2012/09/04

 これが「間伐」??


上の写真は、NPO法人「土佐の森・救援隊」事務局長 中嶋健造さんのブログ「里山’sBar」から(一応お断りして)いただいてきたもの。
これを見て、数年前に見た白滝山の空撮写真を思い浮かべてしまった。↓

この写真は、ノーウィンドファーム・ネットのトップページに使っている。

大型風車の絵や写真をイメージ宣伝に使う企業は今でも多いが、こういう風景を見て「わあ、素敵」と思う人が多いということだとしたら、それは本能というか、感覚が少しおかしくなっているのではないか。
おいおい、ちょっと待てよ……これでいいのか? 本当に? と、一度くらいは疑問に思うのが健全な感覚ではなかろうか。

ただ、多くの日本人、特に都会暮らしが長い人たちは、山とか森というものに対するイメージもまた、少し単純化されすぎていて、多くの誤解、無理解が存在していると思う。

改めて思うことは、日本にはもはや「自然」と呼べる森はほとんどない、ということだ。
林業のための森は自然ではない。それは農業のための田んぼや畑が「自然」ではなく、人工物であるというのと同じだ。
稲の水耕栽培が定着して以降、田んぼはある意味「日本の自然」の一部になったとも言える。田んぼを命綱にしている生物はたくさんいる。特に水棲生物は、平地から急速に失われた湖沼から水田へと棲息場所を移していったので、水田がなくなったり、乾田化されたり、水路がU字溝化されたりすることは、最後の住み処をもつぶされることになる。
一方、杉、松、檜などの人工林は、そこを「命綱」にしている生物はほとんどいないだろう。もちろんこれは程度問題で、ゴルフ場や棚田式造成をされてマンションを建てられてしまった山に比べたらはるかにマシな生息環境だが、潜在自然植生の森に適応していた動植物の多くは、人工林では命をダイナミックにははぐくめない。
言い換えれば、人工林(林業のための場)は、見た目は「木の集まり」ではあっても、ブロイラーを養殖している養鶏場と同じで、そこで野生生物が生きるなどということは望めない。

川内村の近所に住むばあさまが言っていた。
昔は獣害などなかったと。
イノシシやタヌキはみんな山奥にいて、里までは下りてこなかった。山奥が雑木林だったときは、そこがいちばん棲みやすい場所だったから、わざわざ里に下りて田畑を荒らす必要などなかった、というわけだ。
雑木林が大規模に伐採され、杉や松が植えられてから、野生生物たちは食い物を失って里に下りてきて、人間と対立するようになった。

人工林とは何かしっかり認識するために、とても分かりやすい解説のあるサイトがあるのでご紹介したい。
⇒ここ だ。

皆伐された野地に杉、松、檜の苗木を植えた植林の光景を見たことがある人なら、みな不思議に思ったはずだ。
「こんなに密に植えていいのかしら? 育ったら、たちまちぎっちぎちになってしまうじゃないの」……と。
その通りなのだ。
植林した数だけの木を育てるわけではない。最終的に材木用に切り出すのはその5分の1から6分の1にすぎない。
杉林を例にとれば、1haあたり3000本の苗木が植えられるが、最終的に材木用途として切り出すときには500〜600本。残りの約5分の4は「間伐」して、取り除かなければならない。
なんでこんな面倒なことをしているかというと、最初に適正数である500〜600本を植えると、植えられた苗木はのびのびと育ってしまい、下が太く、上が細い「自然樹形」に育つ。これは木にとっては倒れにくく、長生きできる理想的な姿だが、それを伐って材木にしようという人間にとっては都合の悪い樹形なのだ。材木というのは、端から端までが均等の太さで、年輪の間隔も同じ、均一化した幹であることが望ましい。いわば自然の姿からすれば「奇形」「異形」の樹形こそ望まれる。
これは、霜降り肉がおいしいと言う人が多いから、牛に不健康な脂肪をつけさせるとか、生産性を高めるためにすぐに育つ鶏を品種改良で作りだすといったことと同じだ。
毎日牛乳を搾ることを目的に品種改良されたホルスタイン種は、乳を搾らずにいると乳腺症にかかって死んでしまう。そんな牛は自然の中では生きていけないわけで、生物としては奇形、異形だろうが、人間にとっては都合のいい生き物ということになる。
ブランド牛を育てる牛舎や、ブロイラーが過密に詰め込まれた養鶏場を「森」とか「草原」とか呼ばないのと同じで、人工林は自然の森とはほど遠いものなのだ。

