●歳を取ると時間が速く流れる
歳を取ると、若いときよりも時間が速く流れていくように感じます。
この現象を「心理学的に」説明しようとしたのが、19世紀のフランスの哲学者ポール・ジャネが考えたという「ジャネの法則」です。
「50歳の人間にとって1年の長さは人生の50分の1だが、5歳の子供にとっては人生の5分の1にも相当する。だから、50歳の人間にとっての1年は5歳の子供の10分の1に感じられる」といった説明がなされています。
なるほど。そう大きくは外れてはいないかもしれません。
前章で「我思うゆえに我あり」的なエゴイズムを基準に考えていくと書きましたが、その意味では、人間にとっての時間は、その人の一生という時間のモノサシで計るしかありません。生まれる前の時間や死んだ後の時間は「我」が知覚しようがないわけですから。
この「その人が生まれてから今までの時間が刻まれたモノサシ」を、仮に「時間モノサシ」と呼ぶことにします。
時間モノサシは長くなっていくわけではなく、あらかじめ決まっている自分の人生の長さを表すモノサシで、一定の長さだとします。時間モノサシの長さが50センチであれば、10歳の子供が持っているモノサシの1年は5センチですが、50歳の人の1年は1センチしかない、というわけです。
別の言い方をすれば、「人間にとっての時間の速さは人生経験の量と相対性の関係にある」ということです。
であれば、実際にはもっといろいろな要素が絡んでくるはずです。
私は小学校6年間と中学・高校(男子だけの一貫校でした)の6年間がものすごく長く感じましたが、それは「早く大人になりたい」と思っていたからです。
特に中学・高校の6年間は毎日が苦痛でしたから、一日がとても長く感じました。
なんでこんなつまらない授業をじっと聴いていなくてはいけないのだろう。この時間にもっと他の有意義なことができるはずだ。なんで女の子のいない環境で6年間も耐えなければいけないのだろう。男子校に入ってしまったのは一生後悔してもしきれない失敗だった……と、毎日嘆いていました。
卒業アルバムの一言欄に「退院です」と書いて物議を醸したりもしたのですが、本当にあの6年間は長く感じました。多分、刑務所で刑期の残りを数えながら暮らす囚人も同じような時間の流れを感じているのではないかと思います。
その6年間があまりに苦痛で長く感じたので、大学に入ってからの時間はあっという間に感じました。
毎日キャンパスの中で素敵な女の子を探しては追いかけ、プロ作曲家としてデビューするためにいろいろなことに挑戦して、そのための資金を作るために夜は家庭教師のアルバイトをハシゴして……。
それまでとはまるで違う速度で時間が流れていきましたが、その数年間を60代になってこうして振り返っている今は、とても長い時間だったようにも感じます。
時間の流れ方は、脳に格納されている過去の記憶・情報を振り返ったときに、どのくらいの長さに感じるかによっても違う、という説もあります。
楽しかった時間、充実していた時間は、そのときはあっという間に流れますが、後になって振り返ると、充実していた分、長く感じるのでしょう。
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