2016/09/16-19
買い物依存症とアルツハイマー型認知症の合わせ技の凄まじさ
親父の介護日記の続き。
「買い物依存症」という病気については、日本ではあまり知られていないようだが、アメリカでは全人口の6%が程度の差こそあれ、この病気に冒されているという話もある。
親父はもともと浪費癖、高級品好き、買い物に快楽を感じるという気質を持っていたようだが、それが退職後はストッパーが外れたようにエスカレートし、お袋の死後、自由に金が使えるようになってからは完全に歯止めが効かなくなった。
お袋が死ぬ前、つまり70代の頃には、認知症の症状が認められたが、いわゆる「まだら惚け」状態で、妙にしっかり話をするときもあるから、身内以外の人はほとんど気づかず、「高齢なのにしっかりしている」「知的で魅力的なおじいさん」という印象を持たれ、愛されていたようだ。
親父は9月16日に退院し、そのまま介護福祉施設に入所(仮入所)した。
そのために骨をおってくださったのは親父が所属している短歌のサークルの友人で、あかの他人のために施設の紹介や取り次ぎなど、驚くような活躍をしてくださった。この助けがなければ、親父は路頭に迷っていた。
親父の部屋を明け渡すために何度も何度も日光←→横浜を往復する日々が続いていた。
片道およそ180km。道が流れていても、この歳だと運転は疲れる。ましてや首都高がまったく動かないような大渋滞に何度も巻き込まれ、片道4時間以上かかることも数回。日光に帰るときは疲労困憊で、とにかく事故だけは起こすまいと気を張って運転。家にたどり着いたときは「ああ、生きてたどり着けた~」と心の中で呟く日々。

大きなほうの電気スタンドは、雛人形の物撮りのときの照明に使えるかな……と思っていたが、気づいたら他のゴミと一緒に撤去されていたので、なかったことにしよう


頑張って分別したのだが、これでもやはり「混載ゴミ」とされてしまった

400リットルクラスの冷蔵庫はバリバリ現役だが、金を払って処分

最後まで残ったダイニングテーブルと椅子は、悩んだ末、ばらして運び出した。少しでも処分ゴミを減らすのが目的だが、結局は使えないまま粗大ゴミとして保管し続ける可能性も高い

ベランダに雨ざらしで放置されていた「初代テーブル」の残骸。大きな一枚板の高級家具だが、大きすぎて使いこなせず、なんと、天板を真っ二つにしてゴミとしてベランダに出していた。リサイクル屋を呼べば金を払って引き取ってくれただろうに、どこまで疲れさせるのか……。他にも家具がいっぱいで、ばらして板とパイプ類に分ける作業だけでもそうとう時間がかかった

ひとり暮らしの老人がなぜ10も20も鍋釜がひつようなのか……。しかも、炊飯器の内釜だけあるってなんなのか……と思っていたら、本体は廊下のガスメーター室に押し込まれていた。壊れたとは思えないので、もっと高いやつに買い換えたのだろう

雑誌の山はそのままゴミ。このマンションは3階までが階段なので、とてもこんなものを外まで運び出す気力はない。便利屋に持ち出してもらった。売れるかもしれない本は分類して「買い取り王子」に出したが、おそらく数百円つくかどうかだろう。へたしたらゼロ円だが、金を払って処分するよりはずっといい

これも当然処分。ここにめいっぱい高級ブランド衣料がつまっていた。ほとんど髙島屋で買っていたようで、中には10万円のジャケットとかもごそごそ。それをろくに着もしないのにぽいぽいゴミとして捨てていたそうで、あまりのことに、近所の人が「これは捨てないほうがいい」とゴミ集積場から拾って戻したこともある、とか。タグがついたまま着ていないようなものもたくさん出てきた。これでも「ごっそり捨てた後」だというのだから……たまらんなあ。
Tシャツは300円~500円。ジーンズは2980円が基準で、それを何年も着続けている僕の感覚からすると、この哀しさをどこへ捨てればいいのか……。暗澹たる気持ちのまま片付ける
2016/09/23
ようやく部屋が空になる
「どんなものでも持っていきます」をウリにしている便利屋を呼んで、ようやく部屋を空にできたのは9月23日。
トラック2台、4人でやってきた業者への支払いが約13万円。想定より高かったが、とにかく「一つ残さず片づけます」がポイントで、仕事ぶりは見事だったし、助かった。
しかし、その業者が来てあらかじめ分別したゴミやら家具やら家電やらを運び出す直前になって、近所の人から「ガスメーターボックスの中のゴミも撤去してください」と言われた。え? なにそれ? と、廊下に出てガスメーターボックスらしき扉を開けると……。げ! なんじゃこりゃ。
かなり大きな空間に、ゴミだけでなく、炊飯器やら健康器具の残骸やらこれでもかというほど突っ込んである。
後で聞いたところによると、大家さんの母親がこれを見つけて、いちばん外側にあった大きなゴミ袋2つは撤去した後だという。
便利屋が来る前に見つけられたのが救いだった。

