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のぼみ~日記 2020

2020/08/10

買い取り業者に来てもらった


義父母が残した膨大な記念切手シート、記念メダル類、着物、バッグなどの買取りのために大手の業者に来てもらった。
ヤフオクなどで大体の相場を見ていたので、あまりの安さにちょっと衝撃を受けた。記念切手シートは額面の半額以下しかつかない。普通切手なら額面の7割8割で買い取る業者もいるけれど、記念切手類はそこまで出せない、という。「コレクターブームの時代では逆だったんですけどねえ」だって。
それなら何年もかけて切手として使っていったほうがいいわけだが、それもなんだか疲れる。
とにかくこういう作業は疲れる。純粋に労働として疲れるというよりも、精神的な疲れだ。
考えてみると、テレビCMバンバン打っている大手業者がこんな田舎まできて、何時間もかけて計算して、それを持ち帰ってさらに別の業者などに転売して儲けを出すわけだから、転売できる価格の半額以下どころか、1割とかそれ以下で買い取らないと成立しないビジネスだということはよく分かる。

やってきたのは若い男性。親の歳を訊いたら、案の定ぼくらよりずっと若かった。
先日ギターの買取りに来てもらった業者の人も同じように若い男性だった。
まったく別の業者だが、訊くと、二人とも地方出身者で、あちこちの出張所を転々としているらしい。社員契約であっても、そういう働き方が普通になっているわけだ。
最初に来た男性は東海地方のナンバーの自家用車で来ていたし、今回来た男性は、山陰に家があるのだが、今は社員寮みたいなところに泊まりながら全国あちこちに派遣されているらしい。
これはある意味、「出稼ぎ」業態といえそうだ。

この業態を個人でやっているケースもあるとのこと。
高齢者宅に電話をかけて「不要な貴金属や着物があれば買い取りますよ」と持ちかける。その電話と買い取りに行かせるのは学生のバイトを使い、集まってきたものを専門業者に転売して儲ける、という商売。もちろん利ざやの薄いものには目もくれず、高額で売れるものにだけ的を絞る。だから、金やプラチナの製品がメインターゲットだ。
大手業者がやっても個人がやっても同じことだ。
そんな話を聞くと、どんどん鬱になってくる。
この国は虚業にまみれて、どんどん貧しくなっているのだなあ……と。

別の視点から遺品整理を考えてみる。
記念コインとか記念切手とか、今まで各家に埋蔵されていたものが、コレクション商品としての価値を失い、貨幣や通常の切手として使われるようになると、デフレにつながる。
日本郵便は、新規売り上げゼロのまま配送という仕事をただでやらなければならないわけで、過去に確定した(と思っていた)利益が取り崩される。
そもそも今回のコロナ騒動で日本でもペーパーレス化がようやく進むだろうから、郵便物は減っていくし、郵便事業の将来は暗い。そこで、高齢者相手に詐欺まがいの保険金契約を持ちかけたりして問題を起こすまで追い込まれてたということだろうか。
記念切手をせっせと買い集めていたのも、詐欺まがいの保険契約をさせられて金を失うのも高齢者。それをやらされているのは生活が苦しい若年層。
そうした状況をよそに、政治家は相変わらず世襲のお殿様、お代官様感覚で税金を一部の企業への利益誘導や外国へのばらまきに使い続けることをやめない。
それを訂正する働きをしなければならない官僚のモラルやスキルも著しく落ちている。
法律や文書はいいように解釈されたり改竄されたり消されたりして、司法がそれを罰することもしない。
社会のシステムはどんどん弱体化し、壊れていき、その危機を強権発動で押さえつけようとする。
それに呼応する人々の排外主義、国粋主義への暴走。
……あらゆる現場でこうした方向への兆候がはっきりしてきている。

考えれば考えるほど鬱になるなあ。
早くこんな作業を全部片づけて、自分の残りの人生について、少しでも実りのありそうなことを探し始めたい。

記念コインの類は全部額面以下の買い取りになってしまうので、このまま銀行や郵便局の窓口に持っていき「預金」して額面を確定させたほうがいい。



預金するために、ケースに入っていたコインは全部バラした。



造幣局が発行している年度別の「プルーフコインセット」なるもの。1円+5円+10円+50円+100円+500円で、合計666円。このセットを一体いくらで、どこでどのようにして売っていたのだろう。造幣局もすごい商売をしているなあ。今でも続いているんだろうか?

プラケースにガッチリ入っているので、取り出すのも一苦労。最後はニッパでプラスチックをバリバリと破壊して取りだした。
今回のことでいろいろ学んだので、まとめておく。


自分の持ち物の断捨離にしても親の遺品整理にしても、買い取り価値や価格を細かく考え始めるといつまで経っても整理はつかない。
そのままにしておけば、いつまでも価値を生まないものだし、片付く前に自分が死んでしまうだろう。それなら、買い取り業者で働く若い人たちへの給料になればいい、という気持ちで、さっさと作業を進めていったほうが精神的には楽になれる。だって彼ら若い世代は、ぼくらよりずっと厳しい時代を生き抜いていかなければならないだけでなく、あと20年もしたら、(ぼくらより若い世代の)親の面倒も見なければならないのだから。
幸せな時代を生きて来られたことに感謝しつつ、次の世代(次の次の世代?)へ少しでも「埋蔵金」を引き継いでもらう、というような発想をすればいいのだな。
本当はもっと高く売れたはずだ、とか、やはり手放すべきじゃなかった……などと考えるのは、自分の心がくたびれるだけだ。
自分が業者の現場で働く若い人たちよりも経済的に追い込まれた生活をしているなら別だが(そういう老人もたくさんいる)、死ぬまでの時間内、なんとか生きていけそうな余裕があるなら、もう、細かい金勘定で精神的に疲れるのはやめたい。

……と、こんなことを長々と書いているおまえは、ちっとも解脱できてないじゃないか、断捨離とはほど遠いぞ、と言われそうだが……。

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