別に、林業や農業、畜産業を否定しているわけでもなんでもない。そういうものなのだ、という認識をすることから出発しないと、変な議論になってしまうので、まずはそこから確認しましょう、と言っているにすぎない。
ある人が日光の杉並木を「偉大な自然遺産」と言っていたが、それは大間違いで、あれは人間が作ったのだから「文化遺産」「歴史遺産」ではあっても「自然遺産」ではない。
同じことで、「森を守れ」とか「木を伐るな」とか「自然環境を壊すな」という主張においても、対象とすべき「森」とか「木」がなんなのか、「自然環境」と呼んでいるものが、実際には人工物ではないのか、という点をしっかり見極めておかないと、いつまで経っても話が噛み合わないことになる。

「森を守れ」というと、「自然を守れ」というのと同じように聞こえるが、ほとんどの森が人工林になってしまっている日本では、「森を守れ」は、「畑を守れ」「田んぼを守れ」と同じような意味合いになる。
「田畑を守れ」と言われて、「自然を守れ」と同義だと感じる人は少ないだろう。むしろ「農業を守れ」という意味になり、日本の穀物自給率をこれ以上下げるなとか、農家の生活を保障しろとか、そういう話になっていくわけで、多分に政治的、戦略的な問題なのだ。

……で、前置きが長くなったが、今回の話は林業と間伐について。

NPO法人「土佐の森・救援隊」事務局長 中嶋健造さんによれば、冒頭の写真は、高知県香美市あたりの大規模「間伐」施業現場。
これだけまとまって土が露出してしまうような伐採を、果たして「間伐」と呼べるのか、というのが中嶋さんの問題提起だ。

そこで「間伐」についても、改めていろいろ調べてみた。
⇒ここ などに説明があるが、大きく分けると以下のようになる。

1)下層間伐……育ちの悪い木を伐る。結果、勢いのある木が残るが、育つ勢いが優勢な木というのは下が太く上が細い、自然樹形になり、材木用には適さないので、収益性が悪い。

2)上層間伐……育ちのいい木(優勢木)や暴れ木(枝などが奔放に張っている木)を伐る。結果、育ちが遅れた木が残るが、均一に育ちやすいので、最終的にはよい材木になる。

3)列状間伐……樹形や育ち具合に関係なく、機械で一列、直線的に伐採していく。残った木の樹形などはばらつくが、コストがかからず、伐採した木の運び出しも楽。

昔は人が森に入って、人力で枝打ちをし、小まめに間伐を繰り返して、太さの揃った優良な材木用の木を作っていたわけだが、人件費がかかりすぎて商売として成立しなくなったため、今では重機を入れて「列状間伐」あるいは「群状間伐」という方法が主流になっている。

群状間伐は、一列というよりは、○メートル四方を伐るというように、伐採箇所を縞状、格子状に指定していく方法。
どちらも適正な規模というのがあると思うのだが、やる方としては、一列の幅、一群の規模を大きく取ったほうが作業は楽になる。
ここでも国からの補助金、つまり我々の税金が投入されている。
中嶋さんによれば、補助金額は単位面積あたりの伐採量でグレードわけされていて、1haあたり300立米伐採できる群状間伐に対して、最高額(60数万円/ha)が出るのだそうだ。
となれば、業者は当然最高額の補助金を得るために大規模な伐採をするわけで、結果、上の写真のような山が全国あちこちで出現している、ということらしい。

福島の言葉でいえば「までい」な間伐をやっていたら補助金は出ない。皆伐に近いことでも、間伐という名目で大規模に伐採すれば最高額の補助金が出る、ということだ。

ちなみに中嶋さんは林業の現場の人であって、いわゆる環境保護運動家などではない。
日本の林業を真剣に復興させようとしている。
「土佐の森方式」と呼ぶ、小規模・低投資・森のオーナーが直接関われる規模での林業こそ、日本の林業を再生させる道だと説いている。

↑中嶋さんが仙台〜伊丹便に乗ったときに窓から見下ろした光景。おそらく栃木県か福島県上空だという


さて、川内村では、放置された田畑にメガソーラーを、という計画に留まらず、山林を伐採して、伐りだした木材をチップに加工した「木質バイオマス発電」計画というのが持ち上がっている。
中嶋さんや村の商工会長の話によると、年間20万立米(660haを皆伐したのに匹敵する量)の木材を燃やし、5000kwの発電をするというような計画らしい。
中嶋さんはこの計画に対して、無謀すぎると、何度も村に忠告したそうだが、現状ではもはや動き出してとめられそうにないという。

こういう話は、極めて政治的レベルでの話になる。
復興だ、除染だという名目で、今、福島には莫大な金が投入されている。これをいかに取り合うかというゲームが始まっているわけだから、自治体の首長としても、まったく無視して、武士は食わねど高楊枝をきめこむわけにはいかない。なによりも住民の突き上げがものすごい。
となれば、あとはいかに、「よりよい金の使い方」になるように動けるか、というマネージメント能力、高度な政治手腕が問われる。
間伐が放棄され、日光が地面に届かなくなった杉林や松林を伐採して、広葉樹林に戻す、あるいはせめて混交林にしていく方向に持っていければ、それは村の自然環境にとってもプラスになりえる。そういう工夫、言い換えれば、政治的な戦略を駆使して、結果的に今よりいい方向に向かわせることは可能なはずだ。もちろん村長もそれが理想だろう。
しかし、年間数百ヘクタールの皆伐に相当する伐採量だというのであれば、簡単に金を得ようとする人たちが暴走するのは目に見えている。最終的にどんな山にするかが目的ではなく、とりあえず上から落ちてくる金を使い切ることが目的になってしまうのだから、「なんでもあり」になる。
中嶋さんは特に、村の中の業者より、外から参入してくる業者が粗い伐採を続けて、村の山がただの食い物にされ、剥げ散らかされる結果を恐れている。
僕は林業素人なので、現場の雰囲気が分からないが、まあ、そういうことになるのだろうと思う。
戦後の日本ではことごとくそうだった。その結果が荒れた人工林ばかりになってしまった今の日本列島の姿だ。

結局、教育の問題に行き着くのかなあ……。
何を目的として動いているのか。
金が目的だ、と、なんの疑問もなく言いきれる人が多い社会では、「よりよい方向」を提案しても、「よいこと」の定義がハナから違っているのだから、どうにもならない。
何度も言ってきたが、金は「よりよい方向」に進むための手段であって、目的ではない。

3.11直後は、これからは、あらゆる現場で、「よりよい方向」を真剣にめざす人が増えるのではないかと思っていた。
しかし、実際には逆の方向へ突き進んでいる気がしてならない。
真面目さ、辛抱強さといった東北人の美点が、今まで以上におかしな方向に利用されているのではないか。
それがなによりもやりきれない。
利用される東北人気質、破壊される精神文化、つけ込まれる村意識……その結果として東北は、いや、日本はどうなってしまうのか。
これが現在の「復興問題」の実相である。決して、「東北が大変なことになっているから援助しなければ」という単純な問題ではない、ということを、日本中の人たちが理解していかないと、政治の暴走、現場の暴走は止まらないどころか、加速していく。

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