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のぼみ~日記2018


2018/11/17

チキンラーメンが教えてくれた戦後史


NHK連続テレビ小説『まんぷく』が、「インスタントラーメンを発明した人物」をモデルにしているという話は聞いていたのだが、実際にはどうなんだろうとちょっとネット検索したら、意外な話がワサワサ出てきた。
ドラマの中で「発明家」とされている「万平」のモデルは呉百福(安藤百福)だそうだ。台湾で生まれ育ち、大阪で商売を展開していた華僑で、「福子」のモデル安藤仁子(まさこ)は百福の3番目の妻。安藤仁子は福島県二本松市出身で、大阪の社交クラブで働いていたときに百福に見初められ、戦時中に結婚した。そのときはすでに百福の最初の妻と第二婦人(当時、台湾では妾を持つことが合法だったらしい)の間に子どももいた。

今まで、インスタントラーメンは日本人が発明したと思わされてきたが、実際には台湾の人たちが作ったのだった。
さらには、中国や台湾で日本に支配されて「日本人」にされながらも差別された人たちが、戦後は一転して「戦勝国民」となって様々な特権を得たこととか、台湾人同士が即席ラーメンの特許を廻って法廷闘争をしていたこととか、百福は脱税容疑で巣鴨プリズンに収監されたことで政界とのパイプがより強くなったとか、日清食品という社名とミッチーブームの関係とか……。

⇒ここ とか、⇒こことか、⇒ここ なんかにいろいろ書いてある。
中には日本語がおかしくて、中国系の人が書いたのではと思うような文章もあり、ガセかなとも思ったのだが、さらにあちこちに出ていることを読んでいっても、矛盾は見あたらないので、どうやら本当のことらしい。
3番目のリンク先には特許公報の画像まで貼ってある。

となると、NHKはわざわざ朝ドラでこの話を取り上げたことで、こうしたドロドロした史実を表に出そうとしたのか、なんて勘ぐりたくもなる。ありえないけれどね。
これまでは、テレビドラマで美談に仕上げることで歴史や人物像が都合よく作り替えられたが、ネット時代の今はむしろ、当事者たちにとっては不都合な史実が表に出てしまうきっかけを作ってしまうのだなあ。

「戦勝国民」なんて言葉、初めて知った。
大陸や台湾のアジア人たちをこき使い、威張っていた日本人が、敗戦後、国に戻ったら故郷は焼け野原。無一文で途方に暮れる。
その一方で、それまで「三等国民」として貶まれていた人たちが「戦勝国民」となり、空爆で焼失した家や工場にかけていた保険金を手にして大金持ちになったり、GHQ施設に自由に出入りして闇物資を売りさばいて儲けたりできた。
そんな戦後史を知らずに育った「戦争を知らない子供たち」が、今はもう70代に入り始めている。
チキンラーメンが教える本当の戦後史……か。

とんかつ屋の悲劇

「とんかつ屋の悲劇 ~ 行列ができる人気店がなぜ廃業するのか」(中村智彦・神戸国際大学経済学部教)というコラムを読んだ。
ちょうど、今朝起きる直前に、半覚醒状態で「まともに稼げなくなった日本」の構造について考えていた。(歳取ると熟睡できる時間がどんどん短くなるので、明け方は蒲団に入ったままいろんなことを考えていたりする)

現在、日本の平均所得は400万円台だと聞いている。しかし、自営業、自由業──いわゆる「商売」でその水準に達するには、ざっと月に50万円は稼がないといけない。サラリーマンと違って、自営業、自由業者は、あらゆるもの(仕事場の確保、道具類を揃える、材料を仕入れる……など)をとりあえずは自腹でまかなわなければならない。経費で落とせるだろうといわれるかもしれないが、とにかく懐から金は出ていくわけで、給与所得者よりも多く稼がないと生活の質は確保できない。しかも、厚生年金もないから、老後の資金も積み立てなければならない。
月に50万の金を得る……それで年商やっと600万円で、400万円台の給与所得者と同程度の生活レベルになれるかどうか、なのだ。
月に50万円売り上げるには、25日働いても2万円/日。20日なら2万5000円/日の計算だ。
商品1個の利益が100円なら250個/日の売り上げ。250円の利益なら100個の売り上げ。利益を100円上乗せすることができる商品は売値が100円以下ということはありえないから、最低でも原価400円の商品を500円で売るというようなことになる。
500円の商品×250個/日をコンスタントに月20日売り続けることがどれだけ大変か、想像してみてほしい。

