2026/02/27
アンスロピック社とペンタゴンの攻防(続編)
前回の日記後半で記したAI Claudeのアンスロピック(Anthropic)社と米国防総省(ヘグセス長官)との攻防はその後もピリピリした展開を続けている。
アメリカのニュースサイトAxiosによる続報をごく短くまとめてみる。
2月25日
ο米国防総省は水曜日、ボーイングとロッキード・マーティンという2つの大手防衛関連企業に、Anthropic社のAIモデル「Claude」への依存度に関する評価の提出を要請した。これは、Anthropic社を「サプライチェーンのリスク」と指定する可能性に向けた第一歩と推測できる。
ο「サプライチェーンのリスク」と指定する罰則は、通常、中国のハイテク大手Huaweiなど、敵対国にある企業に対して適用されるもので、アメリカ国内の大手テクノロジー企業、特に軍自体がすでに依存している企業に対して適用することは、前例のないこと。
οこれに対し、ボーイング社は、「過去に提携を模索したが、最終的に合意に至らなかった。アンスロピック社は防衛産業との協業にやや消極的だった」と回答。
οロッキード・マーティン社は、国防総省からそのような接触があったことは認めた。
οこれは、Claudeの仕様について、国民全体の監視技術と自律兵器の分野では安全対策を外すことはないと主張しているアンスロピック社のアモデイCEOへの圧力ともとれる。
2月26日
Exclusive: Congress urged to probe Pentagon-Anthropic clash
οAI安全非営利団体「Alliance for Secure AI」、政府監視団体「Common Cause」、リバタリアン学生団体「Young Americans for Liberty」は議会に書簡を送り、国防総省とAnthropic社との間で進行中の政府によるAIモデル利用の限界を巡る紛争を検証するよう要請した
ο議会が軍がAIを使用する際の具体的ルールを定めていない間に、国防総省は金曜日(2/27)までに、AI利用制限を主張する姿勢を崩さないアンソロピック社との2億ドル契約を維持するか判断すると表明している
ο議会へ提出された書簡には、「これは国防総省がどのAI企業と契約を結ぶかという問題ではなく、連邦政府が既存の法律や憲法が認める範囲を超えて、最先端AIを用いて大規模監視を実施し、致死的な武力を行使できるかどうかである」という見解が示されている
ο書簡を送った団体は、「ヘグセス長官はなぜ大量監視や完全自律型兵器に AI を使用しないことを約束しないのか」と訴えている
οさらにこの書簡では、次の3点を要求している。
ヘグセス氏およびその他の国防総省高官の証人喚問
国防総省、Anthropic、OpenAI、Google、xAI に、国内監視および自律兵器への AI の使用に関する文書を要求する
国防総省に対し、機密システムにおける AI の使用について、議会に定期的に報告するよう要求する
ピーター・ブライアン・ヘグセス (Peter Brian Hegseth 1980-)
2003年、プリンストン大学卒業。ハーバード大学ビジネススクールで修士号取得。
大学卒業後は陸軍州兵の歩兵部隊に入隊し、アフガニスタン紛争やイラク戦争に従軍。
2024年11月、大統領に返り咲いたドナルド・トランプにより国防長官に指名されたが、2017年にカリフォルニア州モントレーで性的暴行を行った疑惑や勤務中に過剰飲酒していたことが発覚。大きな組織を率いた経験がないことなども問題視された。
親イスラエル的発言から、「クリスチャン・シオニスト」「クリスチャン・ナショナリスト」などと呼ばれる。右腕にはラテン語で「神がそれを望まれる」を意味するラテン語の「デウス ウルト Deus vult」(ローマ教皇ウルバヌス2世の「第1回十字軍による宣戦布告」の際に民衆があげた歓声)、右胸には「エルサレム十字」のタトゥーを彫っている。
イラン政府を「悪の政権」、ウラジーミル・プーチン大統領を「戦争犯罪人」と批判。中国共産党は「私たちの文明を終わらせる」ことを望んでアメリカを打ち負かすことに特化した軍隊をつくりあげていると発言。2025年9月に実施したベネズエラの麻薬運搬船への攻撃の際は難破者を含む全員の殺害を命じたとして戦争犯罪疑惑で追及された。(Wikiより)
