住者仲間にも声をかけて、移住先候補地の情報をなるべく共有しようとした。一緒に物件を見に行ったりもした。
でも、どこに行っても、今いるこの家、この家の周囲の環境より魅力的な場所は見つからなかった。
家に戻ってきて、「やっぱりここがいちばんいいね」と言いあって酒を飲み、眠る。
夏の後半から秋にかけて、そんなことを何度も繰り返した。


2011/07/27 網戸を挟んでのぼるとしんちゃんのこどもたち。



白い子ネコ2匹のうち、最初にしんちゃんと現れたボルグはいなくなった。これはジョコ。



網戸にとまっている蛾を見つめるのぼると、そののぼるを見つめるジョコ。



蛾を採ろうとするのぼると、それを見ているジョコ



三毛っぽいのはじんちゃん、グレーのシマシマはみみちゃんと名づけたのだが、じんちゃんも消えてしまった。



雄叫びを上げるジョコと、どしたの? という顔で見ているのぼる



バッタを見つけたジョコ。後ろで見ているみみちゃん。みみちゃんはとてもおとなしい。



狙いを定めて……



捕まえた! 外のネコたちは蛾や昆虫も積極的に食べていた。



厳しい生存競争をしている外のネコたちに比べて、ほんっとにおまえらは……



……いいなあ……








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「福島問題」の本質とは何か?


『3.11後を生きるきみたちへ 福島からのメッセージ』(岩波ジュニア新書 240ページ)
『裸のフクシマ』以後、さらに混迷を深めていった福島から、若い世代へ向けての渾身の伝言。
複数の中学校・高校が入試問題(国語長文読解)に採用。大人にこそ読んでほしい!

第1章 あの日何が起きたのか
第2章 日本は放射能汚染国家になった
第3章 壊されたコミュニティ
第4章 原子力の正体
第5章 放射能より怖いもの
第6章 エネルギー問題の嘘と真実
第7章 3・11後の日本を生きる

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裸のフクシマ  『裸のフクシマ 原発30km圏内で暮らす』(講談社 単行本352ページ)
ニュースでは語られないフクシマの真実を、原発25kmの自宅からの目で収集・発信。驚愕の事実、メディアが語ろうとしない現実的提言が満載。

第1章 「いちエフ」では実際に何が起きていたのか?
第2章 国も住民も認めたくない放射能汚染の現実
第3章 「フクシマ丸裸作戦」が始まった
第4章 「奇跡の村」川内村の人間模様
第5章 裸のフクシマ
かなり長いあとがき 『マリアの父親』と鐸木三郎兵衛

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