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のぼみ~日記2019

2019/02/06


オムツいろいろでやれやれ


あおざいで満腹になって、さあオムツを買いに……と車に乗り込む直前、あ! オムツ券を忘れた!! と気づいた。
あおざいでランチ……という頭が先に立っていて(今日はやっているかな? 場所はどこかな? 駐車場はあるかな? などなど)、そもそもオムツを買いに行くという目的が薄れてしまっていたようだ。
やれやれ。しょうがない。一旦おうちに戻ってオムツ券を財布に入れて、ホームに立ち寄って、どんなオムツを何枚買えばいいのかを確認。
ホームでは買う物をメモにしてあったが、何度見てもよく分からない。
結局、ドラッグストアの売り場で3回も電話をかけて
「背もれ横もれを防ぐテープ式はMでいいの? 30枚入りだといくつ? 夜用の10回まで大丈夫ってやつはまだストックあるの?」みたいなやりとりを繰り返したのだった。やれやれ。
↑これだけの種類・数のものが一か月で消費されるという怖ろしい現実! スタッフも「あんなに積み上げてあったのに、なんでもうないの?」と、月末には唖然とするとか。親父と義母の二人分で毎月軽く2万円超え。自分もこれをする日が来るのかなあ……と思うと、疲れるわ……。やれやれ。

オムツいろいろ
↑なんとか買って施設に届けると、シバニャンがこれを準備して待ち構えていた。「全部1つずつサンプルとして揃えておきましたのでプレゼントいたします」だって。
「どれがどういうものか分かってもらうために……」と。
中身を見ても、買うときはパッケージを見て区別するから分からないよ、と言ったのだが、彼女は「私たちはこれだけのものを苦労して使い分けているんです」ということを教えたかったのだと、すぐに理解できた。ごめんね。勉強不足で。真ん中辺に写っている小さなメモはシバニャンが僕らに教えるために書いてくれたイラスト入りの説明書き。
ほんと、文字通りの汚れ仕事は全部任せてしまっていて後ろめたい。家で介護していたら、否応なくこれと毎日格闘しなければならないんだよね。
ちなみに左端のシンプルに長いやつは、訪問看護師さんが褥瘡などの治療をするときにジョワ~っと漏らしたり、びちびちウンチがオムツからはみ出してシーツについたりすることが多いので、予防のために下に敷くのだとか。「高いから、なるべく使わないように言っておきます」なんていうけど、いへいへ、とんでもない。どうぞふんだんに使ってください。
それにしても、こういうものがなかった昔(つい数十年前)はどうしていたのか。……どうもしていなかったんだわね。こうなる前に死ぬ人が多かったし、こうなったら放っておかれて、やはり長くは生きられず、死んでしまったわけだろう。


その訪問看護師さんが僕ら家族に様子を伝えるためのメモ↑↓ ありがとうございます<(_ _)>



手術する直前、大腿骨骨折がまだ分からなかったときの介護ノート。痛みを訴えず、夜中に騒いでいたのだから、骨折だと分からなかったのも無理はない。どっちみち年末年始で病院は休みだったし……。



↑1月27日の介護ノート。手術跡に貼ってあったテープを夜中に勝手に剥がしてしまった。


1月29日の介護ノート。

親父の夜の譫妄と問題行動はエスカレートするばかり。
大腿骨骨折して、しばらくは動けずにおとなしくなるかと思いきや、逆で、ベッドから這い出して床の上に寝ていたり(おかげで作らなくていい褥瘡ができる)、すっぽんぽんになって大声で歌を歌ったり、壁をドンドン叩いて喚いたり、果てはベッドから手を伸ばして丸椅子を投げつけたり……。
あまりにひどいので、義母用に処方されていた精神安定剤を飲ませたりしたそうだが、まったく効果なしとのこと。
ひどいときは3日くらいずっと起きていて、寝ない。おかげで頬がこけてきた。
それでいて食事だけは完食するという。
手術後の傷の治りも完璧で、何かの拍子に立ちあがったりするらしいので、そのまままた倒れて骨折されるのが怖い。
この状態だと、たいていの施設では縛り付けられて終わりだろうが、それはしたくないので、みんな困り果てている。

助手さん曰く「お義父さんって、狼男みたいね」
狼男なら月夜の晩だけだから、よほど始末がいい。これが毎晩では……ねえ……。スタッフがまいってしまう。

昼間の様子だけしか知らない僕らは、なかなか想像ができないのだが、これが認知症老人(しかも中途半端に身体が動く)のいちばん怖ろしいところなのだ。他にもこうした事例はいっぱいあるようで、「うちもそうだった」「まさにそれ!」といった声が最近よく寄せられる。
興味深いのは、親父だけでなく、認知症老人が言う「帰る」は、自分の家ではなく、自分が生まれ育った昔の家のことが多いようだ。義母の「家に帰る」も、よく訊くと、何十年も住んでいた自分の家ではなく、子供のときに住んでいた家(もうない)のことなのだ。
夢の中でだけ認識している地図というのがあって、夢を見ているときはその場所を知っているのだが、目が醒めてみるとそんな世界は存在しない。
認知症老人は、夢と現実が錯綜しているような世界に生きているのだろう。だから昼と夜の区別もどんどん曖昧になり、時系列の認識が滅茶苦茶で、最後は家族も認識できなくなる。

テレビをつければ、僕よりずっと年下の岸本加世子(まだ50代)が、「案外気にならないね」なんて、大人用オムツのCMをやっている
オムツをしなければいけない日、というだけなら、身体のことだからまだいい。脳が、ただボケて弱ってくるだけでなく、完全に「壊れる」日が来るかもしれないというのがいちばん怖い。
肉体は動いていても、もはや自分が自分でなくなっている……ゾンビ映画の恐怖に通じるものがある。

ようやく家に戻り、輝麦で買ってきたパンでほっと一息。

2019/02/07

親父の介護会議


オムツデイの翌日は、訪問医と看護師、訪問看護師、ケアマネジャー、施設長、それに介護用品レンタル会社の担当者までが集まって、手術後の親父の介護をどうやっていくかという会議を開いた。
本人のいる場で……というポリシーで、親父のベッドの周りを大人7人がぐるりと囲む形で集まった。院長の「まずはみなさん自己紹介から」との言葉で、スタート。大人7人に囲まれた親父はキョトンとしている。さながら涅槃図のようで、よほど立ちあがって俯瞰から写真を撮りたいと思ったが、ぐっと我慢。
一人の認知症老人のために、エキスパートが何人も集まって真剣に知恵を出し合う。涅槃図の中心にいる親父はなんて恵まれているのだろう。
議題の1つは、夜中にベッドからズリズリと這いだして床の上に転がってしまったり、大声で歌を歌い始めたり壁をどんどん叩き始める親父をどうするか、だった。
訪問看護師さん「事務所でもみんなから意見が出たんですが、最初から床の上に寝かせたほうがいいんじゃないか、と」
施設長「それはもちろん考えたんですけど、それだと夜間、女性スタッフ一人だけのとき、対応ができなくなるんですよ。腰痛持ちのスタッフもいるから、動かせない」
介護用品レンタル会社の人「いっそ、ベッドの柵を4つにして囲ってしまえば……」
施設長「それは怖すぎる。このかたの場合、絶対にそれを乗り越えようとしますから、落下する地点を上げるだけ。今度骨折されたらどうしようもない」
院長「落ちたときのショックを和らげるように下にクッション性のあるカーペットを敷くとか」 ……なんていう議論が続くのである。
で、たどり着いた結論は、ベッドの柵を3か所にして、1か所だけ開けておけばそこから這い出すだろうから、その下にマットレスを敷いておけばどうか、という奇策。介護用品レンタル会社の人が提案。
「一種の誘い出しトラップみたいなものですけど」
あたし「敢えて反対側の柵のほうから乗り越えようとしないですかね?」
施設長「それはない。絶対にない。本能的に、開いているところから出ようとするはず」
……で、この案が採用された。
今使っている電動の昇降式介護ベッドレンタル料の他に、柵1本追加のオプション費用。マットレスは無料で貸し出せるようなのを探しますとのこと。

夜中にすっぽんぽんになって歌を歌ったり動き回ったりするのは、とりあえずつなぎ式のパジャマを着せる(自分では脱げない)ことで半分対応しているのだが、なんと、ついにそのジッパーをつなぎの裏側に手を入れて内側から引き下ろすという技を習得してしまったそうで、夜中に様子を見に行くとほとんど脱ぎかけていたとか。
褥瘡防止にと入れているクッションもすべてどかして放り投げてしまう。
大声を出したり壁を叩いたりするのは、精神安定剤も効かないというので、僕のほうから「メマリーとかは試してみる価値はないですかね」と院長に提案してみた。
「期待はできないけど、一度やってみますか」ということに。

ベッドの周りでみんながそんな風に会議しているのを、親父は静かに見守っている。この場面だけ見たら、誰も夜の変貌ぶりは想像がつかない。
90歳なのに身体の回復力は素晴らしく、すでに手術跡はきれいに治っていて、脚も動かせる。皮肉なことに、もともと固くて関節がちゃんと曲がらなかった左足よりも人工骨頭を入れた右脚のほうが動きがよくなっている。元気になりすぎて、また骨折しそうだということで、みんな知恵を出し合っているわけだ。
普通ならベッドに縛り付けられておしまいだろう。そうしないで、いかにこの環境の中で気持ちよく過ごしてもらうことができるかを、立場の違う専門家が何人も集まって知恵を絞っている。なんて贅沢なんだろう。王様の待遇だ。ここまでしてもらっている老人が、世界中にどれだけいるだろうか。対応してくれる人たちには、ほんとにいくら感謝してもしきれない。

アルツハイマー型認知症は、発症が分かってから10年くらいで、身体の機能もダメになり、寝たきりになり、そのまま死に至るというのが通説のようだが、親父はその10年をすでに超えている。
どれだけボケてしまっても、幸せを感じられる瞬間がある限り長生きさせてあげたいと思うのだが、このまま夜の「狼男化」が続くと、施設のスタッフがまいってしまうだろう。それがいちばん心配だし、心苦しい。
もちろん僕らもまいっている。精神的にも経済的にも。

2日後、遅れていた介護度判定が出た。親父の要介護度は3から5に上がった。



ようやく家に戻り、遅いお散歩。だいぶ日が延びたね。


あんたも大変やね……




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