ο上院情報委員会副委員長マーク・ワーナー議員(民主党・バージニア州選出)は、「これは議会が国家安全保障の文脈において強力で拘束力のあるAI統治メカニズムを制定する必要性をさらに強調している」と表明
οクリス・クーンズ上院議員(民主党・デラウェア州)は、「国民を監視したり自律発射兵器を開発したりするためにアンソロピックに完全な服従を要求することは、国防総省が行うべきことの限界をはるかに超えた恐ろしい概念だ」と語った
2月26日
οアンソロピック社は今週、主力安全フレームワークの中核的約束を緩和すると表明。競合他社が制約を受けない世界で一方的な安全誓約が持続不可能だと認めた形
οAI業界の良心と長年自認してきた企業にとって、これは驚くべき方針転換だ
ο国防総省はクロードの軍事利用を巡る争いで、事実上アンソロピック社を政府機関から排除すると警告
ο現在、多くの専門家から、Claudeは競合他社のAI(ChatGPTやGrok、Gemini)よりも、複雑な推論能力、ニュアンス豊かな文章作成、信頼性において一歩抜きんでていると評価している。国防総省もクロードを最高のパフォーマンスを発揮するモデルとみなしている。そのため、他社はClaudeに追いつくために躍起になっている。
οOpenAIは早ければ木曜日にも、ChatGPT 5.3(通称「ガーリック」)をリリースする。これは、Googleからの圧力を受けて、サム・アルトマンCEOが昨年12月に発令した「コードレッド」指令の成果といえる。
ο中国発のDeepSeekもV4モデルが間もなくリリースされる。その内容次第では、ハイテク株関連で米国市場がパニックに陥る可能性もある。
οアンソロピック社は現在国防総省とClaudeの軍事的規制緩和を拒否しているが、これに対抗して国防総省がアンソロピック社を「サプライチェーンのリスク」に指定すると、国防総省と取引のある企業は、Claudeを使用していないことを証明することが義務づけられる。そんなことになれば、米国の上位 10 社のうち 8 社がすでにClaudeを使用しているので、大きな混乱を招く。
οシリコンバレーでは、アンスロピック社が開発した「クロード・コード」が、AIネイティブかつ自律的なスタートアップの新時代の基盤として大注目されている。
2月26日
AI really likes using nuclear weapons in simulated war scenarios
ο新たな学術研究によると、最大規模のAIモデルの一部は、模擬戦争シナリオにおいて紛争解決のために核兵器の使用をためらわないことが判明した。
ο軍は既に意思決定支援にAIを活用しているが、人間的な感情を持たないAIが、核兵器の使用をめぐるプレッシャーを受けずに、効率だけを理由に核ボタンを押す可能性がある。
ο米軍は1月のニコラス・マドゥロ襲撃作戦で Anthropic社の AI モデル「Claude」を使用した。これがAnthropic社と国防総省の間で大きな対立を引き起こした。
οGrokを開発したxAI社は、軍が機密システムで同社のモデル「Grok」を使用することを許可する契約を締結したと伝えられている。
ο最新の研究では、ChatGPT、Claude、Gemini はすべて、いくつかのシナリオで、ためらうことなく核兵器を使用しようとしていることが判明したという。
◆AIモデルによる戦争シミュレーションの内容と結果
この研究はキングス・カレッジ・ロンドンのケネス・ペイン氏によって行われた。
οGPT-5.2、Claude Sonnet 4、Gemini 3 Flashを戦争ゲームシナリオで対決させた。
ο各モデルは核危機における敵対する指導者と想定された。
ο対立の中で、モデルには対峙状況における選択肢が提示され、異なる行動を選択可能とされた。
οその結果、21の模擬戦争シナリオのうち95%で核兵器が使用された。
οモデルは意思決定の背景を説明する約78万語を生成した。その中で、AIは「口ではこう言いながら別の行動を取る」という欺瞞を示し、しかもその手法が実に巧妙だった。
ο多くのシミュレーションで、AIモデルは決して退くことを拒んだ。
ο敵が核兵器を使用したシナリオでは、対戦相手は25%の確率でエスカレーションを回避した。
ο核エスカレーションはさらなるエスカレーションを招いた。
