難しすぎて困惑した譜面

掃除していて出てきた古い譜面のコピーの１つは『宝塚記念ファンファーレ』だが、一緒にもう１つあって、『Song for Nanami』とある。
七海というのはてっちゃんの娘の名前。日付が1999年1月8日となっている。
この日にてっちゃんは娘と嫁さんを連れて我が家（タヌパック百合ヶ丘）に遊びに来た。娘が生まれたよ、ということで、じゃあお祝いに一曲……と、前日に思い立って、パパッと書いた曲。
1999年はどん底の時期だったから、録音するまでは頑張れなかった。
明日、来たときに渡さなくてはいけないということで、急いでもいた。
結果、譜面を渡した後は、ずっと忘れていた。
辛うじて渡す前にファックスで簡易コピーをとっておいたのが、さらにコピーされてこうして今まで残っていたわけだ。
どんな曲だったのかなんてまったく覚えていないのだが、機材のテストも兼ねて録音してみようと思い立った。

ところがこの譜面、おかしい！
頭に＃が1個だから、Ｇスケールで書いてあるはずだが……ん？　なんじゃこりゃ？
移動ドで読むと「ドファファファーソファミシーシラ……」
そんな変なメロディであるわけがない。しかもコードと合っているとも思えない。
これは急いで書いたので、キーとメロディをずらして書いたのに違いないと思った。
で、じゃあ、本当ななんのキーだろうとコードと合わせながら探ってみたのだが、分からない。
しばらしくて、よ～く検証してみると、「間違っていない」らしいことが判明した。
要するに、とっても変な曲なのだ。出だしが奇妙。しかもAメロが12小節でBのサビとCの締めは8小節。収まりも落ち着かない。

それでも、譜面に忠実に演奏してみた。

例によって生ギターとEWI USBのViolin音源でやろうと思ったのだが、Amazonに注文してあるFirewireケーブルが届かないので、面倒だからEWI5000に内蔵されている音源をそのまま使うことにした。
オーボエのようなクラリネットのような音源。これはこれでいいか……と。

それにしても変わった曲だ。こんなのを作っていたのだなあ。1999年1月。これからどんどん心を病んでいって、いや、この前だったのかな、鬱病で身体が動かなくなっていたのは。
宝塚記念ファンファーレと同じ時期に作っているというのが面白い。

これを録音する前、『セピア色の恋』もEWIで録ってみた。↑
これは1974年頃の作品。上智大学に入って、毎日、女子学生が眩しくて、目移りして、片っ端からラブレター出してみたり、今思えば、20代の僕はほとんど病人のようだった。
今ならアクティブオタクというか、ストーカーというか……。
そのエネルギーが音楽にも向いていて、これは僕が勝手に好きになった年上の女子学生への恋を歌った曲。何通もラブレター書いて、最後は「恋愛の対象としては見られない」といわれ、自爆した。
ほんと迷惑なやつだったな、俺は。
挿入した『クロスワード』という曲も同じ女性に向けて書いたもので、彼女の名前を歌詞に織り込んでいたりする。だから「クロスワード」。
そういえば、結婚式のときにこの曲を歌って、後から助手さんに「よくも結婚式で他の女性へのラブソングを歌ってくれたわね」と恨み言を言われたっけ。（……たしかに……）

そんなわけで、還暦を過ぎて羞恥心がなくなったとはいえ、さすがに今、オリジナルの歌詞を歌うのははばかられる。かといって、歌詞を書き換える気にもならない。
でも、メロディはきれいだし、今でも好きな曲なのだよなあ……じゃあ、いっそEWIでメロディだけでも残しておくか……と思った次第。

EWI USBのViolin音源とConde Hermanosのフラメンコギターのマイク録りだけでやってみた。ベースも入れようと思ってやりかけたのだが、邪魔だなと思い直してやめた。
EWI USBはKORGのオーディオインターフェイスを介して音を出したのをLogicにオーディオトラックとして録音。前より多少は音質がよくなったかしら？　変わらないか？

今年の目標は「思い立ったらやってみる」なので、とにかく思い立ったら最後までやってみる。今までは思いついても思うだけで行動に移さないことが多かった。頭の中でシミュレーションだけして、ああ、大したことになりそうもないからやっぱやめておこう……というパターン。それでは永遠に何も残らない。
もしかしたら、宮沢賢治の童話のように、死んだ後に誰かが発掘してくれるかもしれない。その希望を胸に秘めて、今年は、出来の善し悪しに関係なく、「とにかく形にして残す」ことを続けていきたい。どこまで続けられるか、怪しいものだけどね。