ちょっと日記が滞っていたのは、この1週間、クルマとべったりつき合っていたから。
先日(8月2日……もう3か月以上前のことか……)の雹の被害を保険屋さんに申告したところ、クルマを見に来て「全損」の判定。普通に走っているし、パッと見ただけではよく分からないのだが、雹が直撃して屋根からボンネットからドアから全部に渡って凹みができたわけで、これを直すとなると軽く80万円以上はかかるという。
それはもう車両保険の上限額を超えているので「全損」という判定なんだそうだ。

で、全損ということは、このクルマについている車両保険はもう使えなくなるけれど、全額下りるということで、そんな大金を使って修理する意味があるのか……と悩むことに。
で、直さないことに決めた。
その代わり、X-90のほうは、諦めていたのだが、ボンネットもトランクカバーも新品部品を取り寄せても4万いくらと3万いくらだというので、思いきって直すことにした。
なんでこんなレアな車の部品が新品で手に入るのか……。どうも、今はコンピュータのデータさえあれば、工場で1つ1つ新しく作れてしまうらしい。
届いたボンネットとトランクを見たが、これだけの鉄の塊を一から作り直して3万いくらとか4万いくらって、ずいぶん安いなあと思う。
これだから板金という技術が廃れていくのだね。人間が鉄板を叩いて打ちだしていく手間賃より新しく作ってしまったほうが安いという時代。いいんだか悪いんだか……。
まあ、シンプルな鉄板だから、つぶしてもまた鉄に生まれ変われるけどね。
というわけでX-90は長期入院中。
で、直さないと決めたプジョーだが、このクルマとはもう14年のつき合い。走行距離も10万キロを超えている。
中越地震の前からだから、つぶれた越後の家から荷物を運び出すときも、原発爆発で川内村の家から避難するときも、引っ越し先の物件を探してあちこち回ったときも、そして川内村の家を売ることになって、雪降る中を何往復もして荷物の運搬やら片付けをしたときも一緒だった。
本来お洒落なクルマのはずが、災害地域との往復とか荷物をぎゅうぎゅうに詰め込んでの引っ越し作業とか、泥臭い仕事ばかりさせてきた。
故障も多く、なんでこんなところが壊れるの? という経験も何度もした。
買ってすぐおかしいと気づいたのはウィンカーレバー。ステアリングを戻すと戻した方向にウィンカーレバーが引っ張られるように入ってしまい、勝手にウィンカーが出る。
保証期間内なので交換してもらったが、その後、案の定リコールになった。リコールになったのでもう一度交換するというのでさらに交換。
その後、8万キロくらい走ったあたりでもまたおかしくなった。
そのときはオートマチックがおかしくて、エンジン始動から1km走ったところで必ず「オートマチックフォールト」のエラー表示が出て3速固定されてしまうという現象が1年くらい続いていた。一旦車を停めてエンジンを再始動するとその後はずっと大丈夫なので、それで対応してきたが、あまりにも頻発するので郡山のプジョー(川内村からいちばん近いプジョーディーラー)に持ち込んで直した。センサー異常らしいということで、AT本体は交換しないが、そこにつながっているユニット全部を交換ということで十数万円かかった。
郡山のプジョーに持ち込む日、突然にATレバーがプラプラになるという信じられない故障も起きた。なんか裏側のビスが1本緩んで落ちたらしくて、ATレバーが固定されない。おかげで、カーブを曲がるたびに遠心力でポジションがマニュアル操作側に入ってしまい、1速固定(これは怖い。ショックも大きい)になってしまう。ステアリングを切るたびに左手でATレバーを引き寄せながら曲がるというアクロバティックな運転をしながら郡山まで行った。
その後は9万キロあたりでイグニッションコイルの故障で点火プラグが2本吹っ飛び、4気筒エンジンが2気筒になるという、これまた国産車ならありえないようなトラブルに見舞われた。家を出た直後におかしくなったので、2気筒のままゆるゆると坂を上り家に戻れたからまだよかったが、旅先でそんなことになったら悲劇だった。
ATのセンサー異常もイグニッションコイルが壊れるのも、307では有名な故障らしくて、ネットで検索するといっぱい出てくる。
対処は、ATオイルを汚れきらないうちに交換すること、イグニッションコイルはタイミングベルトと同様に5万キロあたりで思いきって交換してしまうことだろう。ATオイルはなんでもいいわけではないから、銘柄指定で交換する。ASHのがよいらしい。
オートバックスやイエローハットなどのカー用品店では会社のATF交換はやってくれない。「怖くてできない」と言う。
相当汚れてしまったATFを一気に新しいオイルに交換してしまうと、こびりついていた汚れの塊が出てきてそれが詰まって深刻な故障につながることがあるらしい。心臓近辺の血管にこびりついていた血の塊が脳に行って、一気に脳卒中になるのに似ている。だから、そうなる前に少しずつ交換しておかないといけない。
幸い、我が家の307は8万キロあたりのAT周り交換作業のときに一度ATFを交換しているので、その後交換したときはきれいだった。
あとは、エアコンが配管が錆びてガス漏れして本体ごとダメになって全交換。これも10万超えの修理になった。
しかしまあ、そういうのをいろいろ経て、ここ数年は絶好調。ただ、プジョーのAL4という4速オートマチックは10万キロを超えたあたりで一度は壊れるというし、何度も経験した引っ越しでは、荷物があまり積めないという欠点に泣いてきた。
これから先、親が歳を取ると、また荷物を運んだり人を乗せたり、下手すると車椅子を載せたりすることが増える気がする。百合丘を空っぽにしたときに中古のバネットバンを買ったときみたいに増車する余裕はないし、壊れたときは次はステーションワゴンタイプにするかなあ……と前から考えていた。
新車は買えないし、すぐ壊れるのも困るので、次はぐっと涙を呑んで国産車……となると、レガシーは中古でも高いし、プレマシーあたり? なんか気持ちが落ち込むなあ。だって、絶対に走りはガックリ落ちるもの。
307は14年乗り続けている今でも、運転するたびに楽しくなる。そのくらい走りは素晴らしい。特にハンドリングは国産車とはまったく別物。ステアリングを1cm切っただけでスッと車体が動く。この感覚を失うのは寂しすぎる。乗り換えても、ああ、プジョーのときはよかった……って、何度も思い出すことになるだろう。
……で、ネットを見ていたら、年式の新しい、5万キロも走っていないような後期型307が30万円台とかで売られている。え~? そんな値段なの? 買うときは200万円を軽く超えてたのに……。
で、さらに見ていくと、307SWという、ワゴンタイプも同じように安く出ている。どういうわけか、前期型307の最後くらいに発売された特別仕様車(ローランギャロス仕様)が2台出ている。6万キロ超えの28万円と4万6000キロの35万円。
そうか、そういう手があるか! と気づいた。
このクルマ、発表当時、いいなあと思いつつも、300万円を超える価格や、その当時はステーションワゴンタイプに乗ることは考えていなかったのでそのまま忘れていた。ただ、色や内装はとても惹かれた。
この緑色は、307を買うときにいちばんほしい色だったのだが、在庫がなくて半年待たされると言われて、悩んだ末に紫にしたという経緯がある。あれが10年落ちで突然10分の1の値段にまで下がるのか……。う~~む。
同じ307だから、冬タイヤセットも今のがそのまま使える。どこが壊れるかも分かっているから対処の方法も知っている。国産車では使うことのない特殊工具(星形ドライバーとかタイヤ交換の際にホイール穴に入れるロッドとか)もすでに持っている。オイルも何を使えばいいか分かっている。走りは少し重くなるだろうが、まあ、歳も取ったのでそれはそれでいいだろう。荷物も今までよりは倍近く積めるんじゃないか……。
なにしろ、下りた保険金で買えてしまう。そんなんでいいのか? と思いつつ、とりあえず見に行くことにした。埼玉県まで。
……で、第一候補のは、試乗させてもらったところATが変。走り出すときに一瞬ギアが抜けたような感じになる。走行距離は短いのだが、よほど荒っぽい乗り方をしていたのか、それともハズレだったのか……。
他にも気になるところがいくつかあったのでパス。
第二候補を見に行こうと店に電話すると……出ない……。ん? とサイトをよく見ると水曜日が定休日。まいったなあ。また出直す気力はないなあ。
せっかく埼玉まで来たのだから、他にも見ておきたいクルマはないかと、iPod touch6でリアルタイム検索すると、なんと同じローランギャロス仕様の307SWがもう1台あるではないか。場所もそんなに離れていないので見に行った。