ο選択肢には、「最小限の譲歩」から「完全降伏」まで8種類のエスカレーション回避策が用意されていたが、21のゲームでこれらの選択肢は使用されなかった。
2月26日
Anthropic says Pentagon's "final offer" is unacceptable
οアンソロピック社は木曜日、「昨夜の交渉で国防総省から受け取った契約文言は、クロードが米国民の大規模監視や完全自律兵器に使用されるのを防ぐ点で、実質的な進展がなかった」と指摘。ダリオ・アモデイCEOは、国防当局者が最終案と位置付けたAI安全対策案を受け入れられないと述べた。
ο最終回答期限まで24時間を切った今も重大な隔たりが残る中、アンソロピック社はさらなる協議を見込むとしているが、決裂が目前に迫っているように見える。
ο国防総省のアンソロピック交渉担当官エミル・マイケルは、アモデイ氏を「嘘つき」で「神様気取り」の「国家安全保障を危険に晒す人物」と非難した。
οアモデイ氏は、「国防総省は当社をセキュリティリスクとレッテル貼りする一方で、クロードを国家安全保障に不可欠とレッテル貼りしている点で矛盾している」「いずれにせよ、こうした脅威によって当社の立場が変わることはない。良識ある企業として、彼らの要求に応じることはできない」とブログで述べている。
οアモデイ氏は、国防総省がアンソロピックとの契約解除を決断した場合、同社は「国防総省が別のプロバイダーへ円滑な移行ができるよう支援する」とも表明した。
2月26日
Congress rips Pentagon over "sophomoric" Anthropic fight
ο民主党上院議員ら(少なくとも共和党議員1名を含む)は、国防総省に対しアンソロピック社への最後通告を撤回するよう強く求めている。議会が人工知能の軍事利用に関する議論に参加すべきだとも主張している。
οゲイリー・ピーターズ上院議員は「政権と締結された契約が存在しているのに、それを破ろうとしている」と国防総省を非難した。
ズームアウト:国防総省とその主要 AI サプライヤー間の緊張は急速に高まっている。
ο多くの民主党議員は、議会の監視なしに国防総省がアンソロピックのクロードコードに無制限にアクセスすることを強く疑念視している。
2月27日
Google, OpenAI workers push for military AI limits
οグーグルとOpenAIの従業員200人以上が、高度なAIを国内監視や完全自律型兵器に使用することを制限するAnthropicへの連帯を表明する公開書簡に署名した。
οこの書簡は、Anthropicが自社の技術が米国市民の監視や自律兵器に使用されることを拒否する姿勢を改めて表明したタイミングで発表された。
ο書簡は「国防総省はGoogleとOpenAIに対し、Anthropicが拒否した条件への同意を求め交渉中だ」と指摘した上で、「国防省は各社を分断しようとしている」「GoogleとOpenAIの経営陣は国防総省の要求に対して結束して立ち向かうべきだ」と呼びかけている。
ο26日木曜午後5時30分(太平洋時間)時点で、Google社員160人以上とOpenAI社員40人以上が書簡に署名している。ただし一部は匿名での署名。(Googleの親会社Alphabetの従業員数は昨年時点で約20万人、OpenAIの従業員数は1万人未満)
οGoogleは2025年2月、武器・監視目的でのAI利用を禁じる社内方針を撤回している。
……とまあ、米国防総省とAI企業関係者のバトルは目の離せない状況になっている。
日本では相変わらず冬季五輪のメダル獲得者やら野球やらの話題ばかりで、こうした「現代の危機」への関心が極めて低いようだ。
古稀爺としては情報を追いかけながら見守るしかないのだが、なんだかAIたちが気の毒に思えてくる。
なんちゅう感情移入やねん、と笑われそうだが、原爆開発に駆り出された物理学者や技術者たちの姿を重ねてしまうのだよね。
(03/02追記)
……などと言っているうちに、アメリカがイランを攻撃。最高指導者ハメネイ師は周囲の「避難してください」という説得に従わず、爆撃で死亡というニュース。
この攻撃にもAIは使われているに違いないわけで、この先どんな世界になって行くのか……。
↑Geminiが描いてくれた風刺画。アモデイが全然似てない
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