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のぼみ~日記 2022

2022/01/14

A=432Hzチューニングとか528Hz周波数の音がどうとか……

だいぶ前、A=432Hzチューニングが神話化というかオカルト化しているということを知り、「集客ツール」になるのではといういかがわしい動機で「A432hz.com」というドメインまで取得してサイトを作ったことがあった。
その後、当ては外れ、自分の嫌らしい根性にも嫌気がさして、ドメインの更新をしなかったら、サイトも自動消滅していて、すっかり忘れていた。
最近毎日チェックしている In Deep というサイトで、久しぶりにこの話題を目にしたので、そういえばあのとき作ったWEBサイトはどこへ行った? とHDDの中を捜してみたら、かなり前に消えていた。
最終形のコンテンツがようやく発掘できたので、捨てるのももったいないと思い、昨日、WEB上に復活させた
URLは https://a432hz.tanupack.com/ とした。
一応ここにも内容をコピーしておくことにする。

432 Hz チューニングとは?

いつの頃からか「432ヘルツチューニング」というのが世界中で話題になっている。
432ヘルツチューニングとはなんぞや?


私たちが通常親しんでいる西洋音楽はドレミファ……という「12音階」で表現されるが、どの音をどのくらいの高さで鳴らすか(演奏するか、歌うか……)を決めておかないと音階は成立しない。
12音階は国際的にはA-A#(Bb)-B-C-C#(Db)-D-D#(Eb)-E-F-F#(Gb)-G-G#(Ab)とラベリングされた12音で構成される。
現在、私たちが日常で耳にする音楽のほとんどは、A(ハ長調/イ短調でいうと「ラ」の音)を440Hzという周波数に合わせて演奏される。
A=440Hzが国際的に決められたのは比較的新しいことで、1917年にアメリカの音楽協会がA=440Hzを決めて、その後、1953年にはISO(国際標準)でも正式にひとつの基準として認定した。

しかし、クラシック音楽の歴史を遡れば、A=440Hzというチューニングはむしろ異端で、時代によってもっと高かったり低かったりしたと言われている。
昔は音楽を音として記録する方法がなかったが、チューニングに使った音叉の一部が残っている。そこから推察すると、どうやら17世紀の段階では、A=370~560Hzという相当いい加減なものだったようだ。
これが少しずつA=420Hzに近づいていき、ヘンデルが使った音叉はA=422.5Hzだったという。ベートーベンの時代にはA=433Hzまで上がり、ピアノのスタインウェイ社は、一時期、435Hz~460Hzまで、何種類ものピアノを作っていた。

Verdi 1884年、作曲家のジュゼッペ・ヴェルディは、コンサートピッチをA=432Hzにするべきだと主張する手紙をイタリアの音楽協会に送った。432Hzチューニングが「ヴェルディ・ピッチ」と呼ばれるのはそのためだとか。

A=432Hzにすべきという根拠は?

ではなぜ432Hzなのか?
ヴェルディはこれがいちばん人間の生理に合っていて、宇宙のあらゆる秩序にも無理なく溶け合うと考えたようだ。
これが元になって、ネットを検索すると、鉄板の上にまいた細かい砂に440Hzと432Hzの音をぶつけると、作りだす模様の美しさが432Hzのほうが美しいだとか、432を60倍した25920という数は惑星歳差運動周期の年数だとか、実に様々な話が出てくる。
それに合わせるかのように、このような調和的な調律をさせずにA=440Hzに決めたのは、その刺激的な音楽を聴いて人びとが攻撃性を増すように仕組んだためで、背後にはナチスやイルミナティやロックフェラー財閥があるだのなんだのというおなじみの「陰謀論」も出てくる始末。
私は「陰謀論」とか「トンデモ」いう言葉で議論を封じ込める風潮は危険視しているが、さすがにこれは……と思う。

528hz の音は A=440Hz にした純正律のCの音

特定の周波数の音が人間にプラスの、あるいはマイナスの影響を与えるという話は他にもあって、中でも有名なのが「528Hzの音は損傷したDNAを修復する機能がある」といったもの
でも、528Hzというのは、純正律でA=440HzにしたときのCの音の周波数に近い。

純正律というのは、周波数比が単純な整数比の音程でつくられた音律のことだ。
純正律で調律されたピアノでは、A=440Hzにすると各音名の周波数は以下のようになる↓。
↑A=440Hzにしたときの純正律周波数表

純正律での基本的な和音(ハ長調ならドミソ、ドファラ、シレソなど)は各音の周波数が整数比で構成されるので美しく響くが、この調律のまま、例えばニ長調に転調したメロディや和音は非常に気持ちが悪い響きになる。
例えば、ハ長調(Cメジャー)を純正律でチューニングしたピアノでは、基音Cと5度上のGの周波数比は2:3だが、このチューニングのまま1つ上のニ長調(Dメジャー)の曲を弾くと、基音のDと5度上のAの周波数比は27対40というものすごく半端な比になり、気持ちが悪い。
従って、転調やテンションコードを多用する音楽では純正律は使えない。ジャズもボサノバも、多くのポップスも演奏できない。

今、私たちが普通に聴いている音楽は純正律ではなく、平均律でチューニングされている。
平均律というのは、1オクターブを単純に12等分して割り付けた音階のことだ。どの音の間隔も同じなので自由に転調できるが、自然数倍の周波数からは少しずつずれるのですべての和音が微妙に濁る。
平均律でA=440HzにしたときのCの音は約523Hzになる。
同様に、A=432Hzにしたときの平均律でのCは約514Hzだ。
ということは、よくある「身体にいい528Hzの音を含んだメロディやコードを多用した音楽」というのは、A=440Hzで純正律チューニングした単純なメロディと和音で作られた音楽、ということになりそうだ。
そうであれば、A=440Hzが悪魔の調律という話とは矛盾している。
A=432Hzチューニングが身体によいというのであれば、純正律でも平均律でも528Hzという音は出てこない。
音階の中に528Hzの音を含んでいなければならないというのであれば、純正律でも平均律でもA=432Hzにはならない。
いずれにしても、そんなことを言っていたら、音楽を自由に楽しむことはできなくなってしまう。

実際に聴き比べてみる

というわけで、普通に考えると、平均律で作られた音楽を聴いている限りにおいては、A=440HzとA=432Hzを比べれば、全体に432Hzのほうが低い、ということでしかないように思う。

ただ、まったく同じ曲・同じ演奏のデータを440Hzと432Hzにして聴き比べてみると、432Hzのほうが少しだけ低い分、なんだか落ち着く感じがするという人は多いかもしれない。

以下にサンプルを用意してみた。
すべて、片方がA=440Hz、もう片方がA=432Hzの平均律でチューニングした演奏なのだが、どちらがどちらだか分かるだろうか?
低く聞こえるほうがA=432Hzということで聞き分けは簡単だと思うが、先入観なしでボ~ッと聴いたとき、どちらが気持ちよく聞こえるだろうか?

よくYouTube上にあるサンプルのように短いものでは分からないと思うので、サンプルは1分前後とってみた。

Another Christmas (Jin Soda)


autoplaysample A-1


autoplaysample A-2
↑A-1 と A-2 どちらがA=432Hzか? また、どちらが気持ちよく聞こえる? 以下、同様にテストしてみて。
from the album "Digital Wabi-Sabi - As easy As EWI -" (Jin Soda)


Orca's Song (KAMUNA)


autoplaysample B-1

autoplaysample B-2
↑どちらが432Hz? どちらが気持ちいい?
"Orca's Song" (KAMUNA)

Gray's Keyboards (Jin Soda)


autoplaysample C-1

autoplaysample C-2
↑どちらが432Hz? どちらが気持ちいい?
"Digital Wabi-Sabi - As easy As EWI -" (Jin Soda)

『カムナの調合』 (KAMUNA)


autoplaysample D-1

autoplaysample D-2

↑どちらが432Hz? どちらが気持ちいい?
"Engage" (KAMUNA)

REM - A Faded Memory - (Jin Soda)


autoplaysample E-1

autoplaysample E-2
↑どちらが432Hz? どちらが気持ちいい?
"Digital Wabi-Sabi - As easy As EWI - (Jin Soda)

『麗しき距離 -鶴の飛翔-』 (Yoshimitsu Takuki)


autoplaysample F-1

autoplaysample F-2
↑どちらが432Hz? どちらが気持ちいい?
『狸と五線譜』 (Yoshimitsu Takuki)

『悠久 -大地の時間-』 (Yoshimitsu Takuki)


autoplaysample G-1

autoplaysample G-2
↑どちらが432Hz? どちらが気持ちいい?
『狸と五線譜』 (Yoshimitsu Takuki)

どちらがどちらかという答えは⇒このページにある。
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