前回の日記で書いた「ナガミヒナゲシ」の話。実は、調べていくと想像以上に
「騒動」というか「事件」になっていたようで、改めて興味がわいてしまった。
今日のレオの散歩は、レオが遠出したおかげで数キロ歩き回ったが、意識してナガミヒナゲシを探しながら歩いた。
しかし、それらしきものは一か所しか見つけられなかった。

改めてフランスギクやハルジオンの群生ぶりのほうがすごいと分かる

この草地では目を凝らして見たがオレンジ色の花は見つけられなかった

カタバミ(オッタチカタバミ?)は見つかるが……

コンクリートのわずかな隙間から出てくるのはタンポポやスミレで、ナガミヒナゲシが特に強いということもない

シソの間から自生してくるアヤメ

耕作地の縁に生えると危ないともいうが、ハルジオンばかりでナガミヒナゲシは見つからない。存在しないということではない。何度か見かけてはいるので、入り込んでは来ているのだが、その後、勢力を広げた気配はないということだ

ここではシロツメクサが優勢。これもアレロパシー植物だが、緑肥効果を狙って意図的に育てられることもある。ここは道端だから違うけどね


ここはシロツメクサとハルジオンが競合している

他にもこんなのも見つかるが、ナガミヒナゲシは……ない


ん? あった!

でもたった一本だけ。ハルジオンに囲まれていて、ハルジオンのほうがはるかに強いことが分かる

そばのビニールハウスには小学生が数十人、親と一緒にイチゴ狩りに来ていた

こないだから刺しっぱなしのハルジオンはまだ枯れない。強いんだなあ
さてさて、いろいろ調べてみて、この「ナガミヒナゲシ事件」の経緯をまとめてみると……:
- 2009年 国立研究開発法人農業環境技術研究所というところが、「平成21年度 研究成果情報」という刊行物の中で「ナガミヒナゲシはアレロパシー活性が強く、雑草化リスクが大きいので、広がらないようにする必要があります」というトピックを発表。
- 2011年3月 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)というところが出している「農環研ニュース」90号に、前回も登場した藤井義春教授が「春に気をつける外来植物:ながみひなげし」と題するトピックスを発表。ナガミヒナゲシの全国への分布状況やアレロパシーの研究成果を発表。この文章、ナガミヒナゲシについてやすたけまりさんが詠んだ歌なども紹介されていて、かなり面白い。「六月の信号待ちのトラックの濡れたタイヤにはりつく未来」
- 2016年5月 作家・寮美千子氏がフェイスブック上で「ナガミヒナゲシ退治2016」というタイトルでナガミヒナゲシのアレロパシーなどについて書き、さらには「危険外来植物のナガミヒナゲシ。駆除の理解を促すチラシを作りました。ダウンロードして、ご自由にご利用ください」としてチラシPDFを配布。これがネット上を駆け回ることに。
- 2017年5月 慶應義塾大准教授・有川智己氏(理学博士、経済学部)が、「このチラシは「デマ」と言って良い.「危険外来生物」という用語やカテゴリーがあるかのような書き方だし,「特定外来種よりも「危険」な植物なんだ!」というような「誤解」を巻き起こしている」と注意喚起。
……前回の日記を書いたときには、ここまで大きな騒動?になっているとは知らなかった。
何かおかしいな~、と感じていろいろ見ていったら、
⇒このページにとてもよくまとめられていたので、ストンと腑に落ちた次第。
この騒動に対して、ツイッターやフェイスブック上では
活発にコメントが寄せられていた。
ナガミヒナゲシの外来種駆除キャンペーンに違和感がある。
その場所に、ナガミヒナゲシに駆逐されそうな日本在来種があるなら仕方がないが、そもそも外来種だらけの町なかの草むらなら、何を守ろうとしているのか分からない。
凶暴な植物とレッテルを貼り、全国的に指名手配する方法はヘイトに似る。
だから外来種でも抜くな、駆除するな、と言いたいのではない。
けれど、
これは凶暴な、日本に生えていてはいけない植物だ!
と指名手配的に叫ばれると、
そもそも連れてきたのは誰で、在来種を駆逐したのは誰?
と思ってしまう。
いちばん凶暴な生きものは人間だなあ、と悲しくなる。
そしてさ
たとえ外来種でも
わたしたちが気づくころには
もう五十年も日本にいるんだよ
そこには
日本の虫たちも含めた
小さな宇宙が出来上がっている
こともある
特定外来種の花に
希少昆虫を見つけることだってある
自然って
一筋縄ではゆかない
(澤口 たまみさん)
そもそも在来種は絶対的に守られるべきなのかとか、他の植物の成長を阻害するアレロパシーもナガミヒナゲシにかぎった話ではないとか、ナガミヒナゲシが繁殖しやすい環境を人間が作っている点とか、そういうことを一切抜きにしてナガミヒナゲシを邪悪な存在であるかのごとく喧伝するって、どうなの?
(黒川 巌さん)
くどいようだが拡散されてる「ナガミヒナゲシは危険外来植物」というのは個人による造語であり実際は要注意外来種にも指定されていない。確かに近年場所によっては繁殖は目立つが、外来種が繁殖している場所であって在来種とは競合していない。在来種と外来種の区別さえつかない人は騒いでいるが
(もも さん)
これらのコメントに共感するのは、ここ数日で僕自身が自分の目で、自分が住んでいる場所、道路の脇、農地のすぐそば、コンクリートの隙間、農地の中……など、あらゆる環境を観察してみたからだ。
ナガミヒナゲシなんかよりハルジオンのほうがよほど強烈じゃないかと学んだし、むしろ今年のほうが去年までより数が少なくなった気がするからだ。
「一時的にわっと繁殖しても、放っておけば落ち着く。騒ぐほどのものじゃない」「ナガミヒナゲシが目立つ場所はそもそもすでに在来種などは消えていた厳しい環境」といった説のほうがはるかに納得できる。
中にはこんな意見もある。
内容に誤りがあり、行きすぎているのは問題だが、一般市民が外来種に問題意識を持つのはとてもいいこと。根本的な大間違いではないし、駆除そのものが悪影響をもたらすわけでもないので、学者が市民に「デマ」と断罪するのは言い過ぎではないかと。もっと優しい言い方で啓発して欲しいと思った。
(丸山宗利ω さん)
これはまた考えさせられる。
内容には問題があっても、それがきっかけで問題意識を持つ人が増えるのはいいことだ、という論にはときどきでくわすのだが、実際には、自分がそれを知らなかったことに気づいて、きちんと情報を追って、自分の頭で考え、判断できる人はとても少ない。圧倒的に多くの人たちは、鵜呑みにしてしまい、死ぬまで情報修正できない。これは高等教育を受けている人、社会的地位の高い人でもそうした落とし穴にはまってしまう危険性を妊んでいる。というか、そういう人ほど、自分に自信があるから気づきにくい。
僕自身、先入観を持っていい加減に書いてしまうことがかなりあるし、なんとなく疑問に思っていたことに対してそれらしい答えが提示されると飛びついてしまうことがある。そうであってほしい結論に整合する情報だけ選択し、不都合な情報は排除してしまうという傾向は、多かれ少なかれ誰もが持っているのではなかろうか。
だからこそ気をつけなければいけないし、一度広まってしまった間違い情報を訂正するのは容易ではない。
こうした危険性の最たるものは「自然エネルギー」礼賛だろうか。
これは本当にやっかいだ。
次のページではそれについて、ショックな出来事があったのでご報告。