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のぼみ~日記2019

2019/08/14

Two Note Waltz

というわけで、松子を弾いて Two Note Waltz を録音してみた。
完全な弾き語りでもいいかなと思ったが、アルバム『たくき よしみつ SONGBOOK1』に入れたのはギターのみだったから、EWIも絡ませたいと思い、間奏部分とエンディングにちょこっとEWIも入れてみた。
音源は何を使ったかな。あまり深く考えずに、EWI USBに付属してくる音源のオーボエとか、あのへんの木管系のを2つ混ぜたのかな。
松子はライン録りせずに、マイク録りのみの生音。Vocalもいつも使っているLogic付属のリバーブをかけただけ。シンプルにシンプルに……。

45年前の年賀状


指が動かないのをごまかしながら、なんとか録音は終了。
しかしこれをYouTubeなどに置くには動画形式にしなければいけない。その素材が見あたらない。
演奏風景を撮ったのを見ると、老醜(う……!)というか、ちょっときついよなあ……だし、かといって、芋虫の顔やカエルや猫で埋めてもイメージが違いすぎて、音楽の邪魔になるし……。
なんかいい静止画素材がないかとHDDの画像フォルダを探し回っていて、最後に目にとまったのが、須藤くんからもらった年賀状の絵だった。
これ、だいぶ前にもこの日記で紹介したのだが、すごすぎて捨てられず、アルバムに貼ってあるので、今でも原画?が残っている。

↑アルバムの中に貼り付けてある

須藤くんとは中学、高校の6年間で、高校2年のときは同じクラスだったのを覚えているが、その他は別のクラスだったような気がする。
ただ、ロッカーが隣同士だったので、中一のときから知っていた。彼のほうから突然話しかけてきたのだ。
あたしは、なんだこいつ? 色の黒い変なやつだな、としか思わなかったのだが、須藤くんはなぜかあたしのことを気に入っていて、別のクラスなのに、ロッカールーム以外でもよく話しかけてくるようになった。
バレーボール部に入っていたが、高校になってからは美術部に移って絵を描いていた。
高2のときの文化祭(「聖光祭」という。同じクラスの平岡が「せいこうさい」って、いやらしいよな、とジョークにしていたっけ)のときは美術部ということで文化祭美術担当責任者になっていたが、あたしに「正門の装飾を全部任せるからやってみないか」と言ってきて、ちょっと驚いたのだが、引き受けたのだった。
しかし、細工物がへたくそなあたしは、その正門の装飾にかなりの予算をもらったのに大失敗する。塩ビパイプを組み合わせた抽象っぽいオブジェを作ったのだが、正門が大きすぎて、設置したらショボいのなんの。塩ビパイプは高価だったので、ものすごい無駄な出費をしてしまい、責任を感じたものだ。
正門の飾りがあまりにもひどかったので、そのままではいたたまれなくなり、バルコニーのフェンスにボール紙を貼ってそこに墨一色でやはり抽象画っぽい模様を描く追加オプションを申し出て、金を出してもらった。
その装飾のほうが、はるかに低予算で効果的な結果になった。
もっとも、須藤くん以外、認めてくれる人はいなかったが……。

正門の装飾に失敗した件で、責任者である須藤くんには謝ったのだが、「ぼくは悪くないと思うよ、あれ。面白くて」と、慰めてくれた。

須藤くんの家は東横線の綱島駅から数キロのところにあって、駅のそばの民家がやっている自転車置き場まで自転車通学をしていた。「ここの爺さん。ボケてて、集金もいい加減だから、停めちゃってても分からないよ」とそそのかされ、あたしもそこまで自転車で通学することになった。
それまではバスで武蔵小杉まで20分くらいかけて出ていたのだが、途中、南武線を横切るので、渋滞に巻き込まれるとバスだけで40分くらいかかることがあり、よく遅刻していた。駅まで自転車で行けば、遅刻しなくて済む、ということから、駅まで自転車通学に切り替えたのだ。
しかし、うちから綱島駅までは5kmある。雨の日も合羽を着て、家から綱島までは自転車で。そこから東横線に乗って終点の桜木町まで。そこから根岸線に乗り換えて聖光の最寄り駅である山手駅まで。駅からは早足で10分の登り坂を上って……というルートを毎日往復していた。
須藤くんとは同じ綱島駅利用になったため、たまに家に遊びに寄ることもあった。須藤くんが写真を趣味にし始めると、あたしも親父が持っていたペンタックスSP+50mmを持ち出して写真を撮るようになり、須藤くんの家で現像・焼き付けなんかをしたものだ。
須藤くんが「親から金を出してもらえることになったので、オーディオセットを買うから、選んでくれ」と言ってきたときは、一緒に秋葉原に行き、プレーヤー、アンプ、スピーカーなどを全部あたしが選んだ。スピーカーはビクターのSX-3だったかな。当時、画期的な2WAYスピーカーとして評価が高かったもの。
スピーカーにかなり予算を取られたので、アンプはニッコー、レコードプレーヤーはCECという渋い選択になったんだっけかな……。
当時、うちにはそんな金はなくて、あたしは拾ってきた板で自作スピーカーを作ったりしていたので、オーディオはもっぱら長岡鉄男が先生だった。

