今年の全米オープンテニス、錦織、大坂なおみは早々と敗退。男子はジョコビッチとフェデラーも負けて、3強のうちベスト8に残っているのはナダルだけ。
そのナダルと準々決勝で対戦するのがディエゴ・シュワルツマンという小さな(公称で170cm)選手。
YouTubeより、シュワルツマンのベストショット集
これを書いているまさに今、試合が行われている(録画予約してあるので、これからおっかけ再生でじっくり見る)
ベスト16戦での相手はドイツのズベレフだったが、すごい試合だった。上の写真は試合直後の二人の様子。ズベレフは身長198cmなので、シュワルツマンとの身長差はおよそ30cmある。実際にはもっとあるようにさえ見える。試合開始前のコイントスで並んだときは、コイントスをする少年とあまり瀬賀変わらず、一瞬「ズベレフの対戦相手はどこだ?」と、画面を探してしまったほどだった。
ズベレフは過去の最高ランキング3位で、去年のATPファイナルズではジョコビッチを破って優勝している。シュワルツマンと対戦したベスト16戦でも、決して悪いプレイではなかったが、シュワルツマンは粘りに粘って勝利した。
第4セットではちょっとした事件があった。
第7ゲームはシュワルツマンのサービスゲームだったが、40-15とリードされたところで、苛立ったズベレフが大声で汚い言葉を発した。その行為に対して主審がコードバイオレーション(マナー違反)の警告を発し、その前にボールを観客席に打ち込んだときの警告との累積(2回)で1ポイントペナルティとなり、そのままそのゲームはシュワルツマンが取った。
ズベレフは「これが最初の警告じゃないのか? 1回目の警告なんて雨の音で聞こえなかった」と抗議。
これに対して、なんと相手のシュワルツマンも「僕も聞こえなかったよ」と一緒に口添えしてあげたのだ。
自分が有利になる判定でも、相手の立場に寄り添って行動するのはこれが初めてではない。
去年の全米3回戦で、シュワルツマンは錦織と対戦したが、その第3セット、5-5という大接戦の際にもあった。
シュワルツマンのサービスゲームで、まずは15-0とリード。次のサーブを錦織は苦しい体勢でなんとか返したが、ボールはサイドライン際にぽとりと落ちて、判定はアウト。そのままならシュワルツマンの30-0になるシーンで、なんとシュワルツマンは錦織に「今のは入っていたんじゃない? チャレンジしたら?」とアドバイスしたのだ。
結果、錦織は半信半疑のままチャレンジして、ぎりぎり入っていたことが分かり、判定が覆って15-15に。
錦織はサムアップで感謝。それにシュワルツマンは笑顔で答える。
「ここでササッとプレーされていたら、30-0の場面だった。ナイスガイで珍しい。感謝と言っていいか?わからないが、普段から(彼は)いい人だと感じていた」。
(tennis.jpの記事より)
試合は結局、6-4、6-4、5-7、6-1で錦織が勝ったのだが、競った試合の5-5のゲームで相手に「チャレンジしたら?」と言うとは……。
なんというフェアプレー精神なんだ、シュワルツマン。
「きみは身長170cm以上になることはない」と医者に宣告される
シュワルツマンはアルゼンチンのブエノスアイレス生まれでアルゼンチン国籍だが、両親はユダヤ系ドイツ人。
もしかすると、祖父母世代はナチスから逃れて南米に渡ってきたのかもしれない。
ディエゴは4人兄弟の末っ子だったが、兄や姉に比べても背が小さかった。
13歳のとき、医者に「きみは将来170cm以上になることはないだろう」と宣告された。
ディエゴはうなだれて家に戻り、母親に「もう夢も希望もない。何もやる気がなくなった」と告げるが、母親はそんなわが子を叱咤する。
母親はディエゴが生まれたときから、その目の輝きに魅了され「この子は将来特別な人間になる」と確信し、アルゼンチンの英雄であるディエゴ・マラドーナと同じ名前をつけた。
一家は貧しく、両親はディエゴが生まれる前には、食事を何度も抜くなどして節約に努めたほどだった。
ディエゴがサッカー選手からテニス選手へと目標を移した後も、両親は必死に働いてディエゴの試合遠征費などを工面し続けた。
拾った犬に「ペケ」(チビ)と名づける
……とここまで書いて、昼飯を食いながら録画しておいた試合を観たら、残念ながらナダルに負けてしまった。
セットカウントは0-3だったが、第1セットでは0-4、第2セットでは1-5からそれぞれ4ゲーム連取して盛り返した末に落としたという惜敗。
ズベレフ戦同様にいい試合だった。ますますシュワルツマンのファンになってしまったよ。
シュワルツマンの人柄を伝える
別の記事によれば、尊敬するテニス選手はジャック・ソック(アメリカ)、ダビド・フェレール(スペイン)、ラファエル・ナダル(スペイン)、ロジャー・フェデラー(スイス)で、いつも一緒に写真を撮ってもらおうと思うのだが、勇気がなくて声をかけられないと言っている。
それでも、フェレールとはようやく一緒に写真を撮ってSNSに投稿したし、ナダルには試合の後、思いきってロッカールームでお願いして、試合中に着ていたシャツをサイン付きでもらうことができたという。
そのシャツは宝物として、部屋の壁に飾ってあるというのだが、まさにその相手と今日は全米ベスト8で対戦し、死闘を繰り広げた。
「初めてのペットは?」という質問にはこう答えている。
白黒のコッカースパニエルで、ローリーという名前でした。また、数年前に通りをローリーと歩いていたときに近寄ってきた犬がいて引き取りました。この小さいのはペケと呼んでいます。僕と似ていたので、僕のあだ名から付けました。僕が家にいるとき、ペケは夜になるとベッドの中まで入ってきます。
ペケというのはスペイン語で「チビ」という意味。拾った犬に「チビ」と名前をつけて呼んでいる……なんていいやつなんだディエゴ・シュワルツマン。
これからもワクワクする試合を見せてくれぃ。