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のぼみ~日記 2020

2020/03/14

聖火の「焚きつけ」は古いフィルムだった



ギリシャでの東京オリンピック聖火の採火式というニュースを見て驚いた。
太陽光を鏡で集めて点火するというのは知っていたのだが、その火を最初につけるための「焚きつけ」が古い映写フィルムなのだね。

こういう製品は発火・引火しやすいので火事に注意しましょう……みたいで、なんだかありがたみがないというか……。
ギリシャの人ってこういうところはこだわらないのかね。屈託がないというか……。

延期? それとも中止?

その聖火を受け取る野口みずきの笑顔もどこかぎこちなく、役割を終えた後のインタビューコメントも考え抜いた末みたいな印象……というのは、うがちすぎか。
でも、直後には、ギリシャ国内での聖火リレーが中止になったとのニュースが流れ、世界はすでに今年のオリンピック開催は無理だろうという見方が大勢を占めているようだ。

私は当初、中止にするとIOCは莫大な放送権料(大半は米国NBCから)が入らなくなるので、無観客でも開催はするのかなと思っていたが、それではあまりにも格好がつかないから延期がいちばんマシなんじゃないか……という方向で動き始めているようだ。1年延期だと来年米国で開かれる世界陸上と重なってしまうから、2年延期して、サッカーワールドカップや冬季五輪と同じ年にしてしまえ、ということか。

中止という線もかなり濃厚らしい。その場合、IOCもNBCも開催できなかったときの損害保険に入っているので、中止でもある程度諦めがつくが、開催国日本は一人大負けで、もはや国家的危機に陥る……と。
少なくとも予定通りに開催できるとは到底思えない。中止にしても延期にしても、日本が受けるダメージは計り知れないが、もはや「損失をいかに小さく抑えられるか」という視点で動くしかない。
ほんと、3.11の直後に五輪再度立候補をぶち上げた石原慎太郎の罪は重い。

日本と韓国は死者が少ないという不思議

これを書いている現在(2020/03/14 16.28)、世界でCOVID-19に感染して死んだ人は5429人だという。
中国湖北省を除くと、イタリアが1266人で断トツに多い。以下、イラン:514人、スペイン:133人、フランス:79人、韓国:72人、米国ワシントン州:37人……と続いている。
死者/確認感染者数を比べると、中国以外では、
……で、イタリアとイランの死亡率の高さが目立つ。特にイタリアは致死率が高い。
武漢のように医療体制が崩壊したからだというが、それだけではないのでは? という気もする。遺伝子的に重篤化しやすい人が多いのではないだろうか。
韓国が一桁低いのも目を引くが、これは検査数を徹底的に増やしているからという理由の他に、検査している対象に例の新興宗教信者が多く、その大半が40歳未満の女性だから、ということのようだ。
日本は検査数が異常に少ないのでこの数字は鵜呑みにできない。検査されないまま、ただの肺炎とされて死んでいる高齢者が相当数いるはずだ。今のままだと早急に手当てすれば回復する可能性のある患者をどんどん重篤化させてしまうだろう。
さらには、クラスター感染と呼ばれているケース(スポーツジムや屋形船など)を追跡調査した結果を見ていると、日本では若年層を中心に不顕性感染者の数が諸外国より多いのではないかという気もする。もしかすると韓国よりも多いのではないだろうか。
上昌広医師は、日本と韓国で死者数が少ないのを「ウイルスの特性」に要因があるのではないかとツイートしているが、この「特性」というのはやはりHLA型との関係を示唆しているのだろうか。ただ、データがない現状でHLA型との関連に言及することで、ただでさえ多い雑音が増えるのを回避しようとして明言を避けているのだろう。

そこで改めて日本国内でのPCR検査結果(3月13日時点。クルーズ船、チャーター便帰国者除く)を見てみると、
となっている。
陽性者のうち1割以上が無症状というのが不気味だ。
ちなみにダイヤモンドプリンセス号だけのデータを見ると、
で、なんとおよそ半数は「無症状者」なのだ。
この「無症状者」というのは、「(隔離)入院後に有症状となった者は無症状病原体保有者数から除いている」とのことなので、ウイルスが体内に入ってもまったく発病しなかった人という意味になる。
感染しても1割以上の人は自分が感染したことが分からないどころか、なんの症状も出ないから普段通りに行動しているわけだ。
微熱程度の軽い症状のままで動いている人を含めればもっとずっと多いだろうから、今の日本では、自分が感染していることを認識しないまま普段通りに行動している感染者が数多くいると考えられる。
メディアでは指摘するのが半ばタブー視されているようだが、普通に考えれば「感染しても無症状または症状が軽い若年層が、意識せずに高齢者層にウイルスを感染させ、高齢者が発病する」という図式ができあがりつつあるのではないか。
この可能性を提起することで無用な差別発言やパニックが広がるのか、それとも各人が今まで以上に注意を払って高齢者の感染リスクを下げる努力を冷静にかつ紳士的にしていけるのか……後者であることを祈りたい。

やはり「慣れる」しかないのか?