そんな須藤くんが、高2のときに送ってきた年賀状がこれ↓

↑1973年正月に届いた年賀状

こういう未来像を描いているんだなあ……と、ニヤッとしたが、それ以上に絵がうまいので驚いた。
そんなの知らんわ

この1枚だけでも驚いていたのに、すぐにもう1枚届いた。

↑1973年正月、2枚目の年賀状
この画像からは消してあるが、コメントが書かれていた。
再び謹賀新年。前のは僕が見てもあまりにきたないので描き直したのです。今度は顔は描かなかったので、適当に想像して、愉快に過ごしてくだされ。(やっぱり女を描かないと気がすまないのです。)

あたし的には、最初の賀状のほうが好きだったが、2枚も絵を描いて送ってくれたことに驚いた。
あたしはどんな年賀状を出したのだったかなあ……。出しているとは思うのだが……版画だったのかな……。

この絵を使おうかな、と思いついて、画像も用意したのだが、やっぱりイメージが強すぎて音楽に合わない。
そこで、翌年にもらった年賀状のほうに注目してみた。
赤いペンの線描で描いているやつ。鉛筆書きで、こんなコメントが添えられている。
ほんとはこうやってランプをかいて、「これは入試の女神様が宿るランプだから、試験場に持って行ってこすれば、わからないところもわかるようになるのです」なんて書こうと思ったが、君は確実にどこかへ入れそうなので、この文と、ランプと、かんむりは、消しゴムで消すこと↓
その鉛筆で薄く書いたコメントの下には、やはり鉛筆書きのランプ。「入試の女神様」の冠も鉛筆書き。
「消しゴムで消すこと……」か……
さらにはこうある。
途中経過を報告すれば(↑上に報告しました)、いろんなことがありまして、僕にしては画期的。僕にしてはせいいっぱい

そっか~。せいいっ「ぱい」だったのね。
大学受験直前で、絵なんか描いていられないときに「ぱい」を描いて気持ちを落ち着かせていたのか……。

この鉛筆で描かれていて「消しゴムで消すこと」という部分も、もちろん今も残してあるのだが、この赤ペンでなぞられた部分だけを抽出して、透過GIFとフィルター処理した画像を作って、Two Note Waltzに入れてみた。
あたしとしては自分のみっともない姿をなんとかカムフラージュさせようと「せいいっぱい」あがいてみたわけ。
須藤くんには断ってない。多分、この年賀状のことは忘れているだろうな。なにせ45年も前の話だものな。
もう1枚、イントロ部分では、1975年のクリスマスカード代わりに送られてきた近況報告の葉書に描かれていた、メルヘンチックなイラストを使わせてもらった。

大学に入ってから送られてきた葉書↑

これが届いたときは、どういう心境の変化なのかと首をかしげたものだ。受験勉強から解放されて、緩んじゃったのかな……と。
……ペリカンの固形の絵具を買ったのです。去年は入学者100人中16人ぐらい女だったので、今年は入学者が120人だからそれに1.2を掛けて20人くらい入るかなと期待していたら、数学が難しかったらしくて(僕はそうは思わない)10人ぐらいしか入らなかった。
教科書が高いので財政難です。100円であじのひもの物を4ひき買って、きのうときょうに分けて食いました。
きょうきゅうにアップルパイが食いたくなったので、千葉まで自転車で行って買ったのですが、600円したので、4日にわけて食うのです。

なんだか楽しそうな寮生活だ。

まだ葉書が10円だった時代なんだねえ↑



これも須藤くんからの葉書。いつのものだったか……ひっくり返せば分かるんだろうが、アルバムに糊でくっついているので……



まあ、そんなわけで、あまり解決策にはならなかったが、入試の女神様の力を借りて、なんとかTwo Note Waltzを動画にまとめたのだった。

さて、リハビリはうまくいったのか? このまま新曲に着手するくらいの気力が生まれたか? お盆休みはもうすぐ終わるなあ。

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