最後の最後に「発掘」されたガスメーターボックス内のゴミ。駄目押しか……

便利屋に現金で13万円の支払いを済ませた後の部屋。ここに写っている最後のものを雨の中、愛車に積み込み、悪夢の部屋を後にした。あれだけくだらないものがあったのに、買って取り付けた最新型エアコンのリモコンはとうとう見つからなかった。「壊れたから捨てた」などと言っていたが、壊れてはいない。本体のスイッチを入れるとちゃんと動いた
ようやく床が全部見えた。この広さ(横に和室6畳も)に「買い物依存症&アルツハイマー型認知症」で次から次へと高級なもの(しかも使わない。同じものをいくつも買う)を買い込んで溜め込まれたのだから、たまったものではない。
部屋に残された昔の預金通帳を見ると(肝心の最後の通帳は捨ててしまったらしい)、お袋が死んだ後はおよそ3500万円くらい口座に入っていたはず。それが7年間できれいに消えていて、最後は100万円の定期預金に食い込んで、普通口座はマイナスになっていた。
もちろん、そうなるまでに何度も何度も親父には注意したが、「分かっている」「大丈夫だ」の繰り返しで、最後は「贅沢なんて一切していない。冗談じゃない!」と逆ギレされる始末。
その時点で、もはや強制執行しかないと僕も覚悟を決め、年金の振り込み口座を別に作らせ、可視化できるようにし、高額な送金などはできないようにしたのだが、その後もATMで毎日のように数万円ずつおろして、家賃も払えなくなり、僕の口座から大家さんに家賃を送金するという状況が続いていた。
こちらは年金ゼロ老人であり、わずかな蓄えを頼りにこれから死ぬまでやりくりしなければならない恐怖を抱えているのに、身内からこんな「攻撃」を受けたらたまったものじゃない。
買い物依存症の特徴のひとつに、「買ったときは快感を得られるが、後で自己嫌悪に陥る」という症状があるらしいが、どうも親父の場合はその自己嫌悪や反省がまったくないようなのだ。
今も施設の中で楽しそうに「あれはスコッチ○○というブランドで、髙島屋で8万円した。あのブランドはなかなかいいんだ」などと話す。聞かされるほうはたまったもんじゃない。
面会に来た友人が「冬物のジャケット、みんな捨てちゃったんじゃないの? まだあるの?」と訊くと、「全部捨てていい。また買うから」なんて答えたそうだ。完全に脳の一部が壊れている。
冷蔵庫の中からシャンプーが出てきたり、下駄箱の中に腐った豆腐があったりといったことはまあ「認知症だからしょうがない」と割り切れる。しかし、買い物依存症との合わせ技はそんな簡単なもんじゃない。あっという間に数千万円が消えるのだから……。
これだけでも死ぬほど疲れるのに、さらに輪をかけて疲れさせてくれたのが、親父が認知症でひとり暮らしだと知った弁護士が接触してきた事件。
これについては次のページで……。

片付けが終わり、施設にいる親父に面会し(そこまでの道が休みの間の雨の金曜日のため大渋滞で動かず、疲労の追い打ち)、夜、東名の横浜町田ICから入って、まだ渋滞している首都高を抜けて、ようやく蓮田SAにたどりつき、本日まともな一食目にありつく。
鶏白湯ラーメン全部のせ、1100円の奮発。このくらい食わなくては身体が持たない。でも、あまりにも疲れすぎていて、味がよく分からなかった。
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