COVID-19の感染は世界中に広がっている。
ここにきておどろいたのはイタリアやイランでの感染者急増だ。検査数の分母がバラバラなので単純比較はできないだろうが、どうにも不思議な感じがする。
日本では検査数が極端に少ないので、さらに分かりづらいのだが、北海道が多いというのは、単純に検査数が多いからということだけでは説明できないような気がしてきた。
やはりHLA型が関係しているのではないかという思いが強まって、いろいろ調べていたら、気になるデータにぶつかった。
似ている?
この2つの分布図は似ていないだろうか?
下は今回のCOVID-19の感染者分布だが、上は違う。
上の分布図は「ベーチェット病」の患者数分布図なのだ。
原因は不明ですが、別名「シルクロード病」と呼ばれるほど、世界的にみると、地中海沿岸諸国(トルコ、ギリシャ、イタリア、フランス、チュニジア、モロッコ、エジプト)、中近東(サウジアラビア、イラン、イスラエル、レバノンなど)、東アジア(中国、モンゴル、韓国、台湾、日本など)といった北緯 30 度から北緯 45 度付近のシルクロード沿いに多発する疾患で、何らかの共通の“環境因子”の存在が疑われます。これらの地域の有病率は人口10 万人に対し 20~270 人なのに対し、欧米では 10 万人あたり、たった 1 人(未満)です。また、ベーチェット病患者では、ヒトの免疫応答の重要な役割を担っている“主要組織適合抗原、HLA(human leukocyte antigen:ヒト白血球抗原)”の特定タイプ、HLA-B51 抗原の陽性率が 50~70%と健常者に比べとても高いことが分かっています。
(難病情報センター「ベーチェット病」より)
HLA型との関連では、
HLA-A抗原の1つの型であるHLA-A26抗原が、HLA-B51抗原とは連鎖しないで独立に本病と相関していることもわかってきました。したがって、HLA-A26抗原をコードするHLA-A26対立遺伝子は、ベーチェット病の第2の疾患感受性遺伝子であることが示唆されています。この両抗原のどちらかを保有している患者はベーチェット病患者全体の80%弱にまで上ります。HLA-B51抗原とHLA-A26抗原のどちらを保有するか、または両抗原とも保有するか、両抗原とも保有しないか、ということで、ベーチェット病の病態や重症度に違いも表れています。
(ベーチェット病の分子遺伝学的発症機序について ~全ゲノム網羅的相関解析(GWAS)を終えて~ 横浜市立大学医学部眼科 水木信久 2010/07/26)
とのことで、HLA-B51とHLA-A26が深く関係しているという。
さらには、ハワイやブラジルの日系移民にはベーチェット病の発症例がほとんど見られないそうで、遺伝子の要素以外に生活環境の要因(居住地域)も関係しているのではないかとも言われている。
SARSはHLA型がHLA-B46、HLA-B54型を持つ人(中国南部、香港、台湾に多い)に感染しやすく、特にHLA-B46は重症化しやすいという研究報告が香港の医学者チームから出されていた。今回のCOVID-19はSARSのときとはかなり違う感染の仕方を示しているので、HLA型になんらかの関係があるらしいとは想像できても、SARSのときとは違うのだろうと思っていたのだが、むしろこのベーチェット病に近いような気がしてくる。
もちろんなんの根拠もない想像にすぎないが、
我が国では、患者数は全国で約19,000人(平成25年度厚生省ベーチェット病班会議)ですが、潜在患者を含めるともっと多いと推定されています。
国内での本病患者の分布は、北高南低の傾向を示し、札幌市では10万人に95.6人程度であるのに対し、福岡市では10万人に12.5人程度です。
(「ベーチェット病」後藤内科医院)
日本では北海道に多いというのも、妙に一致していて気になってしまう。
ちなみにHLA-B51を持つ人の割合を国別に見ると、
だそうで
(図表は前記・水木信久教授のリポートより)、保有者率は韓国は日本の1.63倍というのも気になる。
中東ではイランの多さが目立つし、ヨーロッパではギリシャ、スペインと同じくらいイタリアも多い。
ドイツにはトルコからの移民が多く、ドイツでのベーチェット病患者はトルコ系が多いという統計もあるようで、これもなんだか現在のCOVID-19感染者分布に通じる気がする。
今後、トルコ、ギリシャ、スペイン、サウジなどでの感染者が増えてきたら、ますます気になってしまうだろう。
HLA型がCOVID-19の感染率や発病率になんらかの関係があるとすれば、人種や地域によって、
- 感染しやすい人
- 感染しても発病・重症化しにくい人
- 感染すると重症化しやすい人
- 再感染しやすい人
の割合が違うことが考えられる。
この場合、3や4の多い地域は被害が大きいだろうし、1や2が多い地域は他の地域から警戒されることになる。特に2が多い国・地域は警戒されるだろう。
そうしたデリケートな情報だけに、もしかするとすでにあちこちの研究所や専門家の間ではこの手の情報が共有されていても、トップシークレットとして外に出さないようにしているのかもしれない。
そうであれば、現時点ではそれでいいと思う。分かったところで個人レベルではどうにもできないし(自分のHLA型を知ることなどほぼできない)、無用な差別やパニックを生み出すだけになるからだ。
さて、もはや日本政府や厚労省にはまったく期待できないことが明白になったので、今はもう政府を責めても何も前に進まない。
海外から入ってくるデータをもとに、できる限りの予測をして、悪い方向に進むことを前提にした備えを自治体レベルで早急に進めることが求められる。
新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、素早く設置できる「医療用陰圧テント」のニーズが高まっている。膜構造物メーカーの太陽工業(大阪市)は2020年3月6日、同社が販売してきた医療用陰圧テントについて生産体制を強化すると発表した。
(「新型コロナで需要急増、太陽工業が医療用陰圧テントの生産体制強化へ」 日経クロステック/日経アーキテクチュア 2020/03/10)
↑まさにこういうことだ!
- 各病院はそれぞれの規模に合わせて「発熱外来」の独立設置を確保するように全力で動き始める(駐車場スペースなどを使って別の動線と他の患者との分離を確立した診察棟をテントやプレハブユニットでもいいから作っておく)
- 医療・介護現場のスタッフが倒れないよう、自治体は共稼ぎ子持ち家庭を全力でバックアップする(国の「要請」を鵜呑みにせず、地域の実情に合わせた臨機応変な対応を毅然とする)
- 企業は従業員の就労環境改善を劇的に進める
- マスクやアルコール消毒液は医療機関・介護施設へ優先して渡るようにする(一般家庭ではそれらを買い占めず、手洗いの徹底でよい)
- だれが感染したらしい、ではなく、だれが弱っているらしいという視点で、病人を早く手当てできるよう周囲が協力する(感染者差別の風潮をやめないと、病人が病状を隠して無理をしたり病院に行かずに引きこもったりして、感染拡大や衰弱死増大につながる)
……そういうレベルで各現場が対応しないと大変なことになる。
メディアは経済が経済がと騒ぐが、経済=株価や為替レートではない。人々の活力が失われ、動けなくなることが最悪の事態へと導く。人が動かなくなると、福祉に支えられている高齢者や、不安定な仕事でぎりぎりの生活をしている貧者などの弱者から順番に倒れていく。被害をどれだけ小さくしていけるかという戦いなのだ。
※(追記)この頃書いていた上記のような内容は、相当間違っていたということが後になって分かった。