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のぼみ~日記2016

2016/06/05

アントニン・レーモンドと東京大空襲の焼夷弾


旧イタリア大使館別荘 2016.06/03撮影

ところで、先日訪ねたイタリア大使館別荘を設計したのはチェコ(当時はオーストリア=ハンガリー帝国)生まれで、後にアメリカ市民権を取ったアントニン・レーモンド(1888-1976)で、彼にはさらに興味深い逸話があるのでここにまとめておこう。

レーモンドはフランク・ロイド・ライトの弟子で、1919年、帝国ホテル設計施工の助手としてライトと共に来日してから日本との関係ができる。
1922年に独立し、レーモンド事務所を開設。以後、日本に数多くの建築を残している。我が母校・上智大学の旧6号館、7号館も作品リストに入っていてちょっと驚いた。

レーモンドの生涯で最も興味深いのは、第2次大戦中アメリカに戻っていたとき、ユタ州の砂漠に東京下町の木造家屋の続く街並みを再現し、焼夷弾による東京大空襲の実験に協力したという件だ。
2005年のしんぶん赤旗にまとめた記事が載っている。

この話は知っていたのだが、その設計者とこのイタリア大使館別荘の設計者が同一人物だということは知らなかった、というか、見過ごしていた。

赤旗の記事は「東京大空襲・戦災資料センター」(早乙女勝元館長)に提供された英文資料が元になっている。
この資料は米国・アイオワ大学の日本研究者、デービッド・タッカー氏が米国国立公文書館などにあった資料を複写して、2003年に同センターに提供し、同センター顧問で建築家の三沢浩氏が翻訳、研究にあたった。
その三沢氏は、奇しくも戦後、レーモンド事務所に入所したレーモンドの弟子。

これについてさらに突っ込んだ考察をしている設計士・佐々木繁氏のブログも実に興味深い。

内容をまとめてみると……、


前述のブログの主である設計士・佐々木繁氏は、
アントニン・レーモンドは、完成した自身の作品の図面と写真をたまに発表するだけで、解説文や講演などを通じて自身の建築思考を語るようなこともほとんどなかった。日本人との接触は、限られた必要最小限の範囲だけにしていた、といった印象。
日本社会に深く関わる者も多かった明治時代の『お雇い外国人』とは随分違っている。
一夜にして10万人余が殺された東京大空襲のことは、ずっとレーモンドの胸にあったのだと、私は思う。

……と結んでいる。

東京大空襲を指揮したカーチス・ルメイのことなども前に読んで知っていたが、今回、ひょんなことから思い出すことになった。

歴史的建造物というのは、まさに歴史を振り返るためのものなのだなあと実感できた。










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