ここにきて、イギリスの対応が他の国とはかなり異質で注目している。
政府首席科学顧問のパトリック・バランス氏は13日のインタビューで、国内人口の6割が感染するかもしれないと警告。
(略)
バランス氏は当局者がウイルス感染を「完全に抑え込むのではなく」、ピークの水準を抑え、平たん化しようとしていると述べ、英国のアプローチを擁護。国民の60%が感染すれば、ある程度の「集団免疫」形成に役立つだろうと語った。
Bloomberg 2020/03/14

英政府の首席科学顧問パトリック・バランス氏は12日、英国内の新型コロナウイルス感染総数が現時点で最大1万人に達している公算が大きいとの認識を示した。
バランス氏は、国内では現時点で確認された患者は約590人、集中治療室で治療を受けているのは20人超とした上で、「これを基に実際の総数を算出すれば5000─1万人が感染している公算が大きい」と述べた。
また、英国は新型コロナの流行が深刻なイタリアの状況から約4週間遅れの状況にあるとの認識を示した。
ロイター 2020/03/12
免疫を持つ人が一定割合まで増え、感染を防ぐようになることを「集団免疫を獲得する」と言います。数理モデルをつくる英インペリアル・カレッジ・ロンドンのニール・ファーガソン教授のこれまでの発言を聞く限り、イギリスの集団免疫レベルの基本シナリオは60%とみられます。
来シーズンにはワクチンが開発されている可能性があるため、感染して自分で免疫を獲得した人とワクチン接種を受けた人の割合をコントロールしながら60%に持っていく戦略と筆者はみています。
しかし、それを国民向けの記者会見で公言するとは思ってもみませんでした。
今封じ込めすぎて感染のピークがNHS(国民医療サービス)の繁忙期である冬にやって来ると大変なので一番暇な夏に来るようにコントロールする目標まではっきり示しました。最悪シナリオの罹患率はドイツの70%を上回る80%に設定して実行計画を立てていると言います。
ヴァランス顧問によると、スポーツイベントなど大規模な集会より感染リスクが高いのは密閉空間での密接な会合だそうです。今、一斉休校をしない理由についてヴァランス顧問はユーモアを交えてこう説明しました。
「休校の効果はあるものの最小限です。効果を上げるのは13~16週間以上の休校が必要になります。しかし子供に友達と会ってもダメ、おしゃべりしてもダメと言っても実行できる可能性はゼロであることぐらい最先端の数学者でなくても分かるでしょう」
ジョンソン首相は「一斉休校は効果より害の方が大きい」と説明しました。もちろん状況が変わって特別なアドバイスがあれば休校するという選択肢は残しているそうです。

イギリスの基本戦略は次の通りです。

(1)ハッピーバースデーを2回歌いながら石鹸と温水で手を洗う
(2)熱や咳の症状がある人は1週間、自宅で自己隔離→ピークを20~25%削減
(3)家族全員を自宅で隔離→ピークを25%削減(未実施)
(4)新型コロナウイルスに脆弱なお年寄りをケア→死亡率を20~30%削減

集団免疫を獲得するまで先は長いので今からあまり頑張りすぎないようにというアドバイスもありました。
木村正人のロンドンでつぶやいたろう 2020/03/13

ちなみにこのパトリック・バランス(Patrick Vallance)博士とは、グラクソ・スミスクライン(GlaxoSmithKline)社の研究開発部門のプレジデントやユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の元医学部長という経歴の持ち主で、2018年春に英政府首席科学顧問に就任したそうだ。
イギリスはもはや、 ……という、開き直りに近い作戦に変更しつつあり、首相もそれを認めているということのようだ。

イギリスだけではない。
ドイツのメルケル首相は12日までに、新型コロナウイルスの問題に触れ、最終的にはドイツ国民の6~7割が感染する可能性があるとの同国当局の見方を明らかにした。ベルリンでの新型肺炎に関する記者会見で述べた。シュパーン保健相も同席した。
首相はこの中で公衆衛生制度に過重な負荷をかけないことが重要と指摘。感染の拡散に歯止めがかからないイタリアを念頭に、全ての欧州諸国に感染が広がっているともした。
その上で、各国は研究に注力し、支援すべきと強調し、ドイツは分散的な方策で今回の危機に対処するとも言明した。新型コロナウイルスについて「我々は多くのことを知らない状況の中にいる。我々は深刻に受けとめている」とも述べた。 (CNN 2020/03/12


ニューヨークタイムズ紙によれば、米国疾病予防管理センター(CDC)、および伝染病研究を行う複数の大学が2月に研究会を開催し、米国における新型コロナウイルスの感染拡大ケースを議論した。
(略)
研究チームの予測によれば、感染開始後、数か月から1年の間に米国では1億6千万人から2億1400万人が感染する可能性がある。そのうち、240万人から2100万人が入院を必要とする。米国全土の医療ベッドはおよそ92万5千台しかないことから医療崩壊が発生し、1割程度の重症患者しか治療を受けられない事態となる。一方、治療が行われない場合、新型コロナウイルスによる肺炎で20万人から170万人が死亡する可能性がある。
SPUTONIK 2020/03/14

1億6千万人から2億1400万人というのは米国総人口の約5割~7割弱くらいだから、イギリスもドイツもアメリカも、国民の半数~7割くらいは感染してしまうという事態を想定して動き始めたということだ。

スペイン風邪と比較

COVID-19は当初SARSやMERSと比較されていたが、それよりも100年前のスペイン風邪と比較したほうがいいのではないかという気がしてきた。
スペイン風邪は日本国内では致死率が1%程度だったが、感染力が強く、当時の世界人口の約3割に当たる5億人が感染した。
世界での死者数は2000万人~4500万人といわれている。英独米の最悪シミュレーションも、このスペイン風邪をモデルにしているようだ。
スペイン風邪に対しては、結局有効な対策ができないまま、感染して治癒した人(生き延びた99%の人)が集団免疫を持つことで、その後の大量死が収まった。COVID-19もそういう風になっていくのではないかと、専門家たちは冷静に判断しているということなのだろう。

つまり、我々ができることは、 ……といったことしかない。
あ、イギリスの政策とまったく同じか……。
覚悟を決めて、冷静に動きましょう。





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