自営業の中には、1日1個しか売れないものを売る商売(例えば何でも屋が受注するサービス。庭の手入れとか引っ越しの手伝いとか車検代行とか……)というものもある。この場合、月商50万円を確保するには2万5000円/日を稼がないといけない。
庭の手入れを日当2万5000円で庭師や便利屋さんにホイホイ頼める人というのは、かなりの富裕層だろう。
その人たちは昼食代に1000円払うことなんてなんでもないことだろうが、日当2万5000円の人にとっては、毎日1000円の昼食代なんてとんでもない。ひとり暮らしならいざ知らず、子供がいて、介護しなければいけない親がいて、なんてことになっていたら、自分の食費を切り詰めてそっちに回すしかない。
となると、650円の定食でも贅沢で、3日に1回は398円のコンビニ弁当。お茶は家から持参。
少し贅沢をしたいときは、回転寿司屋に入り、150円のたぬきうどんで腹を半分満たした後、100円の寿司を2皿(4貫)食べて合計350円+税。寿司を3皿に増やすと450円+税で486円。ワンコインランチになる。
ラーメン屋は高いから入らない。

上のコラム「とんかつ屋の悲劇 ~ 行列ができる人気店がなぜ廃業するのか」には、本来なら1000円~1500円くらいとらないと儲けが出ないはずの立派なとんかつ定食を600円~800円で提供していた人気店がどんどん廃業しているという話から始まる。
「何十年も変わらない値段と、チェーン店ではありえない品質の高さと格安さ」などとグルメサイトでも称賛されていることが多い。しかし、それを可能にしているのは、すでに減価償却の終わった古い設備、ローンを払い終えた自社店舗、そして年金をもらいながら夫婦で切り盛りしていることなどだ。
 ある意味、年金が経営継続への補助金のようになっているわけだ。こうした経営を続けてきた場合、いよいよ世代交代の時期になると若い現役世代にはとても生活をしていけるだけの収入を得ることができない。


日光に越してきてからは、まさにそうしたお店をいくつも知った。
600円~800円でおいしいものを食べさせてくれる。厨房では老夫婦がやっていることが多い。
ランチタイムに立派なとんかつ定食を700円で出しているお店で、近所のおばちゃんと店主の奥さんがこんなやりとりをしていたのを聞いたことがある。
「明日の11時にとんかつ弁当持ち帰りできない?」
「うちは11時半開店だから、それはちょっと無理です。持ち帰りもやってないんです。とんかつだけでは栄養が偏るから、野菜サラダもつけたいし」
「11時じゃダメなの?」
「私もこの店の他に2つパートかけ持ちしているから、朝はパートだし……」

そんな会話を横に、厨房では立派なコック帽を被った店主が僕たちのために700円のとんかつ定食のとんかつを黙々と揚げていた。
もう、感謝しかない。というより、パートを2つかけ持ちしながらまで700円のとんかつ定食を出し続ける夫婦のことを考えると、のほほんと食事をできなくなる気持ちになる。
今は買い出しに行くたびにいろんな店に行って、600円~800円の外食を楽しませてもらっているが、消費税10%となれば、そうした店は一気に消えていくだろう。
「生きがいを求めて働きたい意欲のある高齢者の働く場の確保」のために、最低賃金を撤廃すればよいという政治家の発言が話題になっている。では、「年金をもらっているのだからと、最低賃金以下で働く高齢者」を集めて、事業の継続性はあるのだろうか。(上記のコラムより)

まったくその通りで、「働く意欲」だの「生き甲斐」だの「生涯現役」だのといった言葉を、自分で切符を買って電車に乗ることもないような人たちに使ってほしくない。税金で運転手付きの車の後部座席にふんぞり返っている人たちに「働く意欲」とか言われてもねえ。
適正価格を守るためには、適正な報酬を与えられ、「普通の人たち」がサービスに対して「普通にお金を払える」社会を作らなければならない。
⇒そのためには、お金が少数の富裕層に偏在していく今のシステムに手を入れて変えていかなければならない。
⇒そのためには、偏在を加速させる政策を続ける政治家や企業家にさっさと引退してもらうしかない。
⇒そのためには、庶民が意識改革して、きちんと選挙で政権交代を選ばなければいけない。
……↑この時点でおしまい。

さて、形を変えた「戦争」がいよいよ始まる。これからの10年をどう生き延びるか……もはや「平時」ではない。


朝のヨーグルトをやめて、レモン果汁+蜂蜜+インスタント珈琲を飲みながらこれを書いている。身体によさそうなものを全部ぶち込んでみた。簡単だし

ラパンの化粧、まだ続いてる


庶民の精神安定処方箋。100円ショップで買ってきた壁紙補修用テープを屋根の横に貼ったらどうかと思ったが……





……やめた……



ドアについた傷隠しにこんなのは……とも思ったが……

……これもやめた……

タヌパックブックス


↑エントロピー環境論を子どもから大人まで伝えたいという気持ちで書いた、これは私の「遺言」です。


更新が分かるように、最新更新情報をこちらの更新記録ページに極力置くようにしました●⇒最新更新情報
  


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