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のぼみ~日記2019

2019/03/27

棚倉・浅川を再調査(7)堤羽黒神社(棚倉町堤羽黒東)


次は棚倉町堤という場所にある羽黒神社。ここにも平業の狛犬がいた。
平業の狛犬には珍しく、子獅子が2頭。籠彫りの珠は残念ながら壊れていた。
で、なぜか阿吽が逆に配置されている。最初からこうだったのだろうか?

ここも台座が立派。なぜか向かって右が吽像になっている。入れ替わったとも思えないので、最初からこうなのだろう。


阿像が雌獅子らしく、子獅子が2頭じゃれている。子獅子の表現は、さっき見たばかりの都々古別神社奥社の狛犬よりも一歩進んでいるというか、戯れている感じがよく出ている。




こちらも昭和3(1928)年11月10日(昭和天皇即位の礼があった日)で、さっき見た狛犬と同じ。平業は同時期にこの規模の狛犬を四体(以上)彫っていたことになる。しかも前年には傑作・宇迦神社の狛犬も……。



不思議なことに、同じ年月日の銘なのに、こちらは「彫刻師」ではなく「石工」。名前も平業ではなく本名の豊吉で彫っている。平業が本名の豊吉を使ったのは初期の作品だけだと思っていたが、昭和3(1928)年でもまだ豊吉も使っていたわけだ。
どういう理由からこちらは豊吉にしたのだろうか? 寅吉が布高と寅吉を使い分けたのを真似たとしたら、こちらのほうが出来に対して満足していなかったのだろうか? まさか阿吽を逆に彫ってしまったことに気づいて……ということはないだろうが……。
平業は明治31(1898)年生まれだから、昭和3(1928)年というと30歳くらい。傑作の宇迦神社の狛犬は29歳くらい。脂が乗りきっていた時期なのだろうが、本当に多作ぶりに驚かされる。昭和3年の11月10日に昭和天皇即位の礼があったため、全国的に奉納ブームが起きた。この狛犬もさっき見た都々古別神社奥社の狛犬も奉納年月日は同じ昭和3年11月10日。「御大典記念」となっているのはそういうことだ。
なお、野田平業については⇒こちらの日記も参照のこと。



社殿は山の中。先を進んでいくと……。
火袋がつぶれて寸足らずになってしまっている燈籠。3.11で壊れたのか?



社殿らしきものが見えてきた。

明神系の両部鳥居をくぐり抜けていくと……。


燈籠のこんな銘が目に留まった。

「愛婦統合」なんて、一瞬ぎょっとするような文句だが、調べると、戦前の婦人団体のことだった。
愛国主義的婦人団体として発足した国防婦人会(略称「国婦」)が、1942年にすでに存在していた愛国婦人会(内務省系、1901年~1942年、略称「愛婦」)、大日本連合婦人会(文部省系、1931年~1942年、略称「連婦」)と統合して、「大日本婦人会」(1942年~1945年、略称「日婦」)となったことをさす。
大日本婦人会は「割烹着にたすき掛け」を会服としたそうで、朝ドラなどで登場する愛国・国防を連呼するおばさんたちのあの姿がそれだ。
終戦直前の昭和20(1945)年6月13日に解散。新たに公布された義勇兵役法によって、15歳以上~60歳以下の男子および、17歳以上~40歳以下の女子に義勇兵役を課したため、婦人だけの会は必要なくなったということだろう。まさに一億総火の玉、玉砕体勢ということか。怖ろしい歴史だ。



境内背後の山は古墳群らしい。



社殿の彫刻は新しそうだが、見応えがある。








あちこちに石仏が残っている。

これらは、「淡島講」という女人講のものらしい。



江戸末期の石仏もある。


地震なのか台風なのか分からないが、この神社にある石造物はかなり壊れているものが多かった。

しかし、江戸時代の狛犬は五穀豊穣とか村内安全とかを願って奉納されるものが多かったと思うが、明治以降は戦捷祈願とか皇室行事などにまつわるものが急増する。
昭和3(1928)年は昭和天皇即位の礼で「御大典記念」。昭和15(1940)年は「皇紀2600年」記念。
庶民の「奉納文化」(?)が、質的に変化していったのだということを改めて感じる。








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