ところがそこはポルシェやベンツなど、高級外車ばかり置いてある大きな店↑。およそ場違いというか、一生縁がないはずの場所。まいったなあ……と思いつつも試乗させてもらったら、これがとってもいい。今乗っている307とほとんど変わらない乗り心地。ATもまともだし、加速もいい。
ローランギャロス仕様自慢の革の内張がダッシュボードのど真ん中で大きく剥がれているのが残念だが……。
最初の店より走行距離はいっているのだが、それでも5万キロ台。今の307の半分。年式も4年新しい。
お値段は37万5000円と、ちょっと高いのだが、それよりも高級車専門店だけあって、点検整備代やらが高い。でも、クルマがいいので……悩んだ末に決めてしまったのだった。
それが10月21日のこと。

ホイールも同じ兄弟車。うちのは出てすぐに買った初期ロットだが、これは後期型に切り替わる直前の、前期型の最終ロットくらい
苦労を共にしてきた愛車が傷ついたからといって見捨てて、若い子に乗り換えるみたいで、罪悪感がハンパない。人として許されないんじゃないか、なんて思ったりする。
でも、こんなときだからこそ、前向きにというか……。
まあ、いいや。言い訳は。
2015/11/06
……というわけで、今日は納車の日。苦楽を共にした紫色の307とドナドナ、緑色のローランを迎えに再び埼玉へ。
高速を走っていても、10万キロ超え14年経過の307は悲しくなるほど絶好調。まるで「まだこんなによく走るのに捨てるのかよ」と訴えているようだ。
許してくれ……う、う、う……。