2015/03/01
白・金 or 青・黒 「ドレスの色が違って見える問題」の研究
一昨日あたりから「このドレスの色は金と白? それとも黒と青?」っていう論争がネット上を席巻している。
ある女性がネットに投稿した写真が「騒動」の発信源らしい。またたくまに
世界中に広まったようだ。
あまりに騒がれすぎているので、ここで敢えて取り上げるのも大人げない?気もするが、久々に面白いネタだったので、とことん調査してみた。

↑これが「元ネタ」らしい
実物は「黒と青」 要するに写真の色味がおかしい

↑これが実物
このドレスの「実際の色」は黒と青だそうだ。
販売サイト↑にある写真がいちばん本物に近いだろう。50ポンドで売られている。
しかし、問題の写真はどう見ても「黒と青」には見えない。撮影時の設定が狂っているのか、カメラの性能が悪くて逆光に耐えきれず色情報が飛んでしまっているのか、後から意図的に色味を変えたのか……とにかく正しい色に記録されていない。
これはまず疑いの余地がない事実。
ネット上にはたちまちいろんな説が登場した。
一つ目は、「脳内で推測した『環境光』によって色を補正して認識するため、逆光ととらえるか順光ととらえるかで違う色に見えてしまう」というような説。一種の錯視である、というわけだ。
⇒ここ とか ⇒
ここではそうした「錯視説」を唱えている。
その論証の材料として、騒動の元になった画像のホワイトバランスを極端にいじった画像を並べて説明を試みている人たちがたくさんいる。
下の画像はその代表例。

Twitterに投稿された「どMなキョン・真打」さんが作成した元写真、金色に見える写真、青に見える写真
それでも残る謎
上の画面は、元の写真の「白か青か」で揉めている部分を四角く切り取って、これが「青」に見えるにはどこまで補整したらいいかを実験しているところ。
ご覧のように、ガンマ補正で極端に暗くして、RGBでは、赤をど~んと落とし、緑も落とし、青はど~んと上げると、ようやく「青」になる。
「青と黒に見える」と言っている人は頭の中でこれだけ極端な修正をしているのだろうか?
この写真の色味やホワイトバランスが大きく狂っていることは歴然だが、問題は、その「色情報がおかしくなった写真」をなんの事前情報もなく見て、「青と黒にしか見えない」という人がいっぱいいることだ。
これも多くの人が試みているが、そもそも元写真の色情報はどうなのか?
僕もやってみた。

「黒」か「金」かで揉めている部分の色をスポイト抽出↑

色情報はこうなる↑

「青」か「白」かで揉めている部分の色をスポイト抽出↑

色情報はこうなる↑

もう少し分かりやすく四角に切り取ってみる↑

切り取った部分はこうなっている↑(A)

「青」か「白」かで揉めている部分を切り取ると↑

切り取った部分はこうなっている↑(B)
上の切り取った四角形を単独で見て、これを「折り紙」だとしたら何色に見えるだろうか。
(A)を「黒」だと言い張る人はいないのではないだろうか? 普通に見れば、金茶色、黄土色、濃いベージュ……いろんな言い方がありそうだが、間違っても「黒」ではない。
(B)はちょっと微妙で、正確にいえば「白」ではない。見たまんまなら、青みがかったグレーというところだろう。カラーピッカーで色情報を見ても、青系統であることははっきりしている。だからこれを「青」と言う人は間違っているとは言えない。青が何かの拍子に白っぽく写ってしまった、という解釈を脳内ですることはありそうだ。
つまり、「白と金」と見ている人は、この写真の色そのものから判断している。逆光あるいは暗い場所で撮ったために、白はグレーになり、金は黄土色のように写っている、と脳が判断している。
逆に、「青と黒」と言っている人は、極端に色を暗めに修正して見たことになる。

