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のぼみ~日記 2023

2023/04/08

牧野富太郎と狛犬

何シーズンぶりかで朝ドラを見始めた。
唯一残っている連載がテレビ誌のミニコラムなので、朝ドラはつまらなくても「仕事だ」と思って見るようにしていたのだが、沖縄を舞台にしたグルメもの?みたいなやつがあまりにひどかった。こんなものを我慢して見続けたらNK細胞が死んでしまうと命の危険さえ感じるほどひどかった。最初の2、3回でキッパリやめて、それからは『クイズ脳ベルSHOW』だけの平穏な朝飯(食べるのは午後だけど)が続いていたのだが、『脳ベルSHOW』も月曜だけになってしまい(従って見るのは火曜日のお昼)、しょーもないお笑いものとかをその時時で見ているのだが、牧野富太郎がモデルということで、助手さんが初回を試しに録っていたのだった。
↑すっかり忘れていたのだが、高知の牧野富太郎植物園には10年前に行っていたのだった

今のところ見続けているのだが、いきなり違和感を抱いたのが狛犬。

主人公の万太郎が幼少時によく行った裏山の神社という設定なのだが、このタイプの狛犬は幕末には絶対に存在していないのだよなあ。
狛犬好きの人なら一目で分かる。
尾がまるっきり岡崎現代型だし、顔は中国獅子風でもあり、護国系にも通じるようなもの。設置の仕方も両方が正面を向いていて中国獅子風。

↑尾が岡崎現代型風、顔は中国獅子風という変な狛犬

↓設置の仕方も中国獅子風に正面を向いていて、この角度からだととにかく尾の形に違和感を感じないわけにはいかない


江戸時代末期にこんな狛犬がいるはずはないのである。
まあ、ロケだからしょうがないか……と思っていたのだが、どうやらこの狛犬、NHKの美術スタッフが発泡スチロールで作った張りぼて(中は詰まっているから厳密には「張りぼて」ではなく「模型」か)らしいのだ。

この神社のロケ地は、「天狗」と名乗る坂本龍馬(ディーン・フジオカ)が大枝に座っていた大木のある境内が千葉県匝瑳市の天神社、そこに向かう鳥居と石段が同じ匝瑳市の飯高神社で、高知県ではない。

↑このロケ地は千葉県匝瑳市

で、境内シーンを録っている天神社には狛犬はいないのだ。

ということは、美術さん(外注?)が作った発泡スチロールの狛犬を置いたか、CG合成で狛犬を後から入れ込んだことになるが、映像を見る限り、CGではなく発泡スチロール製という可能性が高い。

では、なぜわざわざ(偽物の)狛犬を置いたのか?

この神社のモデルは、牧野富太郎の生家の裏手にある金峰神社だそうで、そこには大正5(1916)年建立の狛犬がいる。
Googleマップに寄せられた写真↓を見てみると、これはこれで味のある素晴らしい狛犬である。

↑GoogleマップにUPされていた写真を拝借

四国で一番古いと思われる狛犬は香川県・白鳥神社にある寛文4年(1664年)と伝わる狛犬で、↓こんな感じのもの。

写真提供:永野健生

初代高松藩主・松平頼重が奉納したと伝えられており、寛文4(1664)年が本当なら、日光東照宮が大改造された寛永13(1636)年の28年後で、江戸城内にあった東照社の狛犬など、石造の武家狛犬を踏襲したと思われる相当古いものであり、狛犬史においても貴重な狛犬だ。

あと、高知には↓こんな感じの狛犬もいる。
↑↓どちらも2013年3月に高知の講演会の後、永野先輩に案内していただいた牧野植物園の敷地内にある神社の狛犬。どちらも大正期で、上のは尾は江戸流れ風、下は高知に特有の渦巻き風装飾(塚地村の石工が好んだ作風)を取り入れた尾



↑↓高知市 愛宕神社の狛犬。このタイプを模して作ったのだろうか?



↑ドラマに使われた発泡スチロール狛犬に似ているかもしれない

しかし、高知県内で狛犬が奉納されるのは主に明治以降であり、上の写真の狛犬も大正年間のものだ。江戸期には狛犬はあまりなかったのではないだろうか。

いずれにしても、牧野富太郎の幼少期に遊んでいた近所の神社には当時、狛犬はいなかったわけで、史実や時代考証に従えば、狛犬を置いてはいけないことになる。
もし絵作り的に狛犬をいれたかったのであれば、せめて江戸時代を感じさせる雰囲気のものにしてほしかった。
あまりにもヘンテコな狛犬を置いたということは、以前に他のドラマなどで使ったことがある発泡スチロール狛犬の使い回しなのかもしれない。

しかし、発泡スチロールでもいいから、素敵な狛犬がいっぱい登場するドラマを見てみたい。
爺の死後50年くらい経ってまだNHKが存在していたら、『神の鑿・謎の高遠石工 小松利平物語』をドラマ化してくれないかしらね。

           


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