このカラーピッカーのチャートで分かるように、色の薄い部分の実際の色情報としては明るいブルーグレーなのだが、このポイントを右下に移動させていけば(暗くしていけば)青系統の色になる。
ということは、
- 白と金 に見えている人は、実際の写真の色に近い色で判断している
- 青と黒 に見えている人は、実際の写真の色ではなく、その色情報を極端に暗めに脳内で補整して見ている
ということになる。
さらに興味深い仮説
大体のところはこういうことだと思うが、それでも、なぜ金茶色を黒に、明るいブルーグレーを濃い青にまで補整してしまう人が多数いるのか、まだスッキリしない。
多分違っていると思うが、興味深い仮説もひとつ紹介。
「青と黒」に見える人の多くは女性だそうである。で、実際のドレスの色は青と黒である。女性のほうがファッションには敏感なので、このドレスの本当の色は青と黒だと、経験則、あるいは配色の好み(センス)が働いて色味が壊れる前の実物が何色かを「見抜いている」のではないか? という説。
う~~ん。面白いけれど、無理がある?
もうひとつ、これはかなり可能性が高いと思うが、「色の名前」と実際の色の照合具合(レンジの広さ)が人によって違うからだ、という説。どこまでを「青」と言うのか……というような問題。
今回の写真の、

↑これを、同じように見えてはいるけれど、「青みがかった
グレー」だと認識している人と「薄い
青」だと認識している人がいる、というわけだ。言い換えると言葉(色の名前)の「定義」の問題。
グレーなら白が影に入ればグレーに見えるから、「もとは白だよね」と脳が判断する。
一方で「薄い青」だと思っている人は、広義で「青」と言っている。(よく訊いてみると「濃い青だとは言っていない。薄いくすんだ青だ」というように説明する人がいる)
であれば、見ているモニターの輝度もかなり関係してくる。明るくしていれば青には見えづらいし、暗くしていれば青に見えやすい。
哲学?の命題で、ある人が「青」だと認識している色が別の人には「赤」く見えているかもしれない。でも、色の名前と見えている色をお互いに照合して「違う」と分かることはできないので、永遠にその違いに気づくことはない……というのがある。
そんなことも思い起こす。
錯視の種類と個人差
以下は「オマケ」。
今回の「騒動」を錯視の一種だとするなら、錯視しやすさ(度合)は当然個人差があるだろう。
また、錯視にはいろいろな種類があり、明暗差の補整錯視と色味の補整錯視では起きやすさが人によって違うことも考えられる。
今回の現象を説明しようとしているWEBページやブログには、いろんな錯視サンプルが出ている(中には今回の説明のためにわざわざ作ったらしいものもある)のでいくつか紹介してみる。

まずは有名な明暗差の錯視。上の図は
⇒こちらから引用させてもらった(そのさらに元があるのだと思うが分からない)。
誰が見てもAとBが同じ濃さには見えないが、実際に切り取って並べてみると同じだと分かる↓
同じサイトに、色味が変化して見える実験としてこんな図もある↓

↑
瞳の部分がそれぞれ水色、黄色、赤に見えるが、実際には同じグレーだ、というもの↓

↑左の画像の左右の瞳部分を抽出して並べたもの
今回のドレスの色騒動を説明するために作られたイラストもある。
⇒ここ にある女の子のイラストや、
⇒ここにあるモデルの女性の明暗差でドレスの色が変わって見えるかという画像に関しては、どちらも僕の場合は同じに見えて、大きな差は感じなかった。(2つめのページの女性の画像は、左側はスカートのいちばん下の部分を女性と一緒に暗くしてしまっているので黒くなってしまってはいるが、これは単なる処理ミスだろう)
……とまあ、こんなところでしょうか。
セシウムがどうのとかいう話題ばかりだと疲れるから、たまにはこういうネタで盛りあがるのもいいかもね。
そうそう。今回の騒ぎの中で、いちばんうけたのは
これ↓かな
惜しいのは「金と銀」としたら、「赤と青」にしないとね。「青と赤」じゃ逆ですから~! (ギター